詩『りんご』


リンゴのような赤い頬
「女みたいだ」
いつもからかわれてる
言い返したくても
僕の頬はどんどん赤く染まっていくだけだから
なにも言わない

顔の火照りが冷めるまで
みんなの興味が冷めるまで
大人しく耐えて待つんだ

なんで赤くなっちゃうんだろう
別に恥ずかしいわけじゃないのに
照れてるわけでもないのに

からかわれるのがイヤだから
僕は人を避け始めた
一人を好むようになった
一人はとても気楽だった
誰にも何も言われないから

ある日僕はスーパーへ行った
入口にはたくさんのリンゴが置いてあった
お客さんたちは次々とリンゴをカゴの中へ入れていった
真っ赤でツヤツヤなリンゴを我先に、と

僕は少し離れたところから
空っぽのカゴを持って
その様子を眺めていた
眺めていたんだ
最後のリンゴが誰かの手に取られるまで、
ずっと

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