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人生初のタトゥーを入れてきたレポ

これまでの我が人生におけるジンクスのひとつに、「退路を断った方が物事はうまくいく」というものがある。

大学2年生のときに国立大学への3年次編入試験の受験を決意したのだが、当時通っていた大学の3年生からのゼミに入るテスト期間(ゼミを決めなければ進級できない)と編入試験の日程が被っていた。わたしはゼミのテストを捨てて関東に戻り、編入試験を受けた。そのときの合格体験が主な由来になっている。後には引けない状況に自分を追い込んでしまった方が、これまでの人生でうまくいくことが多かったのだ。

そのため6月末で派遣社員を辞め、フリーで食っていく覚悟をしたとき、「退路を断ちたいな」とふと思い立った。そして、タトゥーを入れることを決意した。

もともとタトゥー入れたい欲は学生のころからあって、きっかけは行きつけの美容師のお姉さんだった。おしゃれで可愛らしい方で、とっても素敵なタトゥーを入れてらした。そのお姉さんに「タトゥー入れてみたいんですよねえ」と何年間も相談していたのだけど、「なんとなくで入れちゃうと後悔すると思うので、なにか理由とか『今だ!』みたいな時期に入れるのがいいと思いますよ」とアドバイスを頂いていた。

その時期がまさに今なのではないか、と思い、わたしはInstagramを漁りまくって良さげな彫り師さんを見つけ、タトゥースタジオに相談の予約を入れた。最初に電話した日は運悪く定休日で、かなり勇気を振り絞ったこともあり、はたしてこの勢いとテンションが明日も継続するだろうか…と不安に思ったのだが、翌日震えながら無事電話をかけることができた。

電話に出たのはちゃらそうなおっちゃんで、テキパキと相談兼打ち合わせの日程を調整してくれた。そして先月、わたしは意を決してスタジオに赴いた。入れるデザインは「商売繁盛」と「自由」の意味を持つ猫に決めていた。単純に猫が好きというのももちろんある。

かなりドキドキしながらスタジオに行ったのだが、想像よりも明るい雰囲気で、ヤンキーとか輩みたいな人が出入りする感じはゼロだった。そのことを電話のおっちゃん(受付だった)に伝えると「ウチ、ヤンキーとかそういうの嫌いだもん。だから絶対入れない。ムリムリ〜アハハ」と笑われた。とにかく怖いイメージはまったくなく、気持ちよくて丁寧なカウンセリングをしてくれて、おおまかなデザインを決めて内金を払い、そこのスタジオで彫っていただくことに決めた。

そして今日、いよいよ当日を迎えた。昨日の夜から緊張と恐怖で心臓がバクバクで、さっさと寝ついたのはいいが(精神疾患が寛解してからというもの信じられないくらい寝付きがよくなった)、今朝は無駄に早く6時に目が覚めてしまった。「前日はしっかり睡眠を取ってくださいね、痛みもマシになります」と言われていたので余計バクバクして二度寝もできず、出勤する夫を見送り、化粧をして髪をセットし、きっちりとマスクをしてタトゥースタジオに向かった。

彫師の方が時間をかけて下絵を描いてくださり、下絵を腕に転写して、施術が開始した。病院の診察室にあるようなベッドに寝転がり、彫師の方が機械に電源を入れた瞬間緊張は最高潮に達した。機械の音は歯医者の歯を削るアレにそっくりで、その音を聞いただけで心臓は跳ね上がった。「けっこう痛いですか?」と今更ながらビビり出すわたしに、彫師のお姉さんは優しい笑顔で「うーん、腕なので我慢できないほどではないと思いますよ!すぐ終わるので安心してリラックスしてくださいね」と声をかけてくれた。

そして機械を腕に当てられると、ビリビリとした痛みが腕に走ってわたしは固唾を飲んだ。確かに我慢できないほどではないが、皮膚を削られていくような、引っ掻かれているような感覚で、思わず拳を握り締めてしまった。お姉さんは「力を入れてると痛いのでリラックスしましょう」と握った拳をそっと開いてくれたが、手を止めることはしない(当たり前だ)。特に骨に近い場所や皮膚の薄い内側などは痛みが強く、わたしは背中にじっとりと脂汗をかいた。さすがにちょっとキツくなってきて、音楽を聴こうとイヤホンを取り出したところで、「はい、終わりです!ゆっくり起き上がってみてください」と言われて拍子抜けした。およそ10〜15分くらいだっただろうか、想像よりずっと早く施術は終わった。

でき上がったタトゥーは、想像していたものより100億倍くらい素敵だった。感激と興奮が凄まじく、スタジオではしゃいでいたら受付のおっちゃんも「よかったねえ」と微笑んでくれた。

写真はスタジオ内のフォトブースでおっちゃんが撮影してくれたもの。

事前にPinterestやInstagramで猫のタトゥーデザインを漁りまくったが、わたしの猫がいちばんかわいい自信がある(デザインしたのも掘ったのも彫師さんだが)。もし今後この間書いたポンコツ上司みたいに癇に障るやつに出くわしても、「こちとら腕に猫を飼ってる身だぞ!」と思えばいつだって強気でいられる気がする。わけのわかんねえクライアントに遭遇したってへっちゃらだ。

以上がタトゥー体験レポである。日本ではまだまだタトゥーを入れている人は少ないし、どうしてもヤンキーとかヤクザの所謂「刺青」のイメージが強いと思うので、入れるか迷っている方の参考になれば嬉しい。実際にデザインを考えたり入れている人に話を聞いたりするなどした中で思ったのは、「10年後20年後もそのデザインを好きかどうか」に確信を持つことができれば、そんなに後悔することはないんじゃないかということだ。

例えば推しのキャラクターを入れたいと考えている人なんかは特に、高齢になってもそのキャラクターを愛しているかどうかとかをよくよく想像してから入れることをおすすめしたい。タトゥーは入れるよりも消す方がずっと高額だし、なにより綺麗に消える保証もない。一生愛着を持ち続けられるかどうかに着眼点を置くことが大切な気がする。入れるか否か、デザインをどうするか悩む時間に、少なくとも1年以上はかけた方が良い。

その点では、パートナーの名前を入れることは個人的にはおすすめしない。わたしも、夫の名前を身体に刻むことは死んでもやらないだろう。こんなこと考えるのもやだけど、ほら、ねえ、もしかしたらのことだって人生にはあるともないとも限らないし。

最後に。タトゥー入れてるとか引くわ〜とか言う大正時代からタイムスリップしてきたんか?みたいな偏見のある人は既に絶滅危惧種なので、無視していいです。まじで。

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