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狙われたらENDでした!

火曜日、またまた頓知気さきなちゃんのライブに行ってきた。会社終わりに下北沢に向かう。下北沢は帰り道なので行くのには都合がいい。向かっている途中でペンライトを忘れたことに気付いた。この間、ファンの子に100均にあると聞いて買っていたのに、ペンライトを持っていく習慣がないから、忘れてしまった。取りに帰るか迷ったが、帰る時間もなさそうだったのでそのままライブハウスに向かった。

今日の整理番号は2番であった。こんなにいい数字でチケットを取れたのは初めてだった。ライブハウスに着き、会場時間が近づくとお客さんは地下に続く階段に並ばされる。僕はなぜか先頭に立っていた。1番の整理番号の人がまだ来ていなかったからだ。僕はこのままでは1番になってしまうと内心ちょっと焦った。しかし、1番の人が開場時間に来ることはなく、僕はそのまま先頭で入場した。

最初に入れたので、僕は最前列の真ん中の席に座ることが出来た。こんないい席でライブを観れるのかと胸が高鳴ったが、ペンライトを忘れたこと思い出し、申し訳ない気持ちになる。

始まるまでに30分以上時間があったので、いつものように本を取り出して読んでいたけど、会場に流れているさきなちゃんの曲とライブの期待に気持ちが持っていかれて、全然集中出来なかった。文字だけを読んでいて、内容が頭に入ってこない。僕は仕方なく、本を閉じて会場のBGMに耳を済ませた。

時間になると、さきなちゃんが可愛い衣装に包まれて登場した。今日のライブはさきなちゃんの仲良い芸人とアイドルの友達もゲストで来る予定だった。その前にオープニングでさきなちゃんが歌ってくれる。何回もライブに行ってるうちに、曲もだんだん覚えてきて自然と体が揺れる。周りを見ると、みんな緑色のペンライトを振っていた。真ん中にいる人間がペンライトを持っていないとは情けない。僕もちょっとだけ手を上げて、拳を振っていた。

さきなちゃんの曲で「恋のロケットランチャー」という曲がある。この曲の最後のサビでいつもさきなちゃんがステージから降りて客席まで来てくれる。そして、ひとりのファンの子の目の前に立つと、その子の前で歌ってくれるのだ。その時間は他のファンはしゃがんでその子にスポットライトが当たるようしてくれる。目の前で歌われた子はいつも感激して顔を覆ったり、泣きそうになったりとその子にとって特別な時間になる。

今日のライブでもその曲があって、2番目のサビ終わりの間奏でさきなちゃんがステージから降りてきた。さきなちゃんのファンは女の子の方が多いから、僕みたいな芋男子の前には来ないだろうと思って気楽に見ていた。

しかし、さきなちゃんの足が僕の前で止まった。

僕は瞬時に状況が掴めなくて、目を丸くする。周りを見ると、他のファンは椅子に座ろうとしている。僕も同じように座ろうとすると、隣にいたお姉さんから「いやいや、立って立って」と手を仰がれた。僕は「嘘でしょ」と思いながら、顔を上げるとさきなちゃんが真っ直ぐ僕を見つめていた。さきなちゃんが僕の前に手を出してきて、僕もその手に自分の手を合わせる。

君の名はみたいになっている!!!

僕の頭の中は大混乱。さきなちゃんが目の前で歌ってくれている。せっかく来てくれたんだから僕も何かリアクションを取るべきだったんだけど、僕は信じられなくて、ただただ固まってしまっていた。さきなちゃんの可愛い瞳とずっと目が合っていて気絶しそうだった。さきなちゃんは歌い終えると、また元気にステージに戻っていった。

その後はゲストのえびしゃとトークしたり、さきなちゃんと同じ事務所の「月刊PAM」の子たちとコラボしたりと盛りだくさんのライブであったが、僕はずっと「恋のロケットランチャー」のことが頭から離れなくてドキドキしていた。なんでもっと上手く返せなかったんだと早速後悔もしていた。

ライブ終わりのチェキ会で僕はさきなちゃんに感謝を伝えようと思った。3回も行くともう顔を覚えてくれたのかさきなちゃんがフランクに話しかけてくれる。

「今日は真ん中だったね、ラッキーボーイだね!」
「恋のロケットランチャーの時、ありがとうございました。まさか選ばれると思ってなくて、凄く嬉しかったです。」
「今日は真ん中に行こうと思ったんだ、男の子にはあんまり行かないけど、君は髪の毛長いし男の子って感じしないよね。」

僕は「そうですか?」と少しはにかんで、精一杯今日のライブが楽しかったことを伝えた。チェキ撮るときはいつも緊張して何を話したかあんまり覚えていない。

さきなちゃんと笑顔で別れて、出来上がったチェキを見返してみるとさきなちゃんが可愛いのはもちろんだが、自分の顔が凄くいい笑顔で写っていて驚いた。

「僕ってこんなに自然に笑えるんだ」とふと思った。

僕はいつもチェキ会の時の他のファンの人たちを見るのが好きだ。みんなさきなちゃんと話す時は幸せそうで、その笑顔が輝いて見えた。自分も周りからそう見られているんだろうかと思ったら、少し照れくさいようで嬉しかった。

さきなちゃんのライブに通い始めてから3か月。凄く毎日が充実している気がする。これまでは会社と家を往復するだけの何てことない日々だった。正直いつ死んでもいいやと思う夜もあった。でも、今は「もうすぐさきなちゃんのライブに行けるな」とそれを楽しみに、毎日を頑張れている気がする。さきなちゃんを見ていると不思議と自分も頑張ろうと思えてくる。

今回さきなちゃんから特大の恋のロケットランチャーを食らってしまって、僕はますますさきなちゃんに心を奪われてしまった。狙われたらEND、僕の中のチャンカワイが「惚れてまうやろ〜!」と叫んでいる。あんなに幸せに溢れたライブは他ではきっと味わえないな。




創作大賞終わってしまいましたね。全部で21作品投稿しました。これを目標に書いていた部分があったので、やり切った感があります。これをきっかけに新しく読んでくれる人も増えて本当に嬉しいです。7/31までは応援期間らしいので、まだまだ読んでくれると嬉しいです!それでは暑い日が続きますが、頑張りましょう!さいなら!


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