雑誌探訪 「kotoba 2024年春号」①
kotoba 2024年春号(2024)集英社
「kotoba 2024年春号」は「エッセイを読む愉しみ」という特集でした。その中で、古典の随筆を題材にしている記事が何点かありましたので、紹介します。
酒井順子「清少納言の随筆気質」(P26~)
古典においてエッセイといえば、基本的には「随筆」を指す。現代でも、随筆のことをエッセイ、エッセイのことを随筆と言うことすらできる。
ただ、現代のエッセイや随筆の中には、自叙伝的な内容だとか、日々の日記のようなものもある。これは古典文学で言えば、「日記文学」に属する。
また、うわさ話を引用したり、人から聞いた話、もしくは逸話などをもとに、持論を展開することもある。これは古典文学で言えば、「説話文学」に属するとも言える。
そうなってくると、意外とこの「エッセイ」が指す古典文学は、多様なのである。
この記事では、清少納言(せいしょうなごん)の「枕草子(まくらのそうし)」と、紫式部(むらさきしきぶ)の「紫式部日記(むらさきしきぶにっき)」の内容が引用されている。
まさにこれらの文学は、現代で言う「エッセイ」であり、清少納言や紫式部の思ったことや考えたことを知る手掛かりになる作品である。
酒井さんは、「枕草子」を「共感」を持って迎えた。そして、そんな清少納言と紫式部の関係性について、軽やかに考察している。
この記事の素敵なところは、これが「エッセイ」であることだ。
同じような清少納言と紫式部の関係性について考察した評論はたくさんあるけれども、この記事はずっと軽やかで、ある意味では偏った、だからこそいきいきとした考察になっている。
まさにこの記事自体が「エッセイ」の魅力を伝えており、「枕草子」の魅力と共鳴している。
枕草子が今も「共感」を持って迎えられるのは、まさにこの「エッセイ」の魅力なのだと思う。
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