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『関係からはじまる』読書メモ|対話や関係性ってどうして大事なの?社会構成主義が誘う、優しい新しい世界とは。

ぷはー読破した。「関係からはじまる」を読んだ。

思ったより難しくて消化不良のところが多いけど、よくわからなかったところは腑に落ちるまで熟成しつつ、読み終えて残ったところを言葉にしてみる。
「よくわからん」と思ったところは「今の自分の知識と経験ではよくわからんかったことだ」とそのまんま受け入れることにする。

この本は社会構成主義の第一人者、K. ガーゲンの最新の著書。社会構成主義の人間観や世界観をざっくり一言でいうと、「人は関係性の中で生きる。現実は関係性の中で作られる」ということである。

ガーゲンによると、すべての行為が関係ありきである。そしてその行為には、「考えること」や「感じること」、「読むこと」も含む。つまり、多くの人が個人の頭や心の中で起こることだと思っていたことさえも、関係性の中の行為だとする。

「私たちが思考と呼ぶものは、他者との会話の私的な翻訳である。」

そもそも聞いたことがないものは考えることができないし、物理的に自分ひとりしかいない空間で考えていたとしても、他者との関係性や、言葉に関する慣習の中に埋め込まれているということだ。

例えば今私は、家でひとりで、「晩ごはんは何にしようかな」と考えるとする。考える時点で、「日本語を使う集団」「晩ごはんを食べる習慣をもつ集団」「(幸いなことに)たくさんの選択肢の中から食べ物を選べる状況にある集団」というありとあらゆる集団に属していることを現す。
過去に誰かと、晩ごはんをどうするかを話したり、レシピを調べたり、スーパーに行ったり、食べに行ったり、そういう経験とコミュニケーションが無数に蓄積されている。目の前に誰かがいようかいまいが、それを繰り返しているのである。

難しいけど、たしかに、と思った。

このように、初めに関係性がある。関係性の中で現実は作られる。その考えをセラピー、学問、教育、組織、道徳などに応用して組み立て直し、もっと良くする考えと方法を提案しているのがこの本である。

個人中心から、関係中心へ。
内容は難しいけど、その思想が素晴らしく、またそれによって生み出せる世界の素晴らしさが一番よく表れているなと感じたのは、以下の部分だった。

「私たちは、自己に価値を置くのではなく関係を重んじる、新しい啓蒙主義へと向かっている。この啓蒙主義は、決して西洋文化だけのものではない。世界全体で意識の変革に着手することを望み、期待すべき理由があるのだ。『万人の万人に対する闘争』というホッブズのディストピアを、『万人が万人とともにある』という見方に変えてみよう。幸福な関係を関心の中心に位置づけることができれば、私たちは生き生きとした明るい未来へと近づけるだろう。」(p.485)

個人主義の弊害の一つが自己中心だが、自己が中心にあり他者がその周りを回っていると考えるのは、地球が宇宙の中心にあると考えるのと同じくらい間違ったことだと書かれていた。たしかにそうだなと思った。でも、なかなか気づかない。
自分の発言によって相手はどう感じるか、相手から見て、全体から見て、自分の振る舞いはどのように映っているのか。この視点をなくしてはいけないなと思った。社会人になるまでに、無意識にこの視点で考えられるようになりたい。

私たちは、誰かと共に生きている。共に生きるとは、会話することだ。

「私たちは、みな一緒に死ぬか、それともともに生きることを学ぶか、そのどちらかしかない。この事実を直視すべきだ。ともに生きることを選ぶなら、私たちは会話しなければならない。」(エレノア・ルーズベルト)

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