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バイク・研修・爆走!BKB!!

前に仕事で自転車に乗っていると書いたが、僕の会社には原付バイクもある。でも、僕は1度もバイクに乗ったことがない。

僕は今年の4月から担当現場までの距離が遠くなった。片道40分くらいかけて、自転車で向かっている。上司からは「バイクで行った方が速いのに」と言われるが、車すらペーパードライバーな僕がバイクになんて乗れるわけがない。

しかし、上司からバイクの研修があるから行かないかと打診された。

「一度バイクに乗れるようになったら、そっちの方が絶対楽だよ。」

僕は乗るわけないじゃんと思いつつも、上司から言われて渋々「じゃあ研修だけ行ってみます」と了承し、先日バイクの研修に行ってきた。

朝の9時から会社と提携してる教習所に集合した。その日は雲一つない晴天で絶好のバイク日和だった。

同僚のT君も一緒に教習を受けた。T君も同じく今年の4月から担当現場が遠くなったからだ。僕とT君は教官怖いかなとドキドキしていたけれど、やってきた教官は人の良さそうなおじさんでそこは安心した。

まずはみんなで準備体操をする。大きく伸びをしたり、アキレスを伸ばしたり、教官の掛け声に合わせて1、2、3、4。僕は体育の授業みたいだなと思いながら、大きく体をぐるぐる回した。

準備体操が終わるといよいよバイクに跨がる。当たり前だが自転車比べて重量感がある。この鉄の塊を今から動かすのかと思うと、僕は冷や汗が出てきた。エンジンをかけると、バイクがドッドッドッと大きく揺れ始める。教官はハンドルを後ろにひくとアクセルがかかりますと教えてくれた。

「まずはアクセルをかけて前に進んで見ましょう、ではまずはちくわさんから」

いよいよ動かすのかと緊張しながら僕はハンドルをゆっくり捻ってみる。

しかし、バイクは微動だにしない。

僕はおかしいなと思いながら何度もハンドルをひねっても、バイクはうんとすんとも言わない。

教官が堪らずバイクから降りてきて、僕の様子を伺う。教官もこんな序盤で躓くとは思っていなかっただろう。顔に「嘘だろ」と書いてある。教官は僕の手元を見ると笑い、すぐに動かない原因を教えてくれた。

「ちくわさん、逆だよ。ハンドルを後ろにひねらきゃ。」

僕はずっと前にハンドルを動かそうとしてたけど、実際は後ろにひねらないといけなかったのだ。僕は勝手なイメージで前に捻った方が「今から発車するぞ!」って感じがするなと思ってたので拍子抜けした。

ハンドルを後ろにひねるとバイクはあっさりと動いた。その様子をT君はニヤニヤしながら見ていた。ヘルメット越しからもその顔は分かる。

無事バイクを発車出来たら、次は教習所内をぐるぐる走ってみる。

動かし方が分かれば、後は自転車と変わらない感覚で自分の行きたい方向に動かすことが出来た。僕は「なんだ簡単じゃん」と思いながら、S字カーブやクランクも回った。

教習所の中には低い平均台みたいなのがあって、その上を真っ直ぐ走る練習もした。最初は脱輪したが、何回かやると真っ直ぐ走れるようになる。

乗っているうちに、僕は最初に抱いていたバイクへの恐怖心みたいなものはなくなっていた。

教習所での運転になれたら、休憩を挟んでいよいよ路上に出る。路上になると、話が変わってくる。一気にまた恐怖心が出てくる。車の教習では補助ブレーキが付いてるから、危ない時には教官が止めてくれるが、バイクになると誰も助けてくれない。

完全に1人だ。(It's、生身!It's、生身!)

路上では教官を真ん中に挟み、僕たちが変わりばんこに先頭で走ることになった。「次の信号は右に」などの教官の指示は無線機を使って行われる。体に無線機を取り付けながら、僕はなんかアクション映画のワンシーンみたいでカッコいいなと思った。(応答せよ的な感じ)

最初は僕が先頭になって路上に出た。路上に出ると、当たり前だが車や人が沢山いて、色んな方向に目を向けないといけない。それだけでも結構怖いのに、カッコいいと思っていた無線機が全然機能しないから困った。バイクの風を切る音にかき消され、教官の指示が全く聞こえない。

信号が近づいてきて僕は焦って「次の信号どっちですか?」と後ろを振り返る。教官から大きな声で「ちくわさん、前を向いて下さい!」と怒られる。

なんてこった、こんなに無線機が聞こえないとは。僕は目で周りの状況を注意深く確認しながら、耳では教官の指示を聞き漏らさないように集中していた。バイクに乗るのってこんなに五感を研ぎ澄まさないといけないのか。

しばらく先頭を走った後、僕はT君と先頭を交換した。僕は最後尾で後に続けばいいから、気持ちがだいぶ楽になった。

T君は横断歩道で人が止まっているのを、そのまま行こうとして注意を受けていた。僕も車の路上試験で横断歩道に人がいるのに止まらず、教官に補助ブレーキを踏まれて一発アウトになった苦い思い出がある。(あの時は泣きながら多摩川の河川敷を自転車で帰った)

それなのに、普段歩いていて横断歩道で待っていても全然車は止まってくれないよな。みんな教習所で「止まりましょう」って教わったのに忘れちまったのかい?

そんなことを考えながら運転していると、あっという間に路上教習は終わりの時間になった。教習所に帰ってくると心がホッとした。無事戻って来れたんだ。
最後に教官からはアドバイスを貰った。

「2人とも最初に比べてだいぶ良くなったよ、この研修に来たということは会社に期待されているということだから、この感覚を忘れずに会社でもバイクの練習して下さいね。」

研修は13時に終わり、僕とT君はその足で会社に向かった。途中の電車で、僕はT君に「思ったよりバイク怖くなかったね。」と言うと、T君は「そうですね、走ってる時は気持ち良かったです。」と満足そうだった。

「どうする?今後の現場はバイクで行く?」と聞くと、T君はきっぱりこう言った。

「乗らないです。自転車の方が楽なんで」

T君は自転車の方が簡単にUターン出来るし、駐輪もしやすいと真面目な顔で話す。会社のお金で研修を受けといてなんてやつだと思いながら、僕もこう返す。

「だよね、僕も乗らないかな。」

研修を受けてから2週間、2人ともあれから一度もバイクに乗っていない。気温が高くなっても、汗だくになりながら自転車を漕ぎ続けている。
何のための研修だったのか、でもバイクに乗るのも悪くないと思ったからまた乗ってみたいなとは思う。教官本当にごめんなさい。




5月、6月と間隔を空けずに投稿出来たのが嬉しいです。何より書くことが楽しい。新しく見てくれる人も増えて本当にありがとうございます。7月もこのペースで書いていきたいと思います。では、また!



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