【解説】 バルダーズ・ゲート3を語ろう!冒険しよう! 【評価】
はじめに
200 時間の旅路をひとあし先に終えました。
全編英語でやり通したのと、過去の会話を読みなおしたりロアやルールをその都度調べたりしたので実質的な攻略はじっくりやって 150 時間前後でしょうか。CRPG というマイナージャンルに慣れていれば相応の、そうでなければ驚異のボリュームです。
バルダーズ・ゲート 3 とは、今年 8 月に彗星のごとくあらわれた話題作で、今年の GOTY 関連賞を総ナメをしている傑作 RPG シリーズの最新作です。
が、多くのひとが落胆したように本作の日本語化は 4 ヶ月遅れ、ルールや世界観のベースとなっている D&D 第 5 版 が日本国内ではあまり親しまれていない状況を考えると、日本語版リリース後もしばらくは「海外でやたらと評価されている作品」という位置付けが続きそうです。
とはいえ、本作は "ある文脈では" すでにゲーム史に残る歴史的価値があり、今後 RPG を語るには無視できない重要作だと断言できます。そのため、ゲーム文化や RPG を考えるうえで日本人にプレイしやすいとはいいがたい環境にあるのは文化的な機会損失とすらいえるでしょう。
本記事は、そうした事情を踏まえてより多くのひとが興味をもち、バルダーズ・ゲート 3 へ気軽にジャンプインでき、そして、その背景にある CRPG という文脈を知ることで本作をより正確に語れるようになることをめざして書きました。
約 3 万字という長さですがこの記事 1 本で必要最低限の知識を賄えるように書いたのでご自身の興味関心にあわせて好きなところを、気になるところから自由にお読みください。
それでは早速はじめましょう。
※ 本記事は日本語版をプレイしないまま書かれています。確認次第、修正予定(12/19)
BG3 はどんな作品?
バルダーズ・ゲート 3 は、ダンジョン&ドラゴンズ 第 5 版という TRPG の世界観とルールセットをもとにしたコンピューター RPG です。
本来の発売予定だった 2 年前にはマジック・ザ・ギャザリングの新拡張「フォーゴトン・レルム探訪」や「バルダーズ・ゲートの戦い」としてコラボし、今年初めには実写映画『ダンジョン&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』がヒットしたので D&D の名前を聞いたひとも多いはず。
もふもふかわいいアウルベアもゲーム内に登場し、会話や行動の選択次第ではその仔をキャンプに迎えられますし、ドルイドというクラスではなんとアウルベアに変身して戦うこともできます。
また、D&D はすべてのファンタジー RPG の祖先というべきもので、日本国内ではその戦闘部分を抽出して磨きあげたウィザードリィシリーズがドラゴンクエストやファイナルファンタジーなどをとおして絶大な影響力をもった話は有名です。そこに D&D との切り離された血縁とでもいうべき奇妙な繋がりと断絶がみれるでしょう。
シリーズ途中からでも楽しめる?
バルダーズ・ゲート 3 を開発したのはベルギーの Larian Studios です。
20 年以上の歴史がある開発企業で、代表作の Divinity: Original Sin 2 は日本国内でも西欧 RPG に詳しいひとならご存知でしょう。
シリーズ作品をナンバリングの途中からはじめることに抵抗感があるかもしれませんが、本作では実はあまり問題になりません。というのも、前作、前々作は 20 年以上前で、開発も BioWare と、今作とはことなっているからです。
実際、僕自身も数年前に過去作をプレイしただけですが、本作には D&D 世界の固有名詞はたしかに多いものの、前作、前々作を知っておく必要性は感じませんでした。あとで解説するように、過去作では未登場のマインドフレイヤーやギスヤンキというユニークな種族がフィーチャーされているのもありますね。
もちろん、シリーズでお馴染みの人物も再登場するので知っておいた方がより楽しめるのも事実です。
たとえば、ジャヘイラは今作でも行動と会話次第では仲間になりますし、
ジャヘイラが仲間にいれば MtG のカードとしても強力なミンスク&プーも仲間にできます。
ほかにも、吟遊詩人のヴォロは序盤から登場しますし、大魔導士のエルミンスターはコンパニオンのゲイルに、ドラウ(ダークエルフ)のヴィコニアはシャドウハートに深く関係する人物としてそれぞれのクエストに再登場します。もちろん、今作での彼ら彼女らの「扱い」の是非は今後の批評に期待される論点のひとつでしょう。
ちなみに、過去作を開発した BioWare は Mass Effect シリーズや Dragon Age シリーズで知られる老舗企業です。Electronic Arts に買収される前と後のどちらを黄金期とするかは諸説ありますが、CRPG というサブジャンルでは、僕の知るかぎり、買収前の Baldur's Gate 1、2 こそを Fallout とならぶこのジャンルの古典であり BioWare の代表作とする見方がより一般的です。
どういう遊びかた?
