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立ち止まる小説

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#毎日note

1年越しの渋谷で再会しよう。

東横線と埼京線から向かってきて、とりあえず集まりたくて、駅は渋谷駅に決めた。13:00に集ま…

ひの
3年前
7

七歩先の情景と日常を

中心街から二歩三歩、いや七歩ほど外れた街に妙な落ち着きを感じて、喫茶店で注文した淹れたて…

ひの
3年前
29

うらがえらないてんき

最寄駅の改札を掻い潜ると、KIOSKが大都会方面に背を向けて、俗世からはみ出したどこかを向い…

ひの
3年前
8

またの機会に

「今回はご縁がなかったので、またの機会に」 遠回しに、必要とされない度量だと秤に乗せられ…

ひの
3年前
7

しがみつく

反対側のホームに並ぶスーツ姿の群れを見て、下り電車がやってくるホームにいる私が、開くドア…

ひの
3年前
15

平生とミルクフランス 2

ディスプレイにはパンと、その類だと言われても許せる食品が並ぶ。 塩パン、つぶあんぱん、こ…

ひの
3年前
8

平生とミルクフランス 1

太陽が高くに位置している時間に、執拗に照らしてくる窓ガラスと視点をずらすように、昼下がりの焦燥に駆られて自転車で駆けた。 勾配に負けそうな成長途上の馬力を時代の風のアシストが支えながら両輪がギュンギュンと回る。両足が踏み締めていたはずのコンクリートの触り心地を、サドルとハンドルを媒介物として繊細に感じながら、下り坂でペダルから足を外して向かい風と対になる。 駅の改札とロータリーには向かうべき対象を胸に秘めて歩く人々。日曜日であっても関係なく、女子高生は制服を着て改札前のベン

不可逆式歩道橋

二車線の広々として車通りが多い車道を跨るように、長くてゴツゴツした歩道橋がかかっている。…

ひの
3年前
10

夕立に誘われて風になった

窓に狭まれた奥の世界の変化に気付いて20分は、雨音しか聞こえてこなかった。水滴が地を打つ弾…

ひの
3年前
18

ゴミ出しの日

9時前には収集車がやってくるから、起きたら何をするよりも、玄関にまとめたゴミ袋の封をして…

ひの
3年前
6

走らされてる、自分に

何も起こりえない1日に無理をして、イベントごとを起こそうと悪あがき、限られた時間と労力で…

ひの
3年前
8

途中下車

13時に最寄駅の改札を通る。13時7分に到着した電車は、長い座席の真ん中を空けていて、間を埋…

ひの
4年前
9

焦りを抱えた夜を抜け

何もせずに日が暮れた一日を取り返さなきゃと焦って夜の散歩に出掛ける。 落ち着きとなんとな…

ひの
4年前
9

十進数と赤シート

試験当日の朝、最後の詰め込みと称して赤シートで隠しながら単語帳を繰り広げる。 電車の時間間隔と時刻表は生活の一部につけ込むことで暗記に成功していた。 想定通りのダイヤ運行の電車が到着するのを待ちながら、黄色い一線を越えることなく、目下のアンダーラインの文字を反芻する。 朝7時台恒例現象の死んだ顔をした烏合の衆に吸い込まれていく。向かう先も降車駅も異なるのに、全てが同じ絵に見える。 誰かから似通った仮面を手渡されているのだろう、人というよりは暗号がずらっと並んだ、景色の一