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読書人間📚『いのちの車窓から』星野源
『いのちの車窓から』星野源
2017年 単行本発行 / KADOKAWA
2022年1月 文庫初版発行
星野さんのエッセイ作品は、2冊目です。
面白いので、なるべくゆっくりちまちまと読みました。面白いと言うのは、腹を抱えて笑うという意味ではなく、じんわり人柄が滲み出る素朴さ、ヘラっとした軽い心地良さ、おもしろみ。
▶︎『電波とクリスマス』
「大きいステージでやるライブは本物の音楽ではない」「狭いライブハウスでやるものが正義だ」
さて、いきなりこの議論、ミュージシャンにより考えは様々なので、とても興味深い。星野さんはこう思ってらっしゃる。
__音楽、そしてライブにおいての広さや距離というものは、会場のサイズで測られるものではなく、演奏している音楽家と、聴いているお客さんの心の距離の近さによって測られるのだ。__
因みにわたしはと言うと、小箱のライブハウスが実はとても苦手で、何度やっても慣れません。奥行きのあるステージの方が力を発揮できるタイプの人間です。目が合う距離は緊張で舞い上がりヘロヘロな歌唱になってしまいます。駄目ですね。お話になりません。
▶︎『SUN』という曲。
夢中になったマイケル・ジャクソンへの思いと、寂しかったあの頃の自分と、作りたい自分の音楽と、そんな背景を持った曲だと知り聴いてみると、こころが踊る。
あ、星野源ってめっちゃいいじゃん。と朗らかな気分で『SUN』のミュージックビデオを鑑賞。
__自分が今作りたい音楽に必要なこと、それはなるべくステイすることだ。楽曲の構成を大幅に変化させたり、わかりやくす盛り上がってはいけない。変化の少ないビートの繰り返しの中で、複数のレイヤーとしてメロディやコード進行が重なってゆき、聴く人の内面から盛り上がっていくように作りたい。__
ドラマティックに、日本的なサビ盛りとは違う、ちょうど適当なところの塩梅。ステイ。なるほどなぁと、ミュージックビデオをまた観る。
作詞・作曲 星野源
〜君の歌を聴かせて
深い闇でも 月の上も
すべては思い通り〜
ほぉぉ〜。いいねぇ〜。
▶︎『YELLOW DANCER』というアルバム。
NHK、「星野源のおんがくこうろん」という番組。
ここで、わたしも尊敬する師、音楽プロデューサー、執筆家の佐藤剛さん、"ゴウかいせついん"に寄る、「中村八大」の回がありました。
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日本の歌謡曲史に中村八大は欠かせない人物である事から、音楽番組的に当然なくてはならない回だと思って見ましたが、星野さん、なるほど。
星野さんの音楽作りにきちんと根ざしていたのだと改めて思い返すお話です。
__大好きなブラックミュージックに影響を受けながらも、今の情景を映し出すようなそんな音楽、体が勝手に踊りだすようなダンスミュージックを作ってみたい。服部良一や中村八大などの作曲家が作ってきた日本の歌謡曲。そしてそれに影響を受けた様々な流行歌としての音楽には、特にジャズやブルースといったブラックミュージックの影響と、それを取り入れてつつも、咀嚼し、マネではなく、日本の音楽として新たに生み出されていった素晴らしい歴史がある。__
Michael Jackson、Prince、Earth Wind & Fire、The Isley Brothers、など、星野さんが聴いて育った音楽と、日本人として生まれ、先祖が聴いてきた日本の歌謡曲、ポップス。星野さんという人は、自分の作り出す音楽に日本人としてのルーツを忘れず、こぼさず、脈々と歴史を繋いでいこうとしている人なのだと、より感嘆のため息。ほぉぉ〜。
またその事をより深く通じる章が
▶︎『人間』
というタイトルの笑福亭鶴瓶さんのことを語ったエッセイでしょう。
__「人間は、死んでも終わりじゃないんです」
「残された者が、その人を語り、バトンを繋いでいきますから。だから、人間は死んでも終わりじゃない。〜 」__
そして、最後にやっぱり皆さんが気になるお話。
▶︎『新垣 結衣という人』
あは〜ン。もうこれラブレターですね。世間にこれだけ堂々と、大公開してたわけです。
文章を書く人というのは、衝動を抑えられずにはいられないものですね。どうしたって書いてしまう。いいじゃない、いいじゃない。彼女が常にニュートラルな状態であることにときめいた星野さんも、やっぱりニュートラルな人なのだと思います。素敵だ。お似合いだ。ごちそうさまでした。
20代、30代と違い、歳を重ねるにつれ、気合いだけで乗り切り頑張ることが出来なくなってきますね。
亀の歩みでよろしい。こころが擦り切れ、消耗しないように、『いのちの車窓から』第二巻、お待ちしてます。
カバーイラスト ビョン・ヨングン
カバーデザイン 宮古美智代
挿絵 すしお
表紙画 和田三造
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