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死にゆく人間は、リップを買わない。

わたしが勝手に信じている真理。
死にゆく人間は、リップを買わない。


昔からリップをあれこれ試すのが好きで、他の化粧品の中でも群を抜いてリップばかりを買い集めてしまう悪い癖がある。
(結局一軍としてポーチに残るのは数本に限られるのだけれど、なんだかんだで季節が巡りまた一軍に戻ってくる子もいたりする)

思えば休みの日でも、誰にも会う予定がなくても、
ほぼ毎日リップを塗って生きている。

それはふと鏡に映った自分の顔色が悪いと単純にテンションが下がるからとか
たまたま人と顔を合わせたときにわたしのリップなしの顔色が悪すぎて心配されたからという理由もあるけれど

そう、リップを塗るたび
わたしは「今日も生きている」感じがするのだ。

リップを塗る余裕があるかどうかで
自分のHPを測っている、という感覚に近いかもしれない。


いろんな色がほしいので、たまにどうしてもというとき以外はデパコスなど高いものは買わない。

ブランドやプレミア感よりもどうやらわたしがほしいのは、その日の格好にベストな色や質感のリップを選べた、という喜びなんだろうと思う。

「今日の感じにはこのリップが1番合う!」と思えるリップを見つけることは、わたしにとってはパズルのピースが揃うような気持ちよさがある。
(言い訳みたいだけれど、おそらくそれがわたしのリップ買い集め癖の理由ではないかと推測している)

あと、「また塗りたい」と思える塗り心地のよいリップに出会うと、正直かなり気持ちいい。

(普段からメイクする方なら、共感してもらえるもんなのかなぁ)

正直他者から見るとすごく奇妙なこだわりなんだろうと思うけれど、きっとこれがわたしなんだろうな。

だから、もしわたしがリップを塗らなくなったり新しいリップを買おうとしなくなったら、おそらく著しく体力がないか、生きる気力がなくなったということだろう。


一説によると、うつ病などの精神疾患や希死念慮の起こるときには、化粧品に対する消費行動が行われなくなるらしい。

今日も生きている。
その実感をじっくり味わいながら、今日も服装に合わせて選んだリップを唇の上に走らせる。

まだやれるよ。わたし。

正直さっきまでちょっと死にたい気分だったけれど
リップが塗れてるんだから、わたしは大丈夫。

しっくりくるリップを選べた小さな喜びを噛みしめながら、今日も生きる。

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