医療に従事される方は患者さんがより長く、よりよく生きられるように日々苦心されていることと思います。
しかし、患者さんの余命がわずかになってしまったとき、医療としてできることは限られてきます。
「死」という圧倒的なものの前では医療は無力かもしれません。
しかし、患者さんのそばにいるものとしてできることはないのか。
本書は、それを探るためにプライマリ・ケア医の先生と宗教・死生学の専門家の方々との対談をまとめたものとなります。
死に触れる機会のある医療者だからこそ
宗教と聞くと皆さまどんなイメージを持つでしょうか?
怪しい、胡散臭い、自分とは関係のないことだと思われる方も多いのではないかとも思います。
しかし、お盆にお墓参りをしたり、新年に初詣に入ったり、多くの日本人もしっかり宗教に触れる機会を持っています。日本人の宗教観については創唱宗教と自然宗教というかたちで本書でも解説しています。
ひとつ想像してみていただいたいのですが、
もしあなたが亡くなってしまうとき、お葬式はどうしたいですか?
遺骨はどうされたいですか?
それがあなたのご家族の場合だったらどうですか?
死んでしまえばもう関係ないのだからどうなったってかまわない、と言える方はほとんどいないのではないかと思います。
そこにあなたの宗教性があるはずです。
科学技術が発展して、宗教なんてあやふやなものは役に立たないと切り捨ててしまうとするなら、死を前にしたときに何を考えるのか。
患者さんをお看取りする機会がある医療者としてはもちろん、人生を歩むうえでも考えの奥行きを広げてくれる内容となっております。
人として、医療者として
本書は対話ベースで易しく死生学・宗教学を学べる本となっておりますが、章ごとに新たな発見があり、シンプルに読み物として楽しんでいただけるものとなっております。
各章の聞き手となった孫大輔先生が本書冒頭の「はじめに」で章ごとの内容に触れていただいているので、一部抜粋いたします。
編集部目線の編集後記
本企画はもともと月刊誌「治療」で連載していた企画を、再編集・追加収録してまとめたものとなっておりまして、一部は本noteでも公開しておりました。
企画のきっかけはたまたま「臨床宗教師」という資格の存在を知ったことでした。プライマリ・ケア医はゆりかごから墓場まで診るのだとよく耳にしますが、死生学や宗教というのは家庭医療にもすごく親和性があるのではと思いました。看護師の方などケアをする視点のある医療者にとってはとても重要なものであろうと思います。
各対談は私も息をひそめて参加しておりましたが、本当にどの収録も面白くて、言葉だけではない、話す方それぞれの雰囲気の違いを肌で感じたのも興味深かったです。
一応、医療従事者の方向けの本ではありますが、リベラルアーツとして誰でもためになる内容となっており、私自身も本を作りながら「良い読後感」に包まれておりました。
読み物としての本となりますので、医学書っぽさを抑えて、できるだけ一般書に近づけようと、縦組み・右開きにし、紙はクリーム色に寄せたものを使っています。カバーもやさしい触り心地にしたくて紙の素材感が出るものにしました。
随所で加えたイラストも良い味出してます。
本の目次
連載も含めるとかなり長期の企画だったのですが、その間に自分や身内で体調を崩したり、病院にお世話になったりすることがありまして、そういうときに沁み入る内容がすごく多かったです。ぜひ多くの方に読んでもらいたい中身となっておりますので、手に取っていただければ嬉しいです。
文責:編集部 カーター
リンク
・南山堂
・版元ドットコム
・Amazon
・楽天ブックス
電子書籍
・医書.jp
・M2PLUS