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スポーツコミッションの名称使用問題に進展がありました。

2022年3月31日、スポーツコミッションの名称使用に関する一つのニュースが走りました。
日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)の表明したこちらの記事です。

ある団体が2010年に「スポーツコミッション」を商標登録したため、これまでは各地域のスポーツコミッションは団体の名称に「スポーツコミッション」を使わないか、使うとしてもその団体に申請して許諾を得なければなりませんでした。そのため、スポーツコミッション機能を持つ団体の中には、あえて「スポーツコミッション」という名称を避けて、別の名称で活動しているところも多くあります。2021年10月現在、実に177もの地域スポーツコミッションが設立されていますが、そのうち団体名に「スポーツコミッション」という名称を使っているのはわずか58団体にとどまり、これは全体のおよそ3分の1の数字です。

参考までにスポーツ庁のホームページをご紹介します。
国をあげて地域スポーツコミッションを推進していることがわかります。

私たちツノスポーツコミッションは、その団体から許諾を得て名称を使用していましたが、実は最初から許諾申請をしていたわけではありません。その団体が商標を取得しているという事実も知らないまま使用してしまっていました。なぜなら、スポーツ庁が各地域で設置を推進している「スポーツコミッション」の名称が一団体により商標登録されて自由に使えない状態にあるなどとは、思いもよらなかったからです。
当然ですが、商標はその団体が正規の手続きを経て得た正当な権利ですので、事前に確認していなかったこちらに落ち度はあります。

設立後、しばらくしてからその団体から通知が送られてきました。
「スポーツコミッション」の商標を有しているため使用するには許諾が必要です、という内容でした。
この団体が商標を取得したのは、スポーツコミッションという名称を、本来の定義から大きく逸脱して使用したり、一部の事業者が多大な利益を上げるために使用しないように管理することで、スポーツコミッションが持つ意味やスポーツによる地域の活性化が阻害されないようにするためでした。ですので、商標使用を厳しく制限したり、使用料を求めたりすることもなく、きちんと手続きを踏んで契約すれば許諾をするということでした。

実際、何度かのやり取りを経て、無事に使用許諾契約を締結できたので、ツノスポーツコミッションという名称で活動を継続することができました。

この団体が商標を取得した2010年の時点では、スポーツコミッションという存在そのものがまだまだ一般的ではなく(現在も一部しか浸透していないと思いますが)、早くからその価値を落とさないように保護を目的として商標を管理してきたことについては、この団体がすべきものだったかどうかの議論は別として、一定の役割を果たしてきたと言っていいのかもしれません。

ただ、私が都農町に来て、ツノスポーツコミッションの設立や運営に関わり始めた2019年時点では、すでにスポーツ庁も第2期スポーツ基本計画の中で地域スポーツコミッションの設置促進を謳っており、まだ世間一般での認知度はほとんどなかったかもしれませんが、スポーツによる地域活性化に関わる人たちの間では、公益的に使用する名称として十分に認識されていました。ですので、その団体から通知が来た時はちょっと訝しく思ってしまったことを覚えています。逆に言えば、私が訝しく思う程度には、すでにスポーツコミッションが公益的な側面が強いものになっていたということでもあります。

ツノスポーツコミッションだけでなく、おそらく同じような経験をしたスポーツコミッションもあると思います。また、あえて名称にスポーツコミッションを使わなかった団体も多いだろうと思われます。
スポーツコミッションという言葉の概念が浸透すればするほど、団体の名称にスポーツコミッションが冠してあることでその団体の機能が伝わる効果が高まってきます。それなのに、一団体の許諾を得なければ名称を使えないという状況は、スポーツ庁が推進しようとしているスポーツによる地方創生・まちづくりに対する大きな阻害要因になると感じていました。これから設立されるスポーツコミッション機能を持つ団体も同様に困惑するに違いありません。
そんな折、日本スポーツツーリズム推進機構の方と話をする機会があったので、この件について話をしたところ、すでに水面下で動かれているということで、やはり多くの団体が同じことを思っていたのだと知る機会となりました。

それからしばらくして、2022年3月25日にスポーツ庁が発表した第3期スポーツ基本計画の中でも、スポーツによる地方創生・まちづくりについて触れられています。その中心的な役割を期待されているのがスポーツコミッションです。

