ぼくの世界を守ってくれる魔法を手に入れた

本棚を他人に見られることが、昔から嫌いだ。頭の中を覗き見られることとほぼ同義だと思っているから。それと、幼少期の父の言葉の影響もある。「おまえ程度の知性と感性でヘッセやアーヴィングを理解できると思うなよ」と言われてしまうのではないかと、いまだにぼくは怯えているのだ。

ぼくの通っていた中高一貫校や大学は、どちらも通学に往復2〜3時間くらいかかるような場所にあった。そのため10代のころ読書をするのは主に電車の中だったので、ブックカバーは必須だった。なにを読んでいるか他人に知られるのが怖い。そう、気持ち悪いとか不快だとか、そんなことよりも怖いのだ。恥ずかしいと言い換えてもいいかもしれない。電車の向かいの席に座るあの人に、「どうせ理解できやしないくせに」と笑われているんじゃないか、なんていう馬鹿げた妄想から、ぼくはまだ抜け出せていない。

心象風景を知ったのは、たぶん去年の秋ごろだったと思う。鮮やかな色彩に目が釘付けになって、コジさんのnoteをひたすら見漁った。物陰からそうっとそうっと覗き見て、その線を指でなぞってみたり、拡大して幾重にも重ねられた色をうっとりと眺めたり。ぼくもブックカバー、ほしいな。そう思うようになるまで時間はかからなかったけれど、いかんせん勇気が出ずに年が明けても隠れキリシタンのままだった(ぼくはずいぶん長い間いろんな方の隠れキリシタンだったのだ)。

その後ラッキーなことにコジさんご本人ともnoteやTwitterでお話しできるようになり、ますます個展開催を楽しみに待つようになっていった。コジさんにもようやく勇気を出して「個展後にブックカバーをオーダーしてもいいですか」とお伝えできたのだけれど。残念ながら、緊急事態宣言の発令によりあえなく中止となってしまった。

個展にかける想いを、すべて知っているわけじゃない。それでもその悔しさとか切なさとかは、汲み取ることができる。そんなきつい中だったのにも関わらず、コジさんは「おうち個展の前でも後でも、いつでもご相談ください!」と快く言ってくださったので、その気持ちに甘える形でやっと念願のブックカバーをオーダーさせて頂くことになったのだ。

実はかなり前から、オーダー内容は自分の中で具体的に決めていた。選んだ絵画作品は『不死鳥』。この作品を最初に観たとき、心臓を鷲掴みにされた。中央の卵(ぼくには卵に視えた)からのびる、光の筋。そして『不死鳥』の生まれた日付がぼくの誕生日のちょうど3日後、4月9日であることにも、勝手に運命を感じてしまった。

とても丁寧にヒアリングしてくださって、何度もやりとりを重ねて、いっぱい写真を送ってくださって、この段階からもうすでに楽しすぎた。「この組み合わせ、めちゃめちゃ可愛くないですか?!」ときゃいきゃいはしゃぎながら相談させていただいて、最終的なデザインを決めた。

そして届いたのが、こちら。

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いやいやいや、天才的に可愛すぎる。こんな可愛いブックカバーが自分の手の中にあるっていうのがもう、なんかもう、たまらない。「読書をするとき落ち着いて読めると思う」というコジさんのアドバイスから裏地をダークブラウンにしていただいたんだけど、大正解すぎた。表の鮮やかで燃え上がるようなデザインとのギャップが可愛い。もはや愛おしい。

カバンの中が常に散らかっているぼくは、何度かお気に入りの本をぐしゃぐしゃにしてしまったことがある。そのためもしオーダーするのなら、このフタ付きの「特別仕立て」でお願いしようと決めていた。可愛すぎてもはや辛い。とりあえず最近読み直し始めたアーヴィングの『ホテル・ニューハンプシャー』を入れてみる。

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ハーーーーーーー。かっわいい。

“「世界」を守るブックカバー”の本当の意味が、実物を手にしてはじめてやっとわかった気がする。これは魔法だ。「おまえには理解できまい」と指をさして嗤う他者から、ぼくの思想や意思や言葉を創り上げてくれたものを、丸ごと包んで守ってくれるのだ。

蘇りたい。幾度踏み躙られても、貶されても、嘲笑されても。ぼくの血肉となった世界そのものに対する誇りは、失わないでいたい。このブックカバーは、その気持ちごとぼくの世界を守ってくれる。ぼくの世界はぼくだけのものだと、教えてくれる。そんな魔法を手に入れたので、今のぼくは間違いなく無敵なのだ。

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はるさんの真似っこをしてみた。撮影は夫。

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『おうち個展』概要はこちら。

そして今回オーダーさせて頂いた「〈ボタン付き〉心象風景の特別仕立てブックカバー」はこちらです。


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