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18きっぷの旅

今度の12日、友達がいるから家にいないで。
そんな娘の言葉。

青春18きっぷが余っているから使わない?
そんな妻の声。

そんな機会をもらい、年甲斐もなく18きっぷの旅をすることになった。

妻に、始発に間に合うように送迎してもらう。
早朝に助手席での会話。普段伝えてなかった会話などができた。
そんなことにも感謝しながら、始発のボックス席に一人、贅沢にシートを使う。

まずは山あいの農村風景を眺めながらスタート。
この地区は、日の出が昼近くになるんじゃないかというぐらいの傾斜の厳しい所だ。
名前だけは知っている降りたことのない無人駅が続く。

高校生が眠そうに乗り込み、イヤホンでスマホを見ている。
友達が次の駅で乗ってきても軽く挨拶をしながら、お互いまたスマホを見る。

朝早くということもあって、リュックを背負った50代ぐらいの登山客がちらほら乗っている。
少し女性の方が多い感じか。
登山に夫婦で行くなんていうのもいいなと、次の妻への誕生日プレゼントは登山グッズにしようなんて思ってみる。

おおよそ1時間半後に、乗り換え。
スマホのアプリで事前に調べた乗り換え時間は3分。
リュックを背負い込み、手土産のお酒を揺らしながら階段を駆け上る。

風景が、ひらけてきて、ブドウ畑や、湖が見えてくる。
よく乗り降りされる駅は、ここら辺の拠点なんだと思いながら、ぼーっと乗客の様子を眺める。

乗客の8割が、スマホをみている。
意外とゲーム機を見ている人は少ない。
電車の中吊りには、人材募集や、住宅ローンの広告が少しだけある。
みんな、手元の画面を見ている。ラインだったり、YouTubeだったり、ゲームだったりするのだろうか。

私も、いくつかのグループラインに書き込む。
今回訪ねる友人とのグループライン。家族のグループライン、職場の、実家と妹との、野外フェス実行委員会の、同窓会運営の、高校の柔道部の仲間の、大学の弾き語り仲間の、小学校複式学級の、10年前の出向先の全国の仲間の、海外赴任の時の戦友たちの、同級生の、ゴルフ仲間の、まちづくり企画の仲間の、イングリッシュナイト企画の、面白そうなことがおこりそうだからとりあえずつくってみたの…
多くの、グループラインに生活を楽しくしてもらっている。

ラインでみんなの様子を少し垣間見ながら、つながりを続けられているのがいい。
今回、18きっぷの旅をしてみて、意外と出かけるのって簡単だなと思ったりする。
オフ会を企画しながら、みんなで会うなんていうのもいいなあ。全国に散らばる友人に、その街を案内してもらうっていうのもいいなあ。と思いながら電車に揺られていた。

乗り換えの時に初めて見る無人のコーヒースタンドに新鮮さを覚えながら、先へと進んだ。

思いつきで大学時代過ごした街で、途中下車。
18きっぷのいいのは、途中下車を何度もできるところだ。
次は、一つ一つの気になる駅に降りながらまちあるきを楽しんでもいいななんて思う。

30年経った街は、形はあまり変わらないが、お店がずいぶん変わっている。
学生時代、心を躍らせて服を買ったデパートはパチンコ屋になっていた。バイトしていたバーは、ビルごとテナント募集している。
学生時代、何度も通ったまち中華の看板が営業中になっているのを見て、見過ごすことができなかった。
お腹が空いているわけではないのに、あのころのチャーハンを注文。
30年前に寮の仲間と毎週来てたんですよというと、マスターはあの頃の寮はよかったなあなんて言う。ノスタルジックに不意に涙まで出てきた。
変わらないマスターと奥さんとの記念写真を同級生のグループラインに送ると、
すぐにみんなから激烈いいねがやってくる。
みんな、マスターの顔を2本指で拡大して見たのだろう。
あの頃から親父だったのに、今もそんなにおじいさんじゃない照りのいい親父だった。

その道すがら、運悪く手を滑らせ、手土産の日本酒瓶を割ってしまう。
旅の途中、途中のデパートで県のお酒を買い足すことになった。

待ち合わせの街に少し早く着き、久しぶりの街にいろんな発見をしながら、ふらふらと駅周りを歩いてみる。
そして懐かしい顔が手を振りながら近づいてくる。
そこからは、お互い精一杯話す。カウンター越しに3杯目のハイボールを頼みながらただただ話す。
いやあ。楽しいなあ。腹一杯話せるって楽しいなあ。と何度も言いながら。

そして2次会は、友人の実家へ(笑)
この歳になって、友人の実家にずかずかと上がり込み、日本酒を5本空ける。
東北出身のお母さんの美味しい料理をつまみながら、お母さんと三人兄妹との専門的な話がおもしろい。
他人の家庭、他人の家の建物を見せてもらいながら、自宅のことを思う。
いつもは21時にでも寝てしまう私が、2時半まで時間を忘れて話し込んだ。

快適に10時まで寝た後、今も建築士として働く70歳のお母さんの美味しい和食をたっぷりいただいて、実家をあとにする。

さて帰り道は、どこに寄って行こう?
昔、通勤したところに引き寄せられる。
今回は思い出探しの旅のようだ。

ビジネスバッグを持って歩いた公園。頭の整理をしたベンチ。そんな場所を巡りながら帰りの新幹線駅に向かう。
今っぽいテナントが並ぶ駅地下を歩き回り、感心しながら家への定番土産を買い込む。

帰り道は贅沢に新幹線。自由席だけど。
ハイボール濃いめロング缶を飲みながら、ラインをチェック。
となりの席には、おじさんからみるとコスプレっぽい女性。
ピンクのキャリーバッグに、定番お土産を抱えてスマホを見ている。
揺れも、乗り換えも少なく半分ぐらいの時間で家路につく。
最後の鈍行列車に乗り込みながら、昨晩の楽しい会話に後押しされて、何か世界を変えられる気がしている。

人に逢い、話し、他の場所で刺激をうけながら、自宅や、家族や、今のことを考え直すきっかけになった一人旅。
旅はいいなと、これから訪ねる人リストと年間予算を手帳に書き込んだ。

18きっぷ(帰りは新幹線)の旅は、とても有意義だった。
こんなチャンスをつくってくれて、ありがとう。


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