ご飯よりも人間味にしか目がいかなかった

2冊目の本は
「おいしいごはんが食べられますように」

これはただただ食べること好きだったから、タイトルで気になって手にとってみました。
ごはんにまつわるほっこりエピかなんかと思ったら全然違って。
仕事+食べもの+恋愛小説、というなんとも複雑な本でした。

だから一回読んでみたけれど上手く自分で解釈ができなかった。
でも心がざわざわと波を立てた。こんなに人間味のある小説を久しぶりに読んだなと。

今回はあらすじというよりも、登場人物にフォーカスを向けて
その人の考えを自分に照らし合わせてみた感想を書いてみました。
読書感想文とはちょっと異なるかもしれないけど残しておきたくて。

そこそこできてしまう人生

読んでいてこの人嫌い、ってなった人物が「二谷」という男。

会社ではそこそこなんでもできる人で、あまり目立たないように
普通の人間を演じているかのような、どこにでもいる会社員のような人。
なんで嫌いなのかというと、「食べる」ということに対して全く幸福感を持っていないから。
食べることを「生きるための作業」だと感じるくらいに無頓着で、家では基本的にカップラーメン、できれば食べたくないけど、生きなきゃいけない。
食べることが大好きな私にとっては、なんとも腹立たしい二谷。
終いには、結婚式に関して
「人を祝うのも、飲み食いしながらじゃないとできないって、だいぶやばいな」
なんて言い出す始末。
二谷を私が働いている式場へ招待して、お腹いっぱいにコース料理を食べさせて「おいしかったです」って言わせたい。
何度もそう思いました。
(小説なのでフィクションですが何故か敵対心をむき出しにしてしまう私がいました。)

でも、共感できることもあって。
自分の会社での立ち位置や、自分の好きなことを諦めて安全圏に入ることだとか、たくさんの悩みを抱えて人とのギャップを妬んで生きてきた人でした。

「好きなことより上手くやれそうな人生を選んだ」
「好きより大切なものがあるような、好きだけで物事をみていると、それを見落としてしまうような気もするし、そうであって欲しいと望んでいる」

この二谷の言葉にハッとさせられる自分がいました。
私自身も今こそ好きなことを仕事にしているものの、現実とのギャップに何度も悩んできました。

好きじゃないけど、こっちの仕事を選んだ方が、給料がいいし、福利厚生もしっかりしているし、ライフバランス取りやすそう。
波風立てず、静かに仕事ができるんじゃないか。好きなことよりも優先しなければならないことだってあるし。

二谷のそんな気持ちは痛いほど分かって。
でもきっと二谷のように自分が安心安全で入れる場所に落ち着いてしまったら今よりもっと相手を憎んでいたかも、とも思います。
好きなことで大変だけど自分らしく生きている人を、妬んで憎んで、でも自分は好きよりももっと大事なものを選んだんだ、って言い聞かせる人生になっていたのかもなと。
二谷を見ていて強く感じさせられました。

仕事ができる頑張り屋ほど抱えているものは大きいのかもしれない

もう一人、私が注目したのは「押屋」という女性。
二谷の後輩にあたります。

学生の頃にチアをしていた女性で、会社でも仕事ができる、自分が納得いくまで仕事をしようとする、そんな女性です。
二谷と違って食べること好き。いろんな地域に行ってその土地の郷土料理や有名料理を食べに行くくらい。二谷よりは食に見出しています。だからこそ二谷に反論、意見できる貴重な人。
何事も論理を組み立てて話せるそんな頭の切れる人物。
でもそんな彼女だからこその悩みは尽きなくて。

「弱いと思われたくない、人並み以上にできると思われたい」
「したくないことも、しんどくても誰かがしないと
仕事が回らない」

ああ、すごくわかる、本当にわかる、と共感してしまうくらいだった。
仕事をしている以上、やっぱり成果を出したい。
他人と自分を区別できるものが欲しい、区別できるものって数字や成果だ。
できない子だと呆れられたくない、よくできる子だって認めてもらいたい。
じゃないと会社に自分の人権なんてない。

言い過ぎでは?と言われるけど、本当にそう思っています。
でも、こうも思っています。

仕事に真剣に向き合っているから、だからこそ
ここまで考え込むことができるんだと。それって確かに考えすぎだけど
素敵なことなんじゃないかと。
自分はもっとできる、過信に聞こえてしまうかもしれないけど
誰よりも仕事に対してまっすぐなんじゃないかと。

押屋はこうも言っていました。
自分が経験してきたチアに例えて

「自分をチアできない者に人をチアすることはできない」
「他人に頑張れって言って励ますのはすごく簡単です。でも
自分を励ますのは難しい」 と。


最初は嘘でも自分を愛していたい

とにかく自分と重ね合わせることが多くあったこの本。
すごく人間な二人と、出会えてよかった。
自分のことを認めるって本当に難しくて、そこそこな人生でも
一生懸命で悩んでしまう人生も、全部がざわざわしていて。

そんな中でも自分を愛せなくなってしまったら終わる気がして。

だからこそこの本の二人にも自分にも
まずは嘘でもいいから自分のことを愛してくださいと
そう伝えたいなと思いました。

最初は嘘でも、徐々に自分の素敵な部分とかできることとか
いい断片が見えてくる気がします。
そうしたら自分の一部を愛することができるから、いつかきっと
自分の全てを認めてあげる日がきます。
そうしたら、人にも優しくできる自分になれるから。

結局人間は複雑で難しい生き物なんだと
二人の観点からひしひしと感じる、そんな1冊でした。

おしまい。


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