創作大賞2024恋愛小説部門投稿作「大雨が世界を滅ぼすまで、またね」
たとえば僕には救いたい女性がいるとしよう。その人とは距離も離れていて、実際に顔を合わせたこともなくて、だけど心情に共感して、辛い記憶を共有している、そんなかけがえのない人。その人は親から虐待を受けていて、家庭に居場所がなくて、なにをしても罵声を浴びせられる日々を送っている。僕がその人を救う手立てはない。僕には自由にその人のところへ行ける金もないし、その人の心を一瞬でも癒す弁舌もない。どころか、その人に嫌われてさえいる。その人の前では僕は価値がない。そんなとき、どうすればいい