RPG ときいてなにを想像するかはひとによりますが、バルダーズ・ゲート 3 はロールプレイの幅と物語との強い結び付きを特徴とするアドベンチャー色の濃い作品です。
さまざまな会話と行動の選択肢があり、複数の解決方法があり、複雑に絡みあう膨大な選択の帰結により自分だけの物語が編まれます。もちろん、プレイヤー自身の価値観に従ってもいいし、攻略を優先して日和見になることもキャラクターのイメージを固めてロールプレイに専念することもできます。
ユニークなのはさまざまな場面でダイスロールをともなうスキルチェックが発生することでしょうか。
たとえば、敵集団の待ち伏せや隠し扉に気付くには〈知覚〉の技能判定に成功しなくてはなりません。また、相手を自分のいうとおりに従わせるには〈説得〉や〈ペテン〉が、懐から貴重なものを盗んだり錠前を開けたりするには〈手先の早業〉が求められます。技能の数は 18 におよびますが、ひとりが伸ばせるのはせいぜい 2 つ、3 つなのでさまざまな状況に対応できるバランスのとれたパーティー構成が攻略の要になるでしょう。
また、各章では敵対する複数の派閥が登場します。
Act 1 ではまず、エメラルド・グローブを守るドルイドたちと、
その神聖な森を襲撃するゴブリン集団。
さらに、祖国エルトゥアルを差別感情から追われてドルイドの森に身を寄せるティーフリングの避難民。
彼ら彼女らはドルイドたちと争う理由はないのですが、ゴブリンの襲撃は避難民が引き寄せているとドルイドたちが森から追い出そうとして緊張が高まっているのです。
もちろん、だれの味方をしてどの集団と敵対するかはプレイヤーの意思とスキルチェックのダイスロール任せです。
エメラルド・グローブを守り抜けば強力なドルイドの族長ハルシンが仲間になり、
反対に、ゴブリンたちと一緒に森を襲撃して虐殺に興じれば蜘蛛の女神ロルスに忠誠を誓うパラディンの指導者ミンタラが仲間になります(※パッチ 5 にてドルイドでもミンタラを "殺さずに倒す" ことでそのあと仲間にできるようになった、らしい
また、森を守りつつティーフリングも擁護すればさまざまな人物が最後までサポートしてくれるでしょう。
もちろん、プレイヤーの選択はクエストや章ごとに完結せずのちのちまで複雑な影響と変化をおよぼします。AAA タイトルの代名詞にもなっているプレイする映画体験とはちがうインタラクティブな物語や世界観を楽しめるなら本作にもきっとハマれるでしょう。
攻略はどう進めたらいい?
バルダーズ・ゲート 3 は、セミ・オープンワールドマップを採用したターン制戦闘のゲームです。
敵対的 NPC のレベルスケーリングはなし、ランダムスポーンもなし、もちろん無限湧きもなしというゲームデザインを踏まえると、勝てない強敵は後回しにしてほかのクエストを進め、経験値とお金を貯め、装備を整えてから挑んだ方がより快適な旅を楽しめます。
もちろん、出会った NPC を友好敵対問わず片っ端から葬る虐殺プレイもできますが、派閥と敵対状態にはいるとそこの商人やクエストギバーとも戦闘になるので初見ではお勧めしません。
本作のとくに序盤中盤で重要な動きはいかに有利な状況を作ってから戦闘状態にはいるかです。
というのも、たとえば敵の本拠地で戦わなくてはならない場面でも意外とそのリーダーに反目している一派がいたりと、スキルチェック次第では敵の戦力を事前に削いだり裏切らせたりできるからです。
また、Larian の前作 Divinity: Original Sin 2 と同様に本作でもオブジェクトや地表環境の相互作用と立体的な戦闘システムを組んでいるため、高台を陣取る敵のそばに味方を潜ませてから戦闘をはじめたり、火薬や油を事前に撒いて火を付けたりすることで一網打尽にできることもあります。
もちろん、だれとどこまで会話を進めたら強制戦闘に突入するか、有利な位置を守っている射手や術者はどこにいるかなど、事前情報と下準備が多ければ多いほどより有利に戦闘を進められるのでこまめなクイックセーブ&ロードが推奨です。
なんで流行ったの?
