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短編『何も気にならなくなる薬』その178

彼はすっかり駄目になってしまった。
精神的に壊れてしまった。
それをどうこうできる技量は私にはない。
心を壊してまでやる仕事があるのだろうか。
自分にはこれしかないと思い込む人ほど、好きな仕事が続かないと勝手に思う。
人生はいくらでも生きようがある。
楽なものもあれば辛いものもある。
でも、生きていけばきっとそうした世界は見つかる。
現にそうした人たちはたくさんいる。
自分を許して、他人を許す。
これは難しいことかもしれないが、いずれ彼が知らなくてはならないことの一つだ。

私の言葉はもう届かない。
彼は新天地で新しい自分と、過去の自分の視野の狭さに気がつくことだろう。

他人が手を引いてくれる。
そんな簡単なものはない。
道連れはゴメンだ。
人は薄情で、自分の命が最も惜しい。

最後は自分だ。
誰しもが自分を優先する。
愛情はときに無情な姿をみせる。
すがりついてはいけない。
横並びで歩けるようでなければ、同情が後ろ髪をひく。

「次があるさ」
そういう人ほど無責任に見えるが、実際のところ楽しそうに生きている。


人間関係というのは難しい。
多くの人間関係を知っておくべきだ。
学校はその一つの例であって、失敗をすれば浮くし、成功をすれば中心に立つこともできる。
なんにせよ一度失敗しなければ学びはない。
踏み込むべき場所とそうでない場所がある。
傍から見ると、あの人は踏み込み過ぎだと思える。
しかし、自分もまた他人から見れば踏み込みすぎていると見られている。
自分にできないことをする人間はやはり青い芝生だ。

枯れた土地を離れ、新しい土地で新たに事業を起こす。
これはごくごく自然な考えだろう。
今いる職場、環境が人間関係において枯れた土地でないか、
また自分らしくいられる場所であるかどうか、今一度考えるべきときがある。
石の上にも三年。
けれどもなんにもならないときもある。
そういう人に限って
「俺は石の上に三年いた」と愚痴をこぼす。
何も学ばずに石の上にいたのだろうか?

美味しいご飯を食べます。