浅い夜に沈み朝を待つ

食べ放題でセルフサービスの串揚げ屋に連れていってもらう。

団体席に案内され、終了時間が書かれた伝票を残し、あとは客の自由に任せられる。
何も置かれていないテーブルに揚げ粉とネタとタレとドリンクを持ち寄る。鶏ムネ肉に牛肉にハンバーグ風の肉の塊を無愛想に串に刺したものが中心に据えられ、さつまいもにじゃがいも、ブロッコリーに椎茸などのバラエティに振った食材も串に刺されていて、ちょっと不格好でクスッとくる。

水分の奪われた食材に粉とタレをまぶし、テーブル中央の油湯に入れてあげる。カラカラと音を上げて衣を纏って狐色に変わる。

焼き加減もそこまで気にせず、その場にいた串奉行に委ねた。揚がった串を皿に届き、猫舌ながらに熱い部分を避けて一思いに口に放り込む。サクサクと音を立てながら奥に沈んでいく。

好き嫌いではないけれど、食べたいものに偏りがあって、彩りにもサイドメニューの盛り付ける量にも明らかな違いが出ている。ポテトサラダは最強だ。

食べられるキャパシティーが限られているのを見越して、朝ごはんを抜いてきたのに、大差がなかった。開始から30分でくっきりと引かれたラインが見えてきた。飛び越えられないし一歩足を出すこともできない、絶対線があった。

余所見をする間も無かったし、一緒にやってきた人との会話で食欲から離れる。雑談に勢いがあって、続けるのも難しくなく進んでいた。雑談力を読んだ甲斐があった。

ドリンクに100%のアップルジュースを4杯は飲んだ。どうしても食事をするには飲み物がないと食べられない性であるため、こればっかりは癖であり、直りそうもない。猫舌なのも関係しているのかもしれない。熱いものは冷えたジュースで流し込む。

揚げ物もそこそこに、デザートコーナーにいくも、いまいち刺さるものがなかった。またもアップルジュースを注いで浸るように飲む。食べ終わった串をまとめた筒は溢れて段になって剣山のようだ。

もう入らないよと項垂れる各々、食べ放題終了時間を5分残して会計に進む。

散り散りになって一休みが欲しくなる。トイレ手前のベンチで呼吸を整える。自動販売機でお茶を数本買い、その場で体内に調和させる。

食事量の限界を見据えながらも無謀な食事に同行するのも根気のいる作業だと察しながら、雑談をするか食事をするかを見極めるべきだった。

胃のもたれが数時間後に本領を発揮する前に、早めの解散で自宅を目指した。ぐったりして深くて長い昼寝をして、起きると0時。また眠るには夜が浅い。

冷蔵庫の扉を開け、ヨーグルトにジャムを加えて平らげ、夜に沈んで朝に二度目の眠りについた。

自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。