GLOBISの乱読帳 12月 ~GDP編~
GLOBIS知見録のテキスト編集チームが手に取った本をご紹介しているこの企画。これからは、グロービスの様々な部門の書き手が書籍を紹介します。今月はGLOBIS 学び放題をはじめとしたデジタルサービスを開発・提供している、GDP(グロービス・デジタル・プラットフォーム)のメンバー3名(ソロキャンプに挑戦したい太田、髪を切って大人になったと評判の亀井、酒は飲んでも飲まれるな越田)編です。
師走となり、グロービスでは講師も社員もあわただしく走り回っています。忙しさを乗り越えたら、ゆっくり読書をしてみませんか。
『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』
著:熊平 美香 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
(推薦者:太田)
皆さんは「内省」をしたことがありますか。こう問われて、Noと言う人はいないでしょう。卒業式や入社式・社内表彰等、大事な節目はもちろん、日常のふとした瞬間も人は「内省」するものです。
では、「内省の技術」を学んだことはありますか。おそらく、Yesと答えられる方は少ないのではないでしょうか。近年、人材育成の現場では、「内省」の重要性が認識され、推奨されています。しかし、肝心の「内省の技術」を教えられることはありません。本書はそうした「内省」の方法論を教えてくれるものです。
本書では難しい理論は一切抜きに、明日からすぐに使えるナレッジを教えてくれます。なかでも、「認知の4点セット」は有効です。どういうものなのか少しご紹介しましょう。
「認知の4点セット」とは、自己の思考、感情、価値観を客観的に捉えるフレームワークです。「内省」において自分自身を客観的に見つめること――すなわちメタ認知が鍵ですが、我々が思っている以上にメタ認知は簡単ではありません。そこで、この「認知の4点セット」の出番です。
まず自分の「意見」を明らかにします。次いで、その「意見」の根拠となる「経験」、「経験」に紐づく「感情」を確認します。最後に、「意見」「経験」「感情」を俯瞰して、根底にある自身の「価値観」を見つめていくという流れです。この流れに沿えば、自身の「動機の源」を見つけることができることでしょう。私自身も、このフレームワークをもとに「内省」をしたところ、多くの気付きを得られました。具体的な進め方をお知りになりたい方は、是非本書を手に取って読んでみてください。
ただ、本書を読み終わり、ひとつ思ったことがあります。それは何のために我々は「内省」するのか、を明確に意識することの重要性です。「こうありたい」「そのために成長したい」という思いがなければ、ただの「内省」上手に終わってしまいかねません。今年も残すところ、あとわずかとなりました。「来年こそはこうありたい」という抱負とともに、是非本書で「内省の技術」を学び、1年の振り返りをしてみてはいかがでしょうか。
『アンガーマネジメント』
著:戸田 久実 出版社:日本経済新聞出版
(推薦者:亀井)
あなたは今日、怒っただろうか?
過去一週間まで広げたらどうか。
あるいは、誰かに怒られたか。
「なんで自分はこんなこともできないんだ」と自分を責めたか。
「あの時言い返してやればよかった」と後から怒りが再燃して後悔したことはあっただろうか。
心当たりのある方に一読してもらいたいのが本書です。本書では「怒り」のメカニズムを紐解くと同時に、述べ22万人にコミュニケーションの指導をしてきた著者が、職場での事例を中心に、対処法を解説しています。
怒りは、コアビリーフ、すなわち「〜べき」と信じてやまない事柄が侵食された時に生まれるそうです。たしかに「なんで?」と怒りを感じるときを振り返ると、同時に「こうあるべきなのに」という思いもあります。自分にとっての譲れない「常識」が侵害されたと思っている、とも言い換えられるのではないでしょうか。
変化の激しい昨今、マネジメント層と若手社員の「常識」の違いに悩む人も多いといいます。「普通」「当然」「当たり前」「正しい」といった「常識」にまつわる言葉で人を責めてしまったことのある人、または不本意にも責められている感覚のある人は要注意です。文中に「パワハラという言葉をふりかざされて困ってしまった」という事例が登場しますが、叱るほうの「常識」と叱られるほうの「常識」のズレにより受け手が理不尽に感じることもあるようです。多様性が叫ばれる現代において、ますます「常識」や「当たり前」の取り扱い方や、それに伴う「怒り」との付き合い方は難しくなっているように感じます。
なお、怒りという感情は職場以外にも、実は関係が近しく「常識」や「当たり前」を共有している感覚の強い家庭において起こりやすいのだそう。ぎくりとする人は多いのではないでしょうか。
著者は怒りという感情を「心身の安心・安全を守るために必要な感情」と捉えたうえで、怒りに振り回されるのは時間の無駄であり、「アンガーマネジメントで目指すのは、自分や周囲の人が、長期的に心身ともに健康である選択ができること」と述べています。
ここまでで「怒り」に少しでも関心が湧いた方、ぜひ本書を手にとってみてください。きっと怒りとうまく付き合うヒントが見つかります。
『行動経済学の逆襲』
著:リチャード・セイラー、訳:遠藤 真美 出版社:早川書房
(推薦者:越田)
プロスペクト理論、ナッジ、損失回避、ハロー効果……聞いたことあるようなないような用語で知られる行動経済学。その研究でノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー氏のユーモアたっぷりな本をご紹介します。「経済学?統計?なんだか難しそう・・・」「人間心理に興味があるけど、その行動と経済にはどんな関係があるんだろう?」なんて思う人におすすめの一冊です。
従来の経済学では人間が合理的な判断・行動をすることを前提として統計、理論をまとめています。しかし現実を見てみると、私たちは合理的とは思えない行動をとることが日常茶飯事です。
例えば、
質問:次の2つの選択肢を選べと言われたらどちらを選びますか?
①今すぐもらえる5万円②1年後にもらえる10万円
①を選ぶ方が案外多いのではないでしょうか?
これは現在志向バイアスといい、未来の大きな利益よりも目先の小さな利益を優先してしまう心理のことです。
よくある行動経済学本やWEB上の情報では、いわゆる「ハウツー・TIPS」のように用語の説明と簡単なエピソードのみで語られることがほとんどです。対してこの本は、リチャード・セイラー氏が「これは不思議だなあ」と思ったことを、従来の経済学とは別の見方や実験方法を使い、仲間の心理学者達と共に従来の経済学では説明できない事象の研究し深めていく、といういわば"知的冒険活劇"なのです。
この本が上下巻に分かれているのも、行動経済学を駆使した戦術だったりして……?と思わせてくれる、チャーミングな本です。休みのおともに、肩の力を抜いて読んでみてはいかがでしょうか。
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いかがでしたでしょうか。みなさんも読書を楽しんでください!
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