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立ち止まる小説

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記事一覧

おとも無しに

悪びれた態度で視界を遮っていたはずの前髪も、縮毛と唱えた瞬間に一歩も踏み出さなくなった。…

ひの
2年前
10

1年越しの渋谷で再会しよう。

東横線と埼京線から向かってきて、とりあえず集まりたくて、駅は渋谷駅に決めた。13:00に集ま…

ひの
3年前
7

七歩先の情景と日常を

中心街から二歩三歩、いや七歩ほど外れた街に妙な落ち着きを感じて、喫茶店で注文した淹れたて…

ひの
3年前
27

うらがえらないてんき

最寄駅の改札を掻い潜ると、KIOSKが大都会方面に背を向けて、俗世からはみ出したどこかを向い…

ひの
3年前
8

またの機会に

「今回はご縁がなかったので、またの機会に」 遠回しに、必要とされない度量だと秤に乗せられ…

ひの
3年前
7

しがみつく

反対側のホームに並ぶスーツ姿の群れを見て、下り電車がやってくるホームにいる私が、開くドア…

ひの
3年前
15

平生とミルクフランス 2

ディスプレイにはパンと、その類だと言われても許せる食品が並ぶ。 塩パン、つぶあんぱん、こしあんはなく、クリームパン、マフィン、ラムレーズンミルクフランス、フランスパン、食パン1斤、チョコチップパン、ミルクフランス。 ディスプレイが堂々と佇む入り口から、木製のイスとテーブルが端っこでこちらの様子を見ている。店自体はそこまで広くない。横に引き伸ばしたかのように奥行きがあった。 こだわりのコーヒーと一緒にランチタイムの案内が貼られていた店前の看板を思い出し、店内での食事が可能

平生とミルクフランス 1

太陽が高くに位置している時間に、執拗に照らしてくる窓ガラスと視点をずらすように、昼下がり…

ひの
3年前
7

不可逆式歩道橋

二車線の広々として車通りが多い車道を跨るように、長くてゴツゴツした歩道橋がかかっている。…

ひの
3年前
10

夕立に誘われて風になった

窓に狭まれた奥の世界の変化に気付いて20分は、雨音しか聞こえてこなかった。水滴が地を打つ弾…

ひの
3年前
19

ゴミ出しの日

9時前には収集車がやってくるから、起きたら何をするよりも、玄関にまとめたゴミ袋の封をして…

ひの
3年前
6

走らされてる、自分に

何も起こりえない1日に無理をして、イベントごとを起こそうと悪あがき、限られた時間と労力で…

ひの
3年前
8

途中下車

13時に最寄駅の改札を通る。13時7分に到着した電車は、長い座席の真ん中を空けていて、間を埋…

ひの
3年前
9

焦りを抱えた夜を抜け

何もせずに日が暮れた一日を取り返さなきゃと焦って夜の散歩に出掛ける。 落ち着きとなんとなくの安心を探したくて外に出てきたのに、曲を選ぶ指はロックバンドを中心にアーティスト欄をスワイプしている。 おすすめされて聴くようになった9mm Parabellum Bullet を聴きながら夜の道をただ歩く。 METALLICAのパーカーで暖を取りながら、曲のリズムに合わせて足を前に運んでいく。 ふと横に視線をやると、もう一人の自分がコンビニのあんまんをもぐもぐ食べている。 あれだけ食