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社会起業家になるまで  #人生を変える学び 植山智恵 vol.1

――#人生を変える学びシリーズ連載第3弾は、ミドル・シニアの学び直しをサポートする事業“Project M’INT”ファウンダーの植山智恵さんです。植山さんは、ソニーを退職し、キャンパスを持たないミネルバ大学大学院のパイロット生として入学。卒業後、現在の事業を立ち上げました。このままでは「本当のやりたいこと」に気づけない大学院での猛勉強が人生を変えるきっかけになりました。20世紀型の一斉講義式の座学とは異なる、思考力と課題設定力を育む学びとはどのようなものでしょうか。グロービス研究員として米国でEdTechを研究する識名由佳さんと対談します。

識名:渡米のキッカケは、家族の駐在でしたが、ソニーを休職して楽しく過ごす選択肢もあったと思います。なぜ、退職を決断したのでしょうか。

植山:当時、30歳を目前に「自分の本当にやりたいことは何か?」とずっとモヤモヤしていて、ドラスティックな変化をしたいと思っていました。そのためには、会社を辞めるしかないと考えたんです。

会社員でいるうちは、本質的な自分の変化には到達できないかもしれないという危機感があって。今なら背負っているものも少ないし、冒険ができる、この状況はチャンスなんだ、と。

とはいえ、そう腹がくくれるまでは、いろんな人と話したり、転職活動をしたり。あるベンチャー企業の面接で、年下の面接官に「正直言って植山さんは、あまり魅力的な人材じゃない」と宣言されたときは、その通りだなぁと(笑)。大企業で営業やマーケティングをしていた私は「緩やかなジェネラリスト」でベンチャー企業では魅力的ではありません。

でも、転職活動に失敗したのが良かったんだと思います。私の場合は、会社に残るといい会社で安泰な暮らしを目指してしまう。これではずっと外側の指標から逆算して選択する人生になってしまいます。それよりも、自分が好きなことを突き詰めてやった方がオリジナリティが出ていい。内面の価値を追求することに決めることができました。

識名:市場価値を上げるより、「やりたいこと」に舵を切る。

植山:そう。ちょうどその頃、識名さんに出会ったんです。まだソニーにいてフワッと教育で社会貢献できたらいいなと考えていた時期だから、識名さんみたいに「個人として社会をこう変えたい」という強い想いを持つ人に会ったのは初めてでとても刺激を受けました。

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20世紀型の一斉講義式の座学とは異なる、思考力と課題設定力を育む学びとは

植山:話があちこちいきますが、同じ頃、船上でリーダーシップを学ぶプログラムに参加して、12ヵ国の人たちと一緒に船で1ヵ月半くらい寝泊まりして語り合いました。話しているうちに、自分のやるべき課題が見えてきて。そこで「教育を通じて日本の女性がリーダーシップを発揮できるように貢献したい」という風に言語化できるようになったんです。問題意識がクリアになったことは、自分の進路を決めるうえではすごく大きかったと思います。

識名:その問題意識には、津田塾(植山さんの母校)の影響もありそうですね。

植山:少なからずあると思います。自律した女性たちが多かったから。私は不真面目な学生でしたが。

識名:どういうことですか?(笑)

植山:一斉講義式の座学で行う20世紀型の教育ではプロセスは見られなくて、やる・やらないの線で白黒はっきり区切られますよね。私は線さえクリアすればいいというスタンスでテスト前だけ勉強して後は遊ぶような学生でした。

識名:旧来型の学び、正解を探して線をクリアしようとする方法では、思考力がつきにくいという問題意識はとても共感します。グロービスがケースメソッドを導入しているのも、答えを学ぶのではなく、そもそも何を問うべきか、何を考えるべきなのかということ自体を訓練するためなんですよね。
ミネルバ大学院との出会いのきっかけは、何だったのでしょうか?

植山:ソニーを退職して渡米したあと、しばらくはソニーのグローバルエデュケーション事業に関わらせてもらっていました。いろんなカンファレンスに参加しましたが、サウス・バイ・サウスウエスト(毎年3月にテキサス州で行われる最先端テクノロジーの祭典)で、ミネルバ大学の社員に声をかけられました。本当に偶然に。

私自身、調査員のような立場でカンファレンスを見ては「21世紀型の教育はこうです」と紹介していたのですが、実際それが何なのかはよくわかっていなかった。だから、「自分も飛び込んでみたい」という好奇心が出てきて入試を受けることにしたんです。

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識名:どんな入試内容でした?

植山:入試もオンラインだったのですが、試験内容は画面がパッパッと切り替えられていくので正直覚えていません(笑)。最後に、「あなたがこれから解決したい問題はなんですか」という問いに1分で記述します。そこに「教育格差やジェンダーで、教育の機会とアウトカムが違うのはおかしい。これを解決したい」と、そういうことを書きました。

識名: 普段から問題意識を持って考えている人でないと1分で書けないですよね。

植山:そうですよね。その問題意識やカバーレターを工夫したので、そこが評価されて合格したんじゃないかと思います。

ーー植山さんは、院生7名のうちの1人として学びをスタートします。大学院の学びはどのようなものだったのでしょうか?Vol.2に続く。