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素敵なあの人から「みる・きく」を学ぶ/NPO法人 タッチケア支援センター理事長 中川れい子さん

※本投稿はオンラインサロン<ChildcareHOUSE>内の掲載記事を、一般公開用に縮小したダイジェスト版です。

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【プロフィール】 中川れい子(なかがわれいこ)
<身(実)>の医療研究会理事
NPO法人はち理事
こころとからだのセラピールーム amana space 代表

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兵庫県生まれ。関西学院大学文学部を卒業後、塾・予備校講師を勤めていたが、1995年の阪神淡路大震災で被災し、直後から現地ボランティアとして活動する。その被災体験から、心身の疲弊を癒すためには、からだを通じての心のケアであることを痛感し、1998年よりボディワーク、ボディサイコセラピー、カウンセリング、ヒーリング等を学び始める。

1999年にエサレン®ボディワークと出会い、自宅サロンで開業、個人セッションをひたすらに積み重ねる中、触れることの様々な作用を実感。その普及・教育・ボランティア団体として、「やさしくふれると世界はかわる」をテーマに2011年NPO法人タッチケア支援センターを設立。ソマティクス(身体感覚の気づきにかかわるワーク)を重視した、安全で心地よく、対人援助に役立つ「こころにやさしいタッチケア講座」を開講。

高齢者施設・がん患者会・緩和ケア病棟・産科等での施術会や、発達障害・精神障害の方の地域活動支援センター、うつの方の就労支援センター、疼痛患者の会や、依存症の会など、様々なフィールドで、セルフケアやタッチケアの指導にあたる。

今春に出版された、タッチケア研究の第一人者である桜美林大学の山口創先生との共著「オトナ女子のおうちセルフケア」(秀和システム)は、コロナ禍のケアとして注目される。また、ウェブマガジン「コ2【kotsu】」で『セルフタッチング入門―コロナ時代のタッチケア―』を連載中。

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今回、お話を伺った中川さんは、兵庫県出身で、1995年阪神淡路大震災で被災されました。ご自宅は全壊された状況にも関わらず、避難所、仮設住宅で現地ボランティアスタッフとして活動される中、疲弊していく心と体を元気にするために何をすべきかと考えた時に、「人に触れること」への必要性を感じ、そこから使命を得たように精力的に「タッチケア」を学び、施術、指導、普及、コーディネーターとして、幅広い活動を経て、今では日本のタッチケア業界をけん引されるようになりました。

穏やかで優しい聖母のような眼差しでお話される一方で数々のボランティア経験で培った行動力と、信念を貫く強さを併せ持ったお人柄から述べられる言葉に勇気づけられました。タッチケアは、人に触れることだけではなく、自分自身を癒し強くし、人生にも影響するものだということを改めて感じています。

インタビュアー :チャイルドケア共育協会本部講師 松本美佳

震災体験で気づいた「触れるケアで癒すこと」

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――― 中川さんがタッチケアにご興味を持った経緯は?

中川さん(以下敬称略):私がタッチケア「触れるケア」を学び実践しようと志したのは1995年の阪神淡路大震災がきっかけです。自宅のある西宮で被災しました。自宅は全壊でしたが、奇跡的に私も家族も怪我もなく無事でしたが、周りは大変な状況でした。

当時、予備校の講師をしていましたが、学生時代の関係でつながりができた避難所や仮設住宅地でボランティア活動をすることにしました。その活動も2年を過ぎた頃、私だけではなく、誰もが心も体も疲れ果てていました。仮設住宅に入居されているのは主に高齢者の方が多かったのですが、被災者も支援者も身心ともに疲れてイライラが広がっていきました。

そのときの癒しになるものといえば、食事と会話くらいで、手っ取り早くお酒を飲むことが多く、そうするとアルコール依存症になる方が増えるんですね。お酒が入ると最初は陽気でもまたイライラして喧嘩にまでなってしまうことも多く、環境的に良いものではありませんでした。私自身も追い詰められてしまい、少し現場を離れたときに、もっと心身が楽になるような癒しはないのだろうかと考えていたんです。そうしたときに、突然心の中で「人に触れること」「体を通じて癒すこと」という思いが浮かんだんですね。「あぁこれだ!」と思いました。

そこで、習い事や資格スクールの情報雑誌「ケイコとマナブ」を買ってきて、自分にあった学校を探しました。そうしたら、たまたま広告を載せられていたという師に出会い、すぐにボディワーク、心理学、カウンセリングなどを学びました。さらに引き寄せられるようにエサレン®ボディワークに出会い、認定資格もとりました。

――― ひらめきを行動に起こしたことで、次々に導かれるように良き師に出会い、運命的な学びが用意されていたのですね。 

中川:そうですね。そして様々な方とのご縁ができたことで、意欲的に取り組むこともできました。10年近く施術を重ねていく中、やさしく触れることが人々の心と身体、時には人生や生き方にまで深い影響を与えていくことを、幾度も目の当たりにしていました。

そんなときに大学の研究者の先生方とも出会い、施術を受けた方の生理反応の変化や、主観的心理テスト等、いくつかの実験を行うことができ、その結果、思いやりや慈しみ、気づきをともなう、こころとからだに優しい“触れるケア(タッチケア)”は、皮膚からの刺激が末梢神経から中枢神経、そして脳内に働きかけて深いリラクセーションを届け、自律神経系や内分泌系、免疫系に有効に作用すること、そして、不安や怖れ、孤独感・ストレス・脳疲労・そして痛みを軽減することや、触れられることで身体感覚の気づきに作用し、自己尊重感・肯定感が深めること、さらに、他者への思いやりの心や信頼関係を育む等、これまで、体験的に施術を通じて感じてきたことに確信をもち、これを安全にお伝えしていきたいと思うようになりました。

