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コロナ禍リモートワークのチームマネジメント③マネジメントの目的に合わせた組織運営の仕組み化:スクラム

前回はリモート下でもうまくいくコミュニケーションの仕組みをお伝えしました。今回はコミュニケーションのスムーズさを土台とした組織運営自体の仕組み化のトライについてお伝えします。

マネジメントの目的を忘れず、成果に必要な要素を分解する

まずはご自身のマネジメントするビジネスやチームのミッション、出すべき成果に照らし合わせて必要な要素をしっかりと分解・定義することが重要です。

「どういったときに、どんな形で、各個人が連携するとスピードとクオリティを担保して最高のアウトプットが出てくるのか」を分析し、その形にチームの仕組みを整えることが重要です。

一見曖昧なもの、例えば「仲間感」「ライバル意識」「賞賛等での自己顕示」「ナレッジのシェア」なども、仕組みに組み込むことが可能です。曖昧な感覚に頼らず、戦略的に組織管理やコミュニケーションの機会を設計し、言語化することがリモート環境だからこそ一層必要になるのではないでしょうか。

TIPS:組織運営の仕組み化・情報の可視化

前提として、我々のチームは役割が多岐にわたります(法人事業のマーケティング、社内の営業推進、販促企画、クリエイティブデザイン、カスタマーサクセスに加え、事業のための法務やリリース管理、オペレーション支援、開発協力など)。

BtoBのビジネスでその役割を各個人が部分最適で属人化して行うと、ステークホルダーが多く調整に時間がかかる、複数のKPIの目指す方向が矛盾することがある、自分以外の役割理解が浅いまま視野狭く行動を行おうとする、など成果を最速で出すことが難しい状況になります。

そこで全員が「事業を成功させるために、個人ではなくチームとして何をすべきか?」に向き合えるよう、個人の役割ではなく、チームでタスクを可視化し、アイデアを出し合い、タスクごとに人をアサインする方式にしています。個人もサステナブルに成長し働き続け、組織が持続的に早く成長するためには、「人依存」の仕事をしないことが重要です。少しずつ個人が他の役割に越境することで、チームとしての総合力が高まります。

その為に昨年末からエンジニアと相談し、アジャイル開発に用いられるチームマネジメントの手法である「スクラム」体制を少しずつ導入していました。ここでは「スクラム」をどのように運用しているのかを紹介します。

①スクラムとは

スクラムについての詳細はWEB上に記事が多々ありますので省きますが、簡単にいうとソフトウェア開発の手法をチームマネジメントに使える要素だけを残した、チームで作業をするためのフレームワークです。

②非開発組織へのスクラム導入

スクラムの開発の思想は、「組織フェーズに応じて自分の役割が変わり得る」「全員で作り上げる」です。これは非開発組織においても有効です。スクラム方式におけるプロジェクト管理の基本枠組みには、

  ・スプリント計画(1週間でやるアウトプット)
  ・デイリースクラム(毎日状況共有)
  ・スプリントレビュー(アウトプットの評価)
  ・スプリント振り返り(改善点やナレッジのシェア)

というイベントがあります。主なポイントは固定期間内に作業を完了させアウトプットを出すために、チームの状況を全員が把握し、助け合うというところです。

③何のために何をしているのかの可視化 

成果を最速に出すためには、目的を見失わず時間軸での管理が必要になります。事業部全体としては、数値とOKR(Objectives and Key Results、目標設定と管理の方法)での年間目標、Q目標があります。それを毎月に分解した数値目標と、その数値を達成するためのミッションの設定、そのミッションのために何ができるか、を一週ごとに分解したタスクにしスプリントを回します。

日報で今日個人がやることを報告し、それらはすべてカンバンツールで可視化され、毎週チームで報告・相談・修正を行っています。シンプルで多すぎないドキュメント・シート管理やカンバンツールを導入することも重要です。

④カンバンツールの導入

カンバンのタスクには、1週間で終わることを書くようにします。例えば、「グロービス学び放題の広告を新聞に出稿する」というミッションがあった場合、「記事内容のドラフトを書く」「対談企業との打ち合わせ用資料作成」「広告デザイン」など、必ず1週で終わる内容に分解し、メンバーをアサインします。

