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短編『何も気にならなくなる薬』その83

作曲家

彼女

焼跡


あれは酷い火事だった。
別荘であったのが幸いだったか、近隣住民に被害はない。
焼跡の中にはピアノらしき残骸が辛うじてわかるくらいであった。

「あの別荘は音楽を作るためには最適な空間」
テレビでコメントをする女性は作曲家の一人である。
全焼の原因を探る中、それがはっきりとしない現在では、様々な憶測が世間を騒がせた。
利用していた作曲家に恨みがあって殺そうとした。
単純なタバコの不始末。
もしくは、今後出てくる才能、若い作曲家の芽を摘み取りたかったからか。

最後の利用者であった彼女は命からがら救出され、意識不明の重体。
真相は未だにわからない。
果たしてどの線だろうか……

「なぁ、あのニュース見たか」
「あぁ、あれ、そうだよな」
「いや、大丈夫だって、原因なんかもうわかりやしないし、誰も話さなければバレないよ」
「それもそうだよな、ただ近くで花火をしていただけだもんな、俺たちのせいじゃないよな」
「俺たちが原因の火はないよな」

美味しいご飯を食べます。