これまでのスポーツコミッションはスポーツツーリズム、合宿誘致などの文脈上に位置づけられていましたが、第3期スポーツ基本計画では、さらに深化し、地方創生やまちづくりに寄与することが期待されています。2月14日に開催されたスポーツ庁主催の地域スポーツコミッションシンポジウムでは、ありがたいことにツノスポーツコミッションの事例紹介の機会をいただきましたが、これもスポーツによるまちづくりの観点から登壇依頼があったものです。
私は地方創生・まちづくりの次の段階として人材育成が掲げられることになるだろうと思っているのですが、いずれにしても今後、地域スポーツコミッションはさらに多くの地域に設立され、より重要な役割を果たしていくことになります。これにより、スポーツコミッションという名称およびその機能は、さらに広く公益的な意味合いでの市民権を得ていくことになるでしょう。

その意味で、今回の日本スポーツツーリズム推進機構の表明はインパクトの大きいものでした。特に重要な部分を引用します。

本審査の段階を経ることで特許庁の意見として「一般用語」との認識や判断に至るかを確認する意図も含んでいました。
(中略)
特許庁による拒絶査定の理由では、『「スポーツコミッション」という文字は、「スポーツを通じた地域振興を目指す組織」等程の意味合いを認識させるにとどまるものにすぎず』とされ、識別力がないと判断されました。また、今回申請に協力頂いた知財事務所法人によると、「この拒絶査定により、少なくとも審査段階における特許庁の見解では、「スポーツコミッション」という語が一般的な用語であることが、明確になったと思われます。」との見解でした。

一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)
「スポーツコミッション」名称使用についての表明

つまり、特許庁の判断として「スポーツコミッション」が公益的なものであるという判断が示されたわけです。
これにより、今後設立される団体では、おそらくスポーツコミッションの名が冠される割合が多くなっていくでしょうし、既存の団体の中でもあえてスポーツコミッションの名称を使わなかった団体が名称を変更するだろうことも考えられます。そうするとますます公益的な意味合いが強くなります。
この表明に至るまでには様々なご苦労があったことと思いますが、日本スポーツツーリズム推進機構の今回の働きは大いに称賛されるべき成果だと私は思います。

ちなみに商標を有していた団体も、そのホームページにて以下の通り商標について表明しています。

「スポーツコミッション」の商標について
これまで、私ども一般財団法人 日本スポーツコミッション(以下、SCJ)は、「スポーツを活用したまちづくりや地域づくりを推進することによって地域の活性化を図ることを目的に設立されたものであり、この目的を達成するために地域において設立された組織、ないしは当該組織により営まれる活動を『スポーツコミッション』と呼ぶこととしています。」としてこの「スポーツコミッション」を商標登録していましたが、スポーツ庁による4要件や令和4年度からの第3期スポーツ基本計画において「スポーツまちづくり」が広く謳われるようになったことから、商標としての延長申請をしないこととしました。
ということで、今後はスポーツコミッションと名乗る場合は、SCJの使用許可は不必要ですが、スポーツ庁の4要件にもとづいて活動していただければと思います。

一般財団法人日本スポーツコミッション
ホームページ

としながらも、まだホームページ下部の「スポーツコミッションは登録商標です」という文言は消えていないところが哀愁を感じさせます。いくつかの視点で経過を追うと、もしかすると意図して延長申請をしなかったのではないのかもしれませんが、ここは額面通りに受け取っておくとしましょう。どうあれ、私があのとき訝しがった原因が今ここに解消されました。

先にも記したように、第3期スポーツ振興基本計画ではこの5年間の目指すべき方向性が示されています。そこでは各地域でスポーツコミッションが果たすべき役割は小さくありません。
私はその末端に関わる一人として、まずは今いる都農町で、ツノスポーツコミッションが掲げる通り、スポーツで人・事業・企業を呼び込み、地域課題の解決を目指したいと思います。そして、他の地域のスポーツコミッションとの連携を図ること、次世代の育成に参画することを当面の目標に活動していきたいと思っています。



自分の真意を相手にベラベラと伝えるだけが友情の行為ではないということさ。それがわたしの提唱する真・友情パワーだ…(キン肉アタル)