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本当の奇跡は神様なんかじゃなくて、大切な誰かが生きていてくれること

それが、どんなに凄いことを起こせる力だったとしても
俺にとっては、アイメルやマイルが
生きていることの方が素晴らしいことです。
たとえ、つまらない世界でも
大切な人たちが生きている方がいい。
そんな考えは、間違っていますか?

日本ファルコム「英雄伝説IV 朱紅い雫」(PC-98版/1996年5月発売)より

20年以上前に遊んだゲームなのに、いまなお鮮烈な印象をもって脳裏に焼き付いているシーンがあります。

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冒頭に記したのは、1996年5月に発売された日本ファルコムの作品「英雄伝説Ⅳ 朱紅い雫」(PC-98版)における主人公アヴィンの台詞です。
(あかいしずく、と読みます)

物語をざっくり説明すると、幼いころとある事情にて生き別れになった妹を探す旅に出た主人公アヴィンが、その世界における宗教事情に翻弄される中で大切な身内や仲間の喪失を乗り越え、人と神々という運命に対して一定の決着を付けるという話です。

生き別れの妹を探すアヴィンの旅には親友であり幼馴染みでもあるマイルが同行。一度は妹アイメルとの再会を果たすのですが、闇の神を信仰する者の手によって再び引き離されてしまいます。妹は敵の暗殺者に殺害され、親友は行方不明に…。

そんなアヴィンは「神宝」を集めることで何か希望が見えるかもしれないと旅を再開するのですが、その途中で立ち寄った正教徒の修道院にてかつての師のひとりであるオレシア院長と会うことに。そこで「神宝」について尋ねたときの話がこちらになります。

オレシア:
世界に散った御魂が1ヶ所に集まれば
神の奇跡が期待できるかもしれません。

アヴィン:
神の奇跡・・・
それが、どんなに凄いことを起こせる力だったとしても
俺にとっては、アイメルやマイルが
生きていることの方が素晴らしいことです。
たとえ、つまらない世界でも
大切な人たちが生きている方がいい。

オレシア:
・・・・・・・・。

アヴィン:
そんな考えは、間違っていますか?

オレシア:
いいえ・・・あなたの言う通りです。
この世に、人の命に勝るものはないでしょう。
でも、亡くなった人たちが願っていたことを
実現することも、
生きている者たちの使命なのです。
アヴィン、耳を澄ますのです。
誰の思惑でもない
真実の声が心に届くまで。
あなたなら、聞こえるはずです。

アヴィンは神宝のことを聞いているように見せて、その真意は、

そんな神々の事情に翻弄されて失われた親友や妹をどうしてくれるんだ!?

と問うているのですよ。

これに対するオレシア院長の言い分は、アヴィンの真っ当な問いかけを一旦受け止めつつも、何だかその一番肝心なところを保留にして煙に巻いているかのような印象を受けます。そう、大人はいつだってずるいのですよ。
(かくいう私だって当時は…おっと年がバレる話はここまで)


人は分かりやすい大義を見つけるとそれに縋りたがる。
そして、その達成のためにどれほどの犠牲が出ようとも黙殺される。
何故なら、それは大義だから。


察しの良い方ならば、私がこのシーンを紹介することで、「何」に対して「何」を言いたいのか、おおむね理解されたのではないでしょうか。


創作と現実を一緒くたにするのは愚考ですが、現状の有り様を見るにつけ、私の中でこのシーンがリフレインされるのです。

たとえ、つまらない世界でも
大切な人たちが生きている方がいい。


何て言うか、
人っていうのは、いつになっても変わらないものですね。


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ゲームの紹介を一応それなりにちゃんとしておきましょう。本作は日本ファルコムのストーリーゲームシリーズのひとつである「カガーブトリロジー」(三部作)の時系列上最初の話となります。現在同社では「軌跡シリーズ」と呼ばれる作品群を展開しておりますが、これの前に存在したシリーズだと思っていただければおおむね間違いありません。

この三部作は、物語としては「朱紅い雫」(Ⅳ)→「海の檻歌」(Ⅴ)→「白き魔女」(Ⅲ)と続いていくのですが、発売順でいくとPC-98版でⅢ→Ⅳ、Windows版でⅢ→Ⅴ→Ⅳというふうにリリースされました。話の筋からすると多少メチャクチャ感はありましたが、それぞれの物語で冒険している舞台の世界が一応別なのでそんなに違和感はありませんでした。
(注意点として、物語の内容がPC-98版とWindows版で異なっている部分があります。特に「朱紅い雫」は別物と言っていいほど内容が変わっており、たとえば今回紹介したようなシーンはWindows版にはありません)


「カガーブトリロジー」全体(『Ⅳ』~『Ⅲ』まですべての物語)の私的な感想を言っちゃうと「最終的にひとりの良い人が(本人の意思であるとはいえ)世界の問題すべてを背負って詰め腹斬らされた」という感があり、私的にはとても納得できる話ではありません。
が、世の中の物事の解決って、結局どうにもならなくなったらそうならざるを得ないのかな…と思うと何だかやるせなくなりますよね。

とは言え感動的な物語を楽しめる良いシリーズではありますので、興味を持たれたならプレイすることをお勧めします。ただし発売されているのが昔のWindowsとPSPその他なので、プラットフォームにはどうかお気を付けて。


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