こどもの胃腸炎:水分補給が一番大事

腸炎にはおおまかにわけてウィルス性と細菌性があり、こどもの腸炎のほとんどはウィルス性です。胃腸炎のときはあまり抗菌薬(よく抗生物質ともいいますがほとんど同じものなので分けて考えなくて大丈夫)を使わず、基本は脱水への対応が治療のメインになります。


原因にはどんなものがある?

こどもの胃腸炎を引き起こすウィルスとしてはロタウィルス、ノロウィルス、アデノウィルスなどが有名です。ロタウィルスが最も多いといわれていますが、ワクチンがあり、その導入によって徐々に数が減っていると言われています。

細菌としては最も多いのがカンピロバクターという菌で、ほかにサルモネラ菌や下痢性大腸菌(有名どころではO-157とか)、エルシニア、赤痢菌などがあります。

一般にウィルスは症状のあるひとの吐物や便からまき散らされたものが手につき、気づかないうちに口へ入ってしまうことで侵入してしまうといわれています。細菌は加熱が不十分な魚や肉、卵などから侵入することが多いといわれています。



どんなときは受診した方がよいのか?

重症な脱水所見があるときは必ず受診してください。(脱水については過去記事を参照してください→こどもの脱水:どんなときヤバイの?|maisamejima|note


ただし糖尿病や代謝性疾患などの基礎疾患がある人や生後2か月未満での胃腸炎、また生後3か月未満の乳児で38度以上の発熱があるときも必ず受診しましょう。

胃腸炎と似た症状の病気でこどもに特徴的なものに腸重積(ちょうじゅうせき)という病気があります。生後半年ごろから2歳までのこどもは特に、血が混じったうんちがでるとき(ブルーベリージャム様などといわれることもあります)や頻回の嘔吐のあるときなどは医療機関へ受診を相談してください。


治療について

初めにも記載した通り、基本は脱水予防、脱水になってしまったらその対応が治療になりますが、下痢が多いときは整腸剤も効果があるとされています。病院で処方されている整腸剤で多いものにはビオフェルミンやミヤBMなどがありますが、市販の整腸剤でもそこまで効果はかわりません。

抗菌薬は使う前に便の検査などをおこなわないと原因がわからなくなってしまうこともあります。抗菌薬は医師の指示なく飲まないようにしてください。


以降は医療関係者向けの記載になります。



小児の細菌性腸炎について

鑑別について


小児の腸炎に関して細菌性かウィルス性かの鑑別に腹部エコーが一助となる。細菌性では回腸末端から上行結腸などに浮腫性の壁肥厚やリンパ節腫脹などの病変がみられることがあり、ウィルス性では小腸および台帳に腸液の貯留を認める。

問診時は発症時期、食歴(個人的には直近1週間で生魚、生肉、生野菜、生卵、焼き肉、焼き鳥は食べましたか?と聞くようにしています)、渡航歴、家族や学校・園における腸炎患者の有無、発熱の有無、血便の有無などを聴取する。

診察時は脱水所見の有無を念頭に身体所見をとるとともに、虫垂炎、腸重積、アレルギー性紫斑病を特に鑑別するとよい。またEHEC感染症を疑う場合、HUSの症状出現がないかもチェックする。

治療について


軽症の細菌性腸炎を疑う場合は対処療法でよいが、高熱、強い腹痛、血便などの重篤な症状、乳児(特に3か月未満)、慢性消化器疾患、免疫抑制状態にあるものではempiric therapyとして治療を行う。止痢薬は使用しない

(処方例)※抗菌薬使用時は便培養を!

FOM 40~120㎎/㎏/日 分3 内服

ミヤBM 0.1g/㎏/日 分3 内服

(整腸剤は抗菌薬耐性のものであればどれでもOK)


腸管出血性大腸菌(EHEC)感染を疑うとき

下痢発症3~14日後にHUSを合併することがある。抗菌薬投与による発症リスクについては結論は出ていないが、米国では抗菌薬投与でHUS発症率が高かったとされるコホート研究がある。日本では発症想起(3日以内)に投与した群でHUS発症率が低いと報告がある。

参考文献

JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015-腸管感染症ー

小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017


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