こうしたご縁から、ボランティアとして声をかけていただくようになり、高齢者施設・がん患者会・緩和ケア病棟・産科等などの様々なフィールドでタッチケアを行うようになりました。

東日本大震災でのボランティア経験と運命

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―――― ボランティア活動も熱心にされていますね。東日本大震災でのボランティア経験も今の活動に大きく影響しているそうですね。

中川:そうですね。私にとって、阪神淡路大震災と東日本大震災の二つの震災は、運命的なものを感じます。阪神淡路大震災をきっかけにタッチケアをスタートさせ、活動を始めて10年過ぎた頃、タッチケアの教育と普及をさらに強化していくために、NPO法人設立の準備を始めたんです。それが2010年の秋ごろでした。2011年2月に準備が整い、兵庫県に特定非営利活動法人の設立を申請し、5月に認可が下りることになっていたのですが、その間の3月11日に東日本大震災が起きたのです。

もうびっくりしました。私は震災経験者ですから、いてもたってもいられませんでした。でも、すぐに関西から現地にボランティア行くことはなかなか難しいので、情報を集め、できることを探しました。そんな3月半ばすぎのある日、テレビを見ていると臨床心理士の先生が「親は子どもを抱きしめてあげるだけでいい、それでPTSD(心的外傷後ストレス障害)が軽減される」とおっしゃっていたんですね。その通りだと思いました。

あたたかく、やわらかに包み込むように ゆっくりと呼吸と共に。

――― 中川さんのお考えになる「タッチケア」は、やさしく包むように手をあてる。ゆっくりと撫でることとされていますね。チャイルドケアでは「保護する」「愛でる」「緩む」という3つの方法で提案していますが、根本にあるタッチケアへの思いにとても共感しました。様々な方法がありますが、とてもシンプルで、心が温かくなる「タッチ」であることがわかります。

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中川:さまざまな手技手法もありますが、私が代表を務めるタッチケア支援センターでは、いろいろ学んできたことを取り入れ、オリジナルメソッドで「タッチケア」を提案しています。施術は、「安心・安全」「身体感覚の気づき」「つながり」「リラクセーション」の4つの視点を大切にしています。

「タッチケア」は、老若男女、生老病死、人生の様々な場面関係性、状態・状況に応じて適切に調整し、安全性を十分考慮して行うことが大切です。親子や夫婦の家族間ケア、あるいは、医療・福祉・教育などの対人援助の現場で、こころとからだに優しく、人間愛と気づきに基づいたタッチケアを求める声は高くなっています。シンプルで誰もができるタッチケアを軸に、より専門的な知識と技術を併せながら、タッチケアのクオリティを高めていくことで可能性はより広がるように思います。

タッチケアは、断絶されたものをつなぐ役割がある

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――― 現代社会の問題で、どのようなところにタッチの必要性を感じますか?

中川:私はこれまで高齢者施設や、がん患者会・緩和ケア病棟、産科でのケアのほか、発達障害・精神障害の方の支援、うつの方の就労支援、疼痛患者の方や依存症の方々へタッチケアを提案してきました。高齢者の介護、看護、災害支援、教育など様々なフィールドでますます必要になり、求められてくると思います。

ひとつ懸念していることがあります。不妊治療の技術が向上し、結婚して数年子どもができない場合には不妊治療を受けることが徐々に一般化しつつあります。しかし、一方では、パートナー間でのスキンシップが少なくなってはいないだろうか?ということです。

オンラインでつながることが増えてきているので、人に触れるということ自体が苦手な人も増えつつあります。不妊治療や体外受精そのものが問題ではなく、それで命を授かる方も大勢おられるのは科学のおかげだと思いますが、極端な話、たとえ互いに触れあうというプロセスがなくとも、不妊治療や体外受精によって赤ちゃんが誕生するわけですから、それならば、教育の中に「触れあい」や「スキンシップの大切さ」をしっかり伝えていくべきことは、社会の責任ではないかと思うのです。タッチは、体験教育なので、体験が減れば自然と遠ざかっていってしまいますから。

――― コロナ禍で人との関係性や、触れあうことの状況が変化してきていますね。ただ触覚的に触れることだけではなく、もっと人として生きていくために大きな役割が「タッチケア」にはあると思っていますが、どのようにお考えですか?

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コロナは心配ですが、触れると感染するというのは誤解で、手洗いをしっかりしていれば接触感染することはありません。飛沫感染や空気感染はもちろん注意すべきですが、それは触れるかどうかにかかわらず、すべてにおいて気を付けることですから。コロナの感染が気になるから「触れてはいけない」と考えるのは大きな誤解で、むしろ、こういう不安な時だからこそ、スキンシップと触れ合いを大切にして心身を癒してほしいと思います。

今の時代は、様々なものが断絶されていると感じます。その断絶したのをつなぐことがタッチケアの役割のように感じます。心と体をつなぐ、心をつなぐ、人とつなぐ、社会をつなぐ、命をつなぐ、文化をつなぐ、歴史をつなぐなどもすべてですね。

タッチケアを普及させて、健康と幸福を互いに支え合い、生命尊重と相互理解、そして平和を礎とする社会を育んでいくというのが、タッチケア支援センター設立当初からの思いです。

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――― タッチケアは、いのちのケアであり、生きる力を高めていくものですね。中川さんのお話を聞いてその思いを強くしました。コロナ禍の影響で人に触れることが難しいと思われていますが、安心安全を十分に考慮すれば、むしろ積極的に行っていくことで、不自由な生活で強いられたストレスを緩和し、この状況化を乗り切っていくことができますね。今日は貴重なお話をありがとうございました。

▼チャイルドケア共育協会運営のオンラインサロンです

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▼この1冊で今日からおうちでチャイルドケアをはじめられます☆

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