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「答え合わせ」の旅㉕

たった2単語で救われる世界

Rotterdamのアナウンスが聞こえドアに向かう。
近くにいたちびっこちゃんがパパママに倣って席から立ち上がるが、急な揺れに耐えきれず転んでしまった。ビックリして大泣きの彼女はパパになだめられ抱き抱えられる。
そんな家族たちの後ろに続く。重い荷物もある中でステップのある電車の乗り降りは気合いがいる。私も大泣きするから誰かこの荷物抱き抱えてくれ、と思う。
電車のホームにスーツケースのタイヤが着地した瞬間、ふぅーと大きく一息ついた。
RotterdamCentraalStation。新しい寝床。
お世話になります。

二枚持ってる切符はどっちが行きでポーッと言ってくれたチケットか忘れた。かざしてみるとゲートが開いてくれた。当たり。

駅を出ると、でかいなんてもんじゃないだだっ広い空間。そして駅舎、なんじゃこりゃ。先進的なデザインもそうだが、とにかくでかい。でかすぎて圧倒される。
脳がバグる。
写真じゃ絶対伝わらない、と思いつつ撮った写真は想像通り何も伝えてくれない。
恐竜と出くわしたらきっとこれくらいの角度に首を曲げるだろうってくらい上を見上げた。

RotterdamCentraalStation

ホテルへルートを設定し、道なりに歩きだした。
重い。疲れた。の感情が交互にあふれて、口からも躊躇なく洩れる。商店街と言われてるこの通りは整備されて、キレイな飲食店が立ち並ぶ。これは商店街というよりモールだ。
なんでも食べるものありそうだ。たぶん行かないけど。

なんか異常に重く感じる。ヘトヘト。
きっとあの公園で10㎞以上歩いてたであろう。
なんてハードスケジュールだ。組んだの私か。

10分、いや荷物もあるから15分ぐらいかかったか。
ホテルに着いた。真向かいには中華料理屋なのか漢字の看板が。方向音痴の私にとって非常に有益な目印だ。

ドアを開ける。少し歩いた先にフロント。二人の女性。
さぁてどちらが優しいかな。
黒人のお姉さんが先に空いた。Hi~パスポートを渡す。
なんか言ってくる。でももう心は折れない。
ソーリーアイキャントスピークイングリッシュと笑う。

これ帰国後、アイキャントスピークイングリッシュって言いがちだけど、アイムジャストラーニングイングリッシュとかの「いま英語勉強中なんだよね」みたいなニュアンスで言うと聞こえがいいぞっ!ってバズってた。
もっと早くバズれや。確かに前向きじゃないよな。
しかもこういうときはcan'tじゃなくdon'tと言うのが正しいらしい。ぜーんぶ間違ってた。

そのときはそんなことも露知らずなその子は、このあとお姉さんが返してきた一言に心がグッとなる。
お姉さんはそれを聞き、「No problem!」と力強く、そして優しく言ってきたのだ。
え。
え。
え。
ジーーーーンとする。
ヘトヘトの身体で湯船に浸かったような温かさに包まれる。あぁ私はこの言葉が欲しかったのか、と思う。
観光都市アムステルダムではもらえなかったこの頼もしい2単語。
このお姉さんのおかげで、スキポール空港での挫折もシーフードレストランでの苦しみもチャラになりそうだ。

私はNo problemなのか。
ずっとproblemなのかと思ってた。誰にも拒まれていないことは理解できていたが、なんだか、やっとここにいることを肯定された気がした。

預り金みたいな感じで確か100ユーロ、金を取られた。これは預り金でチェックアウトのとき返すから、と執拗に言われた。あ、違う。私が執拗にリターン?って聞いたんだ。
あれ、ここ当日精算だっけ?私予約のとき払わなかったっけ?それとは別で?遡れない記憶に不信感が増す。まぁ返すと言ってるから、、とりあえずここはいいか。

その後にも英語でなにか説明をされるが、やっぱりわからなくて困り笑いしてると、お姉さんはOK!と言ってパソコンをしばしカタカタと打ち始めた。
ある程度打ち終わったのか、国を聞かれJAPANと答える。最後にタタン!と仕上げをしたお姉さんはカモン!とパソコン側に私を呼んだ。
まさか。
まさかそんなこと、と思った通りの展開が私の目の前の画面に表示されていた。画面左に英語。右に懐かしき日本語が表示されている。
朝食を取りたいなら何階。売店が何階にある、でもカード払いのみ、とか。

