映画「RRR」2回目感想
2回目鑑賞して、気になったことや、考えが変わったことを記しました。
1回目の感想はこちらから↓
まず、この度は、劇中歌「ナートゥ」がゴールデングローブ賞最優秀主題歌賞の受賞とのこと、大変おめでとうございます!オスカーでも、好成績を納めることを期待しております!ラマビムには、是非舞台で「ナートゥ」してほしいです!
1回目の感想では、「とにかく1000%脳筋闇鍋アクション映画に終始痺れる!」と、言いましたが、2回目鑑賞してみると、「それだけじゃないな」とも思います。
なぜ、本作がこれほどまでに世界的に受けたのか?考えてみました。
色んな理由が考えられますが、一番大きい理由は、このご時世に「マッチ」した内容だからだと思います。今も世界では色んな地域で戦争や紛争が絶え間なく起きていて、人々の生活や文化の存続が脅かされています。そんなときに、本作が「生きる希望」や「立ち上がる」勇気を与えてくれる存在になっているのかなと思います。
本作、所謂「インド版レ・ミゼラブル」だと思います。『レ・ミゼラブル』では、フランスの階級社会の構造としての貴族が「悪」でしたが、本作では、イギリスによる植民地支配が「悪」となっており、それらに押さえつけられた人々が立ち上がる所は、どちらも「ナショナリズム」を感じる構図になっています。
本作では、大国からの侵略や弾圧から、自民族を守る、「弱そうな民族だから」と、舐めていると痛い目に遭うぞ、というメッセージが込められていますが、喩えるなら「正に、窮鼠猫を噛む」ですね。
最も、本作が撮影されたのは2018年から2021年前半とのことなので、ラージャマウリ監督が今の世界情勢をどこまで「予見」されていたのかはわかりませんが。
また、一つ「訂正」として。1回目の感想では、
"本作、映画としては十分に面白いのですが、一方で思想的には「引っかかる」点もありました。
まず、本作の設定とキャラの立ち位置は、とにかく「イギリスが悪、インドが善」みたいな「二元論視点」ですね。こういう構図は、簡単でわかりやすくはあるけど、一方でそのまま信じてはいけないのも事実です。"
と書きましたが、今なら「そうとも断言出来ない」と思います。
確かに、本作のイギリスは「弾圧側で加害者で『悪』」なんですが、逆にインドが「被弾圧側で被害者」ではあっても、「善」なのか、というとそうではなかったですね。実際に、本作の開始前から何度も「反英運動」が勃発し、暴力に対する暴力は序盤に描写されていたので、如何にも「被弾圧側で被害者=善き清い存在」としては描かれてないと思います。
しかし、ラマビムは、作中にて、人を動かすのは、必ずしも暴力的な手段だけではなく、「ナートゥ」や「コムラム・ビーム」などの歌やダンスといった非暴力の手段で人を動かすこともできると気づきます。
まぁ、イギリス側でも、「この状況はマズくない?」と疑問を持つ人がいたり、「このままの支配でいいのか?」と葛藤し、イギリスの体制に反発する人々がいてもおかしくはなかったかなとは思いますが、本作ではそこまでは描かれていません。最も、ジェニーも、不当な差別に心を痛めていたけれど、そこまでのアクションは起こせてなかったので。
それでも、やはり、「引っかかる点」はないとは言い切れないと思います。例えば、ラマビムがラストにバクストン提督夫妻をぶっ倒し、イギリスの「根城」をぶっ壊したのはENDINGとしてはスカッとしていますが、これらを外側の観客が「面白がったり、喜んだり」するのは、果たして本当に「適切な」リアクションなのか、ここは悩むところです。
勿論、本作は上記に挙げたことではなくて、「過去の歴史を踏まえたインドの団結と、友情の素晴らしさを伝えたい」、というメッセージが含まれているのはわかります。
後は、猛獣パニックシーンについて。イギリス軍を襲った猛獣達、彼らがイギリス軍に捉えられずに、ビームが自然に返してあげたことを願います。
あのシーン、やはり古代ローマのコロッセオでの猛獣ショーを彷彿とさせてしまうのです。ローマでは猛獣を剣闘士と戦わせたり、迫害対象のキリスト教徒を猛獣に食わせて処刑させたりしていたので。だから、本作では敢えて、その「逆」として、こういうシーンを挿入させたのでしょうか?
ただ、猛獣捕獲のシーンでは、ビームが「すまない、兄弟達よ」って言ってるので、利用している自覚はあったのかな?だから、余計にそう思います。
そういえば、ここの猛獣大集結シーン、上野にある国立科学博物館地球館にある剥製がズラッと並んだゾーン(ヨシモトコレクション)を思い出しました。もし行く機会があれば、心の中でビームを思い出します(笑)。
このように、色々思うことはありますが、やはり好きだし、何度も観たくなる作品ではあります。