次週のチームMTGで進捗がうまくいっていないとわかったときは「何が障害になっているか?」を確認し、「このタスクを終わらせるためにできるサポートは何か?」と全員で知恵を絞り助け合う問いかけを行います。

⑤タスクへのアサインを柔軟に

我々のチームでは、何となくの主担当はあるのですが基本的にはタスクに上がった内容は好きに立候補していただく、もしくは他者から指名するという形でアサインをしています。

例えば「対談企業との打ち合わせ用資料作成」であれば、マーケが主担当ですが企業事例に詳しいカスタマーサクセス担当が作成したり、「広告デザイン」をデザイナーではなく、営業推進担当がキャッチコピーを考えたりと、柔軟にチームでミッションに向かっています。

事前に「不定期にお任せする業務を変えます」という宣言もしているため、他業務への理解が深まるようになっています。それが事業全体へのコミットにつながっているようです。

⑥毎週の振り返りでKPT(Keep,Problem,Tryの見直し)を行う

Keep、Problemを各自書き出し、共感する内容に投票します。1番投票数が多かったものから読み上げ、書いた人に話を聞きます。このプロセスで他の人の仕事内容を理解し、Problemを解決するために何をしたらいいか、チームで話し合います。変えられそうな事はTryとして解決案を出し、次回のKPTで実行出来たかを確認して成長と改善のサイクルを回します。

⑦はじめて行った事はドキュメントに残す

「組織フェーズに応じて自分の役割が変わり得る」「全員で作り上げる」という前提に立つと、属人化した仕事はチームとしてのスケールを妨げます。基本的に新しいことに取り組む時は必ずマニュアル化やドキュメント化を行い、他の人でも同じことができる環境を作り上げています。また、可視化することによって改善も行いやすくなります。

⑧チーム外からの情報伝達を丁寧に

週一のチームMTG・チーム内チームMTGを行っています。リモートになると自分たちのチーム以外の人とのコミュニケーション機会が減り、偶然の情報獲得が困難になります。リモート時こそ丁寧に全社や部署全体、違うチームの情報を伝えることで、メンバーも安心し情報をもとに考えることができます。

⑨個人の得意なこと、周りの期待を可視化

新しいメンバーが増えるたびに、ストレングスファインダーの結果をチーム全員で共有し、ワークショップを行ったり、ドラッカー風エクササイズ(期待をすり合わせるための手法)を行うなど、お互いの強み弱みを補完できるようにしています。

1人ずつストレングスファインダーの要素を見て、普段の仕事と照らし合わせたその人の褒めポイント、期待したいことをその他のメンバーでフィードバックします。その後本人からアンサーを返してもらい、期待や得意なこと苦手なこと、その理由を教えてもらいます。コミュニケーションのしやすさにもつながるので、一石二鳥ですね。

⑩やらないようにしていること

マイクロマネジメントは一切行いません。我々のチームでは全員の行うこと・求められるアウトプットが可視化されているので、そのためのやり方は各自にお任せをしています。達成に何か障害がある時はそれを排除する、もしくはリソースを追加する、壁打ち相手になるなどのサポートをするのがマネジメントとしての役割です。

ここまで読んで頂いたみなさまはすでにお思いかもしれませんが、今回ご紹介した組織運営の仕組み化は、リモートでもそうでなくても有効に発揮されます。勿論、我々のチームも仕組み化が根付くまでは「何でこんなことやってるんだろう」「よくわからない」という状態もありましたし、ツールさえ導入すればいいというものでもありません。

「事業を成功させるために、個人ではなくチームとして何をすべきか?」というところを常に問い続け、メンバー個人の志・キャリアに寄り添えば、事業と個人の成長を少しずつではありますがスパイラルアップできているのではと思います。ぜひお試しください。

執筆者:越田愛佳(こしだ あいか)グロービス グロ放題法人事業 チームリーダー