OK?わかる?と聞いてくれた。
わかるなんてもんじゃない。スラスラ読める。OKOKと首をブンブン振る。オランダのパソコンで日本語が見れるなんて。

Thank Youとは伝えたがこんな2語じゃ私の感謝の思いが収まりきらない。
訳していただけるなんて思っても見ませんでした。私はとても心が温かくなりました。羽が生えて舞ってしまいそうなくらい、いま嬉しい気持ちでいっぱいです。深く感謝申し上げます。また、貴社の益々のご発展とご活躍をお祈り申し上げます。
ぐらい伝えたい。

カードキーを受け取った。エレベーターへ向かう。
ジーーーーンとしながらエレベーターを待つ。

その間、頭のなかではインタビューアーが私を質問責めしてくる。
「こちらのホテル誰が選んだんですか?」
あ、ここですか?私…ですね。(照れ
「確かこれは旅行会社のパックでなくご自分で選んだんですよね?」
あ、はい、そうですね。Expediaで…(照れ
「いやお見事ですね!見る目がありますね!」
いやいや、それほどでも…(照れ
もう照れるなぁ。なんてセンスがあるんだ、私。
こんな風に調子に乗りたいところだが、それよりお姉さんへの感謝のジーーンが深く響いて離れない。
ロッテルダムに来て良かった、と到着30分以内に思えている。ラッキーガールだ。

無事に部屋を案内されたことで余裕も生まれたか、ちゃんとドアを開ける前からルームツアー配信をスタート。
ガチャ。
およよ?思ったより、、あれぇこんなもんかぁ。
グレードアップすると思ってたから少し拍子抜け。
でもうん、キレイ。よしよし。
窓からの風景はビル郡が見えて日本にでもいるかのよう。私はいまどこにいるんだっけ。
ロッテルダムの温かさに触れながら運河のあるアムステルダムの風景が懐かしい。

Instagram配信でしか撮ってなかったのでHPから借用。
改めてみても良いお部屋。
窓からの殺風景(配信よりスクショ)

しかしさすがに疲れた。というかものすごく頑張った。
今日は珍しく自分を褒めるわぁ…とベッドに倒れこんだ。倒れこめるのも無事に辿り着けたゆえ。と思い、また自分を褒めた。

時刻は夕刻。
少し落ち着いたらスーパーに行かなきゃ。Albert Heijnは近くにありそうだ。でも暗くなっちゃうのかな。
寝てるような寝てないようなダラダラ具合でロッテルダムのことを調べる。懇意のoranda.jpでさえロッテルダムの話題になると途端に口を閉ざす。
この街は日本語で得られる情報量が乏しすぎる。
アムステルダムとはメトロもトラムもバスも運営会社が変わる。私はなにをどうやって乗れば良いのだ。

参ったなぁと思ってたのも数秒前なのに、やはりこの女は最適解に辿り着く。さすがの情報収集力は新たなるカードの存在に気付いた。
Tourist Day Ticket?ロッテルダムとハーグで使えると書いてある。なん…だと?震えそうだ。

怒りで震えてるのではない。先を読まれてたのかと思うほど、私の次の日の予定はロッテルダムとデン・ハーグを回るはずだった。これがあれば難なく回れると言うことか?
サッカーのスタジアムは何市になるわけ?地図をみるとフェイエノールト。だよなフェイエノールトだよなぁ。
…どこやねん。地図じゃわからんな。
Wikipediaでフェイエノールトを調べるとロッテルダムという地名がその隣に添えられている。
ギャア!もう思い通りに行きすぎて笑いが止まらない。
私のために作られたカードですか?

ぃよし。ガバッと起きた。ロッテルダム駅にもう一度行こう。券売機で買えるらしい。
着いたときにこの情報を知ってれば買って帰れたのだが致し方ない。まぁちょっと街をブラブラできるしいいか。今度は重い荷物たちを置いていけるし。

この子、ほんとよく頑張るなぁ。誰も言ってくれないから自分で言ってあげよう。
よく頑張ってるねぇ。