なぜでしょうね。
エンドクレジットを最後まで観て驚いたのは、Steam のアーリーアクセス版プレイヤーが 250 万人もいたことです。PS5 専売のファイナルファンタジー 16 の発売後 1 週間の売上本数が 300 万だったことを踏まえるとこの数字はなかなかでしょう。
見過ごされがちですが、欧米圏のいわゆるミレニアル世代や Z 世代では数年前から D&D がブームになっていることがまず理由に挙げられます。それも、日陰者のマイナー趣味ではなくポップカルチャーの中心として。
人気長寿ドラマの Stranger Things や The Big Bang Theory のようにナードカルチャー(欧米版オタク文化)をフィーチャーしたドラマの影響も大きいですが、決定的だったといえるのは 2014 年の D&D 第 5 版への改訂と、2015 年にはじまった Critical Role という TRPG セッションの番組です。
ナード仲間の人気声優が集まった本番組は、3 本目のキャンペーンを開始した 2021 年 10-11 月にはなんと twitch だけで平均同接数 77000 人を記録するなど大盛り上がりしました。
ちなみに、ダンジョンマスターはオーバーウォッチのキャスディ役などで知られるマシュー・マーサーで、個人的に面白かったのは The Last of Us part 2 でエリー役のアシュリー・ジョンソンとアビー役のローラ・ベイリーが揃っていることですね。
Reddit のあるスレッドによると、2000 年代から映画版ロード・オブ・ザ・リングを皮切りに MCU の成功などもあり従来のナードカルチャーとメインストリームの融和が進んだそうです。そして、新型コロナ禍の隔離態勢下でゲーム配信&実況文化が盛りあがり、物理的に顔をあわせずとも仲の良い友だち同士で遊べるものとして D&D の人気に火が付いたとか。
CS:GO のレジェンドでいまは人気配信者の Shroud も数年前には D&D 配信で数万人を集めたことをおもうと、本作の記録的なヒットはなかば約束されていたかもしれませんね。
作品の内実に寄せた話をすると、D&D 第 5 版をだれもが満足にプレイできるデジタルゲームがほかにない事情がまずあります。
ゆいいつの対抗は Tactical Adventures が開発した Solasta: Crown of the Magister ですが、僕の印象としては D&D 第 5 版の忠実な再現という感触が強く、デジタルゲームとしての完成度や説得力の低さからメインストリームでヒットするには物足りなく感じました。
その点、バルダーズ・ゲート 3 は冒頭のムービーシーンにはじまりカットシーンが豊富で、アイソメトリックという斜め上からの見下ろし視点でありながらもカメラの距離次第では擬似 TPS 的な視点でも遊べ、ひとりの CRPG ファンとして「こういうファンタジーが欲しかった!」というかつてない没入感を味わえます。
次節で解説するように CRPG というニッチなサブジャンルには本作に比肩する優れた作品がいくつかあります。
今年発売のものにかぎれば Iron Tower Studio の Colony Ship や Owlcat Games の Warhammer 40000: Rogue Trader がそうで、僕としてはバルダーズ・ゲート 3 を傑作とする評価はまだはやいと感じます。少なくとも Owlcat の前作 Pathfinder: Wrath of the Righteous はすでにこのジャンルで傑作にちかい評判を獲得しており、しかも同名の TRPG 作品である Pathfinder 自体が D&D 第 3.5 版の系譜を引き継いだデザインなのでこの作品の存在はなおさら無視できないでしょう。
とはいえ、バルダーズ・ゲート 3 にあってほかの CRPG 作品にはないと断言できるものもあります。それが AAA 級作品としての説得力です。
今年の GOTY を Alan Wake 2 や BIOHAZARD RE:4 や The Legend of Zelda: Tears of the Kingdom と競ったことからもわかるとおり、メジャー作品と肩をならべるほどには一般ユーザーにも強く訴求する要素が本作にはありました。たとえば、わかりやすくユニークなキャラクターだったり、幅広い客層を惹き付けるオープニングシネマだったり、リッチな戦闘の演出やフォトジェニックな背景デザインだったり。
僕の知るかぎりこのジャンルでメインストリームに届きえたのは近年だと Disco Elysium くらいで、それでもその社会的評価は The Game Award の部門賞をいくつか獲る程度に留まりました。そのため、多くのユーザーには見事 GOTY に輝いた本作がはじめてふれる本格的な CRPG 作品なはずで、このジャンルの最大の特徴ともいえる柔軟な物語展開や作品世界の変化がとても新鮮に映ったことでしょう。
バルダーズ・ゲート 3 がなぜかくも記録的なヒットを叩き出せたか?
僕の考えをまとめると、コロナ禍の厳戒態勢下で醸成された欧米圏での D&D ブー厶を背景に、本作は CRPG というニッチなサブジャンルでは類をみないほどわかりやすい魅力があり、そして、マイナージャンルだからこそ昨今のほかの AAA 級作品とくらべるときわめてユニークなゲームと物語のデザインをしていたからです。
CRPG ってなに?
