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旅楽団

52
全50話のお話ですが 12話までなんとかお付き合いください よろすくおにがいいたすます 毎週金曜の夜深くに2話あげたいとやっております。 でわ、また来週もご賞味ください。 来店お…
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旅楽団を書き終えて

読んでくれた方々、ありがとうございます。

幾度となく書いてますが、10年以上の前の作品を治して治して、形にしましたが…。読み返すたびに、やれ書き損じがぁ…。前後のつじつまがぁ…。

タクトがぁ…。マイタケがぁ…。こぶためぇ…。なんて…。

まるで、無限に穴掘りをしているようでした…。

何とか、長いお休みに書き直して形にしたものです。

少ししたらまた有料のみにしてしまいますが、ご了承ください。

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旅楽団 エピローグ

【エピローグ】
僕たちの旅は、それからも続いている。
困ったこともいっぱい続いているよ。
青空デンデンムシの兄弟の実家に行ったり、
大きな雷の木に会いに行かなくてはいけなかったり、
変な教授に地図を作り直してもらいに行ったりね。
銀鱈狐は相変わらずタクトを狙っているし、
もちろん演奏も続けているよ。

旅楽団だもの。

まだまだね。
いつか機会があれば、この続きの話を話そうと思う。

そうして、僕

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旅楽団 50

【50 最初で最後の物語】

ぶったまげたことに、僕たちは[特別特別最優秀新人賞]というありがたい賞をいただいたんだ。なんでこんな事になったかというとね。少し長くなるのだけれどさ…。

僕たちは病気の治らないタクトと、[イマ・市]の黄色い街のはずれにある小高く深い森の中で[ドキュメント・イル]の演奏会を[ちくわぶ]を使って眺めていたんだ。出てくる凄い演者さんたちに嫉妬して、あまりかっこよく無い演者

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旅楽団 49

【49 『明後日でも明日でも今日でもなく今から』】

「まあるい穴からただぼんやり眺めるのも乙なもののよねぇ」チリチさんは、片手に[メロン殺し特選]を持って笑いながら言っている。
「それにしてもさ、多分一番最初だから前座なんだよね?うまいよね。会場中のお客さんがフワリフワリと浮いてるくらいだものね。王様も浮いてるね」タクトは遠くを眺めながらぼんやりとつぶやく。
マイタケはわざわざ会場まで出向いて買

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旅楽団 48

【48 みんな、だいすきさ!】

何やらの音で目が覚めるのさ。
何とか目を覚ましたオリはビックリしたのさ。
そこにはてんぷらやま楽団のみんながいてさ。
目を覚ましたオリを見て喜んでハイタッチなんてのをしている始末さ。
オリは体を動かそうとするんだけど、夢の続きのようにピクリともしないのさ。
よくよく見てみる通りの体はすっかり埋められてしまっているのさ。
オリは自分が埋められているということに愕然と

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旅楽団 47

【47 見本録へ】

ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
ヒュュゥゥ
うぼっ…。
げぼっ…。
うはっ…。
うひっ…。
久しぶりに息を吸った気分だね。
何とかしてかすかにまぶたを開けてみるのさ。
そんな音がなんだか聞こえるんだね。
ぼんやりした景色が見えるね。
森の匂いかね?オリは森に連れてこられているのかね?
頭の中はぼんやりしているのさ。
この匂いは

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旅楽団 46

【46 森沢山な話】

[イマ・市]の森は僕が想像していたものよりずっと深いものだった。
タクトはチリチさんのバックに入れられて、ここまで運ばれてきたんだ。
道すがら、タクトの口には何度か北魚の燻製を放り込んでね。
マイタケとモグラたちは先に行ってタクトの入る穴を掘っていた。
僕らがそこについても、タクトを降ろして横にしているときも、彼らは手を休めることなく土を書き出している。
僕らは手伝おうと、

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旅楽団 45

最終楽章
『明後日でも明日でも今日でもなく今から』
【45 ようくお聞き。私たちは私たちの事実をこの読み物に込めて君たちに記し託すのだよ】

『グリヲ』について、僕とチリチさんはマイタケに言われるがまま調べたんだ。
「[ちくわぶ]を読み物にすると中に書いてあるはずだよ」
マイタケはその言葉を残すと、いつものようにソロバンを使ってどこかに行ってしまったんだ。
僕らは[ちくわぶ]の紐をほどく。
紐をほ

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旅楽団 44

【44 マイタケのポテンシャル(スーパーコンピューター編)】

タクトは、僕たちの呼びかけに答えなかった。
一つだって…。
チリチさんは頭を抱えてしまっているし、マイタケは必死に何かを考えている。
僕はと言えば、倒れてしまった仲間の、チビッコいピエロの子を起こそうと
「ねぇねぇ。ぶ。ねぇねぇ。ぶ」って、繰り返すことしかできなかった。
タクトの息は詰まってしまっていた。
文字通り吸ったり吐いたりして

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旅楽団 43

【43 夢拍子】

不思議な夢なのさ。
それはどんな夢かというとね。
歳末セールのくじ引きをやっている夢だったんだよね。
オリの順番になって、あのガラガラを回すのさ。
「2回引いていいよ」って、言うおじさんの掛け声に合わせてオリは、2回ガラガラを回すんさ。
特賞は2個、金色のタマが出ればいいんだってさ。
ガラガラガラガラ回すと、コトリと球が落ちたんだよね。
出たタマの色は金色だったのさ。

そのタ

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旅楽団 42

【42 てんぷら山の日が沈む】

銀鱈狐の黒く暗い部分が僕らをにらむようにしている。
その焦点は外されることなく僕らに向き合っている。
水槽の水は、すっかりなくなってしまった。
すべてが穴からこぼれてしまったんだ。
僕がすこし体を動かすと、底のいびつな変形のせいでグラグラと左右に動くんだ。
銀鱈狐は前足を水槽にかけると、勢いよく水槽を蹴り飛ばす。
水槽は横に倒れるとそのままコロコロ転がる。
僕らも

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旅楽団 41

【41 空の香り。土の感触。目に浮かぶ声。】

オリ達が青空の兄弟達から細かく事情を聴いていた時に、大柄の飛脚が風に乗ってやって来たのさ。最初は凄くちっちゃいゴミのようなものが空に浮かんでいるように見えたんだけれどさ。それがこちらへだんだんと近づいてくるとね。それが大ぶりの蓮の葉だって言うのがわかったのさ。その蓮の葉は風にフワリフワリ舞って踊っている。
その姿がオリ達に見えるようになった頃オリ達は

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旅楽団 40

第五楽章
『僕たちの強い強い気持ち達』
【40 銀鱈狐の暴論劇場】

光る体を持つ美しいものは、僕らの浸かっている水槽の前でいったん走っていた足を緩める。
そしてその場で光り輝く体をブルブルっと一度震わせたんだ。
そうしてその光輝く体を持つものは、ゆっくりとその長い舌をチロリチロリとやった後、僕らが入っている水槽の前にやってくる。
光り輝く体を持つ美しい生き物は、あたりに蜘蛛たちの姿が見えないのを

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旅楽団 39

【39 青空のもとの弁護会】

双子の兄弟たちの話をオリ達はフンフンと聞いていたのさ。
チリチさんは鬼のような顔をしていたんだけれどさ。
「電車の中でゆっくり話を聞こうかね?」
そう提案すると、首をブンブン振ってね。
「それは断固お断りよ!これ以上この[メロン殺し特選]を減らすわけにはいかないわよ!」そう言うなり、その場にどっかと座ってね。
ピクリとも動こうとしなかったのさ。
そう言うわけで、この

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