だから映える!デザインの法則で解き明かす"BL漫画の表紙"
腐女子や腐男子の間に根付いている文化、「表紙買い」。表紙は本にとって顔となる重要なもの。BL作品の表紙はレーベルごとにテンプレートの表紙デザインが多かったの頃もありますが、現在では作品ごとにお洒落なものが増えました。
装丁デザイナーって知ってる?
表紙のデザインは、装丁デザイナーによって作られています。オシャレなデザインには、なんとなく見ているだけでは気付かないような細かいこだわりが隠れているのでは? そこで簡単にデザインの法則とBL作品の表紙に当てはめ、「こうなんじゃないか?」と思った点を具体的に解説してみます!
画面に統一感を出す見えない線「グリッドシステム」
グリッドシステムとは、レイアウトを行う際に画面上に架空の縦横線をガイドラインとして引き、そのブロックごとに文字や図版を配置し、無駄なくスッキリした画面を作る手法。
……と言われてもイマイチピンときません。ちるちるが毎年実施している「BLアワード2019」で「次に来るBL部門」1位に輝いた人気作、お吉川京子先生&阿賀直己先生による『鬼と天国(上)』を例にしてみましょう!(BLアワード2020の発表は、今年4月を予定しています。)
大きく配置された文字と、スーツ姿の黒が白い背景とコントラストになって目を惹きます。そして、表紙のグリッドシステムを可視化したものが以下! 美しいデザインとされる「三分割法」が使われています。
画面を三分割したうちの縦方向にキャラクターが、横方向に文字が整列されていることが、よりわかりやすく見えてきました。
正反対だけどお互いを最も引き立たせる「補色」
補色とは、色相環(上の図)で正反対に位置する関係の色の組合せを言います。補色を並べるとお互いの色を最も引き立てると言われていて、目立たせたい箇所や差し色で使われることが多いテクニックです。
文字のネオンカラーに目がいく表紙の、ためこう先生『僕のセックススター』。ピンク色のロゴの上に手書き風の緑の文字を重ねることで、よりインパクトのある仕上がりとなっています。キャラの瞳にも小さくピンクや緑などのネオンカラーを散らしていて、イラストが文字に負けないデザインとなっています。
オレンジみの赤と青みがかった緑が補色関係になっているのが、井戸ぎほう先生『やさしくおしえて』。油絵のようなイラストの力強さを残したまま、文字のレイアウトでデザインとしてもまとまりのある画面作りですね。余白の使い方も美しいです。
奥行きを感じる画面に「ぼかし」
人はものを見るとき、手前のものと奥のもの両方にピントを合わせることが出来ません。それを活かし、ポイントとなるもの以外をぼかすことで画面に奥行きが生まれ、立体的な絵に見せることが出来ます。
「フ」や「カ」の文字を大きくレイアウトし、さらに強いぼかしをかけることで手前にあるように見えます。奥にあるように見えるキャラクターの顔にピントが合っているというのが一目で分かりますね。じゃのめ先生『黄昏アウトフォーカス』。物語を読むと、この表紙の意味がよりわかる表紙だと気付きます。秀逸なデザイン!
つづいて、いさか十五郎先生『みんなの知らないドSな先輩』。黒い円形の枠にぼかしがかかっています。のぞき穴のようなものからいけない現場を目撃してしまった瞬間を切り取ったデザインです。奥行きや、見ている側と見られているキャラクターとの距離感を演出。こちらも、物語のテーマにかけたデザインと言えます。
★番外編★並べてニヤける!上下巻デザイン
デザインの法則とは少し違いますが、上下巻で1つの絵が完成するデザインってテンション上がりませんか!? 一冊だった時では気付かなかったことにハッとしたり、受けと攻めが並んだ~~! となると、とっても嬉しいですよね!
朝田ねむい先生『マイリトルインフェルノ』は、お互いの背景の色がお互いの陰の色に使われていたり、細かいところまでトコトン対称に作られています!補色の色使いで目にガツンとくる画面ですよね。文字を大きくあしらった海外風のデザインがカッコイイ!
レイアウトはシンプルですが、ビビッドカラーで目に焼き付くのが、はらだ先生『カラーレシピ』。並べると、読者を見ていたと思っていた視線が、受けと攻めが見つめ合っているように見えるから不思議です。瞳の色や主線などにお互いの背景色を取り入れることで、2冊並べたときもまとまりのある印象に。
グリッドの際にも紹介した『鬼と天国』。スーツと白衣などで白と黒の対比がなされています。見つめ合っているような、背中合わせでお互いのことを考えているような、色々な見方ができますね! 二冊並べると、大きな文字のタイトルが完成するのも良い!
デザイン法則から見るBL本の表紙。 感覚でしていると思われがちなデザインですが、意外とルールや形式のようなものが存在します。
細かいところに気をつかいながら、関係性や物語まで反映させてお洒落な表紙をデザインする装丁デザイナーさんは、本当にすごい…。見慣れた表紙でも見方を変えることでもっと楽しく味わえますね。
ーー
サンディアスでは、豊富なBL業界の知見を元に腐女子向けサービス・コンテンツのアドバイスを行っています。
また、取材やインタビューも積極的に取り組む予定ですので、お気軽にTwitterのDMなどからご連絡ください。
Follow me! オタク女子マーケティング研究所
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?