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ホテル文化に学ぶ(2)

<ホテリエの接遇と所作>

 写真下をご覧頂ければ、一目瞭然。ホテリエの立ち姿、笑顔、そして指先まで神経が通った所作と表情。私たち素人には、なかなか真似ができるものではない。日々厳しい訓練を積み重ねてきた結果が、これに通じている。

 写真1枚目は、熊本ホテルキャッスル(62年の歴史)1階ダイニングキッチン九曜杏のマネージャー(現在、食堂部長)である。学生時代に剣道の経験があるからなのか、立ち姿が実に美しい。常に自然体で臨んでおり、歩く姿も頭の上下動が少なく、革靴の踵の音もせず、さっとお客の動きに合わせて視線を送り、動いている。ウェイターがトレイで運ぶ時も、その背後2メートルほどの距離を保ち、いつでもアシストできる態勢を採っている。

 また、同レストランの魅力は、各スタッフの笑顔は勿論だが、常にお客の話に耳を傾け、暇つぶしをしているお客に対しては退屈させないように心掛けている。時には、要注意人物も居るが、嫌な顔一つせず、笑顔にてレベルの高い接遇をしている。しかし、バイキングや団体客のサーブ時には、目の色を変えて1秒でも早くお客の要望に応えるべく動いてはいるが、端から見ていて気の毒なことも多々ある。

 バイキングシーズンは、あくまでも憶測だが、1日平均で1000枚以上の器を運び、そして片付けまで完璧に行う必要がある。聞くところによると、1日8時間で10km以上歩くと言う。一度、或る女性スタッフの万歩計を見せて貰ったが、間違いなく10kmを超えていた。広いレストランホールにて驚くべき運動量なので、太る暇はなさそうだ。

 話が少々横道に逸れてきたので、ここらで軌道修正をすることに・・・。

 ホテリエの善し悪しは、接遇で決まる。ザ・リッツのクレド、そして帝国ホテルの十則などを拝見すると、紳士淑女のお客に対して、全スタッフが真心を込めて自らも紳士淑女としてお仕えしている。よって、我儘放題のお客が居たとしても、笑顔を絶やさず、しっかりと対応しているホテリエには頭が下がる。

 見ていて気持ちの良い所作というものは、頭の天辺から足の爪先まで、神経がしなやかに通っている。道案内をする時の手先の動きを見ても、全く無駄な動きがない。言葉少なに、すっと自然に予約席まで行き着くのである。そこには、各所に立つスタッフ間の目線が光っている。目力と言っても良いほどの、高度なコミュニケーション能力を備えている訳だ。

 再び、クレドや十則の話に戻るが、ここでお客として、一つ大きな課題を提起されているように思えてならない。それは、「紳士淑女としてのお客」の接遇を受けるのだから、当然の如く、我々も品格を持ち、エチケットを守らなければならない。しかし、金銭を払う方が偉いと思い込み、無理難題を持ち込み騒ぐお客もいるので、そこはホテル利用法をしっかりとお勉強頂いた上で、ホテルを利用願いたい。

 ホテル側に一方的に最高の接遇や所作を求めるのではなく、最高の接遇に恥じぬよう、お客側がそれ相応のモラルと品格を備えるのが鉄則。GoToトラベルなど、些細なことでお客とホテル側とのトラブルが続出するのは、その鉄則なりを理解できぬ(知らぬ)人がホテルを利用しているからである。GoToトラブルにならぬようご注意願えれば、これ幸いとなる。

▼ザ・リッツの哲学
We are Ladies and Gentlemen serving Ladies and Gentlemen.

熊本ホテルキャッスル ダイニングキッチン九曜杏 当時のマネージャー
レストランホールのスタッフ
厨房のシェフ
バイキング風景
ベイクド・アラスカをサーブしているギャルソン
完成

サポート、心より感謝申し上げます。これからも精進しますので、ご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。