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落合陽一 34歳、「老い」と向き合う

明日はお風呂当番

 私の母は介護の仕事をしている。70歳が、介護をしている。「明日はお風呂当番だ」と口にすると、明日に備えて早々に就寝する。体の不自由なお年寄りを体力が衰えてきている70代女性が風呂に入れることは、私たちが思うよりも重労働なのだろう。老人が老人を介護する。超高齢化社会と呼ばれる日本の課題が、自分の家族にまで近づいてきたことに、もはや目を背けることはできない。
「カクテルパーティ効果」という行動心理学用語がある。多くの音の中から、自分が必要としている情報た重要な情報を無意識に選択することができる脳の働きのことである。私の脳は、何万冊とある本の中で、その力を発揮したようだ。本屋でこの本に出合った。あの落合洋一が介護と向き合ったらしい。手を取らずにはいられなかった。

落合陽一とは

落合陽一
1987年東京都生まれ。筑波大学情報学群情報メディア創成学類を卒業し、東京大学大学院学際情報学府で博士号を取得(学際情報学府初の早期修了者)。現在、筑波大学図書館情報メディア系准教授/デジタルネイチャー開発研究センター・センター長。ベンチャー企業や一般社団法人の代表を務めるほか、政府有識者会議の委員等も歴任。メディアアーティストとして個展も多数開催し、EUSTARTS Prizeやメディアアート賞のPrix Ars Electronicaな、研究から
芸術に至るさまざまな分野において国内外で受賞多数。日本テレビ系「newszero」やNewsPicksのライブ動画「WEEKLY OCHIAI」、NHKEテレ「ズームバック×オチアイ」など、メディアでの発信も行う。著書に「魔法の世紀』『デジタルネイチャー」『2030年の世界地図帳」などがある。

養老孟子「老いはパラメータ化されるようになる」

この本は、序章から始まり、
第一章「発展するテクノロジーと変わる老い」
第二章「ここまで進展した介護テクノロジーのいま」
第三章「少子高齢化社会の日本が起こす第4次産業革命」
第四章「人にとってやさしいテクノロジーとは?」
第五章「誰もがクリエイションできる未来へ」
で構成されている。
 なんと、「序章」が養老孟子氏との対談から始まるのだ。この二人の対談と聞いただけでも、「武尊 対 天心」ばりに興奮してしまう。ましてや、今回のテーマが「老い」、「介護」である。世界戦を戦う二人が地元にやってきて、目の前で試合をしてくれるようなものである。
 内容は、期待をこえた。特に印象深かった内容を一つ取り上げる。どうやら「老いがパラメータ化される時代がやってくる」らしい。白髪染めや植毛、ボトックス注射、さらには遺伝子治療現代社会はさまざまな若返りテクノロジーがあふれている。テクノロジーによってある程度コントロールできるようになりつつある。つまり、外見上、機能上の老いは髪型や体型、服装のように、ある程度コントロール可能なパラメータのようなものとなっていくそうだ。

明日の風呂当番を気にしなくていい日がくる

終始、落合陽一さんは「介護」と真剣に向き合ってくれているのを感じさせてくれた。
「なぜ、テクノロジーが介護現場に必要なのか?」
「どのようにテクノロジーが、今、介護現場に取り組まれているのか?」
「どうしたら、テクノロジーを介護現場により取り組めることができるのか
?」
 テクノロジーが介護現場に当たり前に入り込むことにより、介護職たちの労働の補助・代替と、介護を受けている高齢者の身体の補完・拡張することができる。よりよい介護を受ける受けられるようになることももちろん大切であるが、私の母親が「次の日の風呂当番」を心配することなく、安心して眠りにつける介護の世界になってほしいと心から願う。


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