つくろうとするより、生まれるようにスペースを空ける
私には目的がないんじゃないか!みんなどうやって目的を見つけているんだろう?という疑問から、友人にインタビューをはじめた。今回協力してくれたのは大学の同じ学部の友人。目的の話から始まり、ゆるやかに脱線して発展しながら人生のエッセンスをたくさん聞かせてもらった。
目的と目標の違い
彼は目的と目標をはっきり分ける人だった。彼の中での区分はこうだ。
目的:遠いところにある大きいゴール
目標:目的を達成するためのマイルストーンとなる小さなゴール
その距離感の違いから生まれる違いを聞くと、「目的は壮大で挑戦のイメージだから、目的を見るとやる気になる。心の中から出てくる。けれど目標は近いところにあるからやる気はあまり出ない。」とのことだった。
彼の目標を聞いてみた。
「人として正しいことをすること。自分が考えた正しい道を行くこと。」
その目的を持っているがゆえに、怒りが生まれることもある。実家でテレビを見ていたときに、ふと「この社会は終わっているな」と思ったときがあったそうだ。世の中に対する怒りが生まれ、だから自分が動かないといけない、と強く思った。彼にとって怒りはモチベーションの種であり、「人として正しいことをしたい」という想いと「この社会はおかしい」という想いは表と裏の関係だという。
そんな強い目的はどうやって生まれたのか。
「自分の目的は大学に入ってずっと考えていた。根底には地元が好きだ、家族が喜ぶことをしたいという想いがあった。」
長い期間のうちに熟成されて、友人とはちみつの事業を起こす際にたくさん話し合う中で進化し、事業で形にしていると話してくれた。
目的の熟成期間
彼の家族への想いは人並み外れている。全国の息子の鏡だ。「大学に入って世界が広がり、そのような環境を用意してくれた家族に感謝しかない。それ以外に動機がない。」とまで話してくれた。そんな気持ちから、人のために自分ができることを探すようになった。
彼は自分のために何かしたいとはあまり思わないタイプだそうだ。モチベーションのベクトルは外に向いている。
同時に「自分が生きている意味」や「この世界でできること」も考えている。自分の中にもベクトルを向けて思考を深める時間をつくっているそうだ。
「自分なり」のやり方と立ち位置を探す
彼は自分が潤滑油となって周りの人と良い関係性をつくりたいという思いはあるが、裏方に徹する。表舞台で頑張ろうと思ったときもあったが、合わないと気づき、諦めたそうだ。裏方の方が好きだし楽しいことに気づいた。
「自分が適した場所ですることが力が出るし、存在価値も感じられる。」
そして自分なりのやり方を見つけることも大事にしている。彼はモデルとなる人をつくっているわけではないが、参考としていろんな人のをパクりまくって自分なりに整理して体系化している。「自分なり」をつくるために参考にするのだ。
一番手は論理で二番手は直感
彼は体系化が得意で、受験期はすべての教科を数学のように合理的に勉強して受験に勝利したつわものだ。例えば理科のとき、問題を見たら解決法のパターンがいくつか浮かぶように公式や基本的な解法をインプットする。英語だと、重要例文を覚えておいて、英作文に適用する。それで対応できない問題が出てきたら諦めるという潔さ。
ところが大学に入ると合理性の壁にぶつかった。「人間は合理性ではうまくいかない壁にぶつかり、論理に頼ることはやめた。今は直感を信じるようになった。」
今は事業の体系化や文章を作ったりするときは論理モードという風に使う場面を決めている。また大きな決断をするときはまず論理で考えて、考え切ってわからないようになったとき、直感に頼る。ささいなことなら一瞬で直感で決断する。
手放すこと
彼の話の中では「~をやめた」「~はあきらめた」という表現が何回も出てきた。諦めと割り切りを感じた。その理由を聞いてみると、彼のすっきりと楽に生きる哲学のようなものが見えてきた。
彼は最高潮のモチベーションで毎日たくさん本を読んだり新しいことに挑戦したりしているのだが、モチベーションを高めようとはしていないらしい。「モチベーションをうむよりは、ストレスを取り除くことを意識している。そうすると楽で楽しい。スペースを空けるとモチベーションは生まれる。
幸せを増やすには自分の苦しみを取り除くことと相手に貢献することの二通りがあることを知ってからこのことを意識している。」
最低限自分ができることだけやろう。やりたいことをやろうとハードルを低くして生活していたら、結果的にモチベーションが生まれ、最高のパフォーマンスになるという。
なんという逆説。
聞いて思ったこと
人生の境地に達しているなと、拝みたくなった。自分のキャパや時間が限られていることを意識して、それでも自分にできることを考え、行動している彼は、がんばらないようにして結果的にがんばれてしまう不思議な、器用な生き方の人だと思った。最低限が最高。
そして、自分なりのやり方や考えを求めていこうと勇気をもらった。今の私は百戦錬磨のモデルが身近にいる状況だからその人をまねて近づくことに意識が向きがちだった。彼のようにあくまで自分の型をつくることを目指すこと。そして「あれをしなきゃ」を手放してスペースをつくること。
「最近どんなことしてるの?なんでしてるの?」という話を軽くインタビューする時間のつもりが、人生訓にあふれた時間になった。協力してくれた彼には本当に感謝だ。
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