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【第5回】地区防災計画によって住民の命が守られた事例

質問 このチャンネルの執筆方針と地区防災計画が災害のときに実際に役立った事例を教えてください。

概要

 ①本チャンネルは、地区防災計画学会に所属する有志の大学教員等により、多様な災害にコミュニティはどう立ち向かうべきかの視点から執筆されています。
 ②地区防災計画が災害のときに実際に役立った事例としては、例えば、愛媛県大洲市三善地区で、2018年の西日本豪雨の際に、地区防災計画に基づいて柔軟な避難を行った結果、住民全員の命が守られた事例があげられます。

解説

①多様な災害にコミュニティはどう立ち向かうべきか 

 近年は、2016年熊本地震、2017年九州北部豪雨、2018年西日本豪雨、2019年台風19号、2020年九州豪雨、2021年熱海土砂災害等多様な災害が続いています。また、2020年から続いてきたコロナ禍については、緊急事態宣言が終わりましたが、疫病の流行下での避難の在り方という難しい論点を残しました。
 防災研究をしていて、災害が発生する前に、もう少し知識や備えがあれば、もう少しまわりの方が助けてあげれば、命が助かる、財産が守れる場合があると感じることがあります。そして、その鍵の一つとなるのが、地域コミュニティ自助共助です。
 地区防災計画学会では、このような多様な災害にコミュニティはどう立ち向かうべきか、検討が進んでいます。そのような検討状況も踏まえながら、このチャンネルでは、学術的な知見や実務的な知見も踏まえて、防災に役立つような地域コミュニティ自助共助に関わるお伝えしたいと思っています。 
 本ブログを契機として、一人でも多くの方に防災に興味を持っていただき、いざというときに自分自身やまわりの方の命を守っていただければと考えております。災害に対して、まわりの方々と相互に助け合って実施していくコミュニティ共助による事前の備えの重要性を少しでも御理解いただければ思っています。

②地区防災計画に基づき柔軟な避難を行い、住民全員の命が守られた事例

 ここで、2018年の西日本豪雨の際のよく知られている事例を一つ紹介します。地区防災計画学の分野では、よく取り上げられる事例です。
 2018年6月~7月にかけて、西日本を中心に全国的に広い範囲で台風や梅雨前線等の影響で集中豪雨が発生し、大きな被害が出ました。地球温暖化の影響を受けて、それまでになかったような集中豪雨が発生し、270人以上の死者・行方不明者が出ました。
 このような状況で、愛媛県⼤洲市三善(みよし)地区では、河川氾濫が発生しました。これは、住宅地が水でつかるような大きな氾濫でした。
 集中豪雨に関する情報を受けて、氾濫が発生する前に、三善地区の住民の方々は、あらかじめ災害に備えて準備していた地区防災計画に従って、住⺠同士で声をかけあって、大半の住民が、河川氾濫が起こる前に、早期に避難所として指定されていた公民館に避難しました。
 しかし、それまでになかったような集中豪雨の影響を受けて、この河川氾濫は、住民の方々の想定よりも大きなものとなりました。
 なんと、住民の方々が避難していた避難所である公⺠館自体が水につかることになったのです。
 避難所にいた住民の中には、高齢者や子供もいました。避難所が水につかるということは、大きな被害が発生する危険があります。
 この避難所に避難していた住民の方々は、普段から協力をして、川の様子を継続的に観察されていて、どうも普段の雨の時と様子が違うということに気づいていました。そして、住民のリーダーの方の判断により、住⺠の方々が一緒になって自主的に⾼台の変電所に避難していました。避難が終わった後で河川が氾濫したことから、避難所にいた住民の方々は、全員難を逃れたのです。
 さらにすごい話がこの地区にはありました。
 この地区では、水害に備えてゴムボートまで準備していました。実は、浸水前に逃げ遅れた住⺠の方もいましたが、地区で協力をして、このゴムボートで最後の一人まで救出しました。
 結果として、ひどい浸水の中でも、地区の住民全員の命が助かったのです。
 地区の住民の方々が、日頃から連携して防災活動を行っており、日頃の防災活動もしっかり行われていたことから、集中豪雨のような想定外の事態の中でも、住民の方々が自らの判断で柔軟な対応を行い、結果として、住⺠の方々全員の命が守られました。

まとめ

 本チャンネルでは、防災に役立つような短いストーリーを中心に掲載し、一人でも多くの方に防災に興味を持っていただき、いざというときに自分自身やまわりの方の命を守っていただければと考えています。
 上記で紹介した事例もそうですが、全国の先進的なコミュニティ地区防災計画づくりが広く取り組まれるようになっています。ぜひ皆様も地区防災計画づくりについて御検討ください。
 本チャンネルは、有志の大学教員等の先生方に御指導をいただいていることもあり、記事につきましては、不定期更新となります。また、今後、地区防災計画学会の発刊物や機関誌等とのバランスの関係で、有料記事の機能を利用する予定です。今後も、さらに防災の研究を進めて、多くの住民の方の命を守ることができるように研究を進めていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

閑話

 避難生活では、衛生面がすごく気になります。アルコール入りのウェットテッシュがあると安心できます。アルコール自体もあるといいと思います。


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