CRPG は正直にいうと定義が難しい言葉です。
もともとはテーブルトップの RPG を意識した柔軟な物語やプレイヤーキャラクターのカスタマイズ性の高さが特徴のコンピュータ RPG を指しました。1980 年代から 2000 年代初頭に人気を博しましたが、いわゆるコンソール(家庭用ゲーム機)向けの JRPG や ARPG がゲーム市場の急成長を牽引したことで暗黒期を迎えます。
しかし、2010 年代のクラウドファンディングブームにより熱烈なファン層の支援を背に復活を果たします。そのため、僕の認識ではいま CRPG という場合には主流派 RPG へのカウンターとして「オールドスクール」や「クラシック」のニュアンスを含み、それがこのジャンルをわかりづらくしていると考えられます。たとえば、ターン制戦闘だったり、多種多様なステータスとスキルチェックだったり、アイソメトリックだったり、膨大な会話選択と柔軟な物語構造だったりですね。
いくつか代表的な作品を挙げましょう。
まずは CRPG のクラファンブームの代表作といえる InXile entertainment の Wasteland 2 です。
Wasteland はもともと Fallout の精神的前継作とされ、そのオリジナルクリエイターであるブライアン・ファーゴの InXile がかつての制作陣を結集して制作したのがこの作品です。当初は 90 万ドルを最低予算に掲げたクラウドファンディングでしたが最終的に約 300 万ドルの資金調達に成功し、当時のCRPG の潜在的な需要と熱量の高さを示しました。個人的には Razer CEO のタン・ミンリャンも 1 万ドルを寄付して作品内に登場していたのが印象深かったです。
そのあと InXile はマイクロソフト傘下にはいり、ファーゴは 35 年以上のキャリアではじめてゲーム開発だけに集中できるときがきたとして僕が以前批評を書いた Wasteland 3 をリリース。さらには今年、スチームパンク RPG の Clockwork Revolution の制作も発表しました。
次に Obsidian entertainment の Pillars of Eternity です。
Obsidian は Fallout シリーズのオリジナルクリエイターの集まりで、代表作はもちろん Fallout: New Vegas です。しかし、当時は深刻な財政難に直面していたため Baldur's Gate の精神的継承作を謳った本作のクラウドファンディングを敢行。100 万ドルを目標に掲げたプロジェクトでしたが最終的には 400 万ドルを調達し、作品自体のセールスも成功をおさめました。2018 年には続編の Pillars of Eternity: Deadfire を発売して同社のアイコニックなシリーズを打ち立てます。ちなみに先述の Critical Role との無料コラボ DLC までリリースしていますね。
その後の歴史は多くのひとが知っているでしょう。
2018 年には盟友 InXile に先んじてマイクロソフト傘下にはいり、翌年には以前批評を書いた The Outer Worlds をリリースして高い評価を得ました。さらには Grounded に Pentiment と小品ながらもヒット作に恵まれ、目下 The Outer Worlds の続編や Pillars of Eternity とおなじ作品世界を舞台とする Avowed を開発中。逆境をはねのけた Obsidian はいまやヒットメーカーの途を歩んでいます。
もうひとつ、Baldur's Gate の精神的後継作として無視できない重要作があります。それが Owlcat の Pathfinder: Kingmaker です。
Pathfinder とは D&D 第3.5版が第4版へ移行するときにそのゲーム性の簡略化に反発したコア層を中心に立ち上がった今も現役の TRPG です。Kingmaker はそのルールセットと世界観、物語をベースにした作品で、90 万ドルのクラウドファンディングに成功してリリースされました。残念ながら発売直後は技術的問題に悩まされてメディアの評価は伸びませんでしたが、その偏執的ともいえるキャラクタービルドのカスタマイズ性と作品世界の双方向性の高さはファンから熱烈な支持を受けました。
そのおかげか、続編の Pathfinder: Wrath of the Righteous では 200 万ドルの調達に成功していまも DLC の発売が続いています。前作をも上回るボリュームをもって発売された本作は CRPG のあらたな傑作に数えられ、この記事ではこれ以上はふれませんがバルダーズ・ゲート 3 を批評するさいにはかならず比較検討しなくてはならない重要作です。
ほかにも、バルダーズ・ゲートとならぶ古典 Fallout の系譜である The Age of Decadence や、
おなじく ATOM RPG: Post-apocalyptic indie game、
さらには日本国内ではたぶんだれよりも先に僕が紹介記事を書き、奇跡の日本語翻訳により日本国内でもファンの多い Disco Elysium などもありますが、
最後に、バルダーズ・ゲート 3 を語るうえで絶対に外せない作品をもうひとつ紹介させてください。
それが、同開発 Larian による屈指のヒット作で、このニッチなサブジャンルをメインストリームに押し上げる礎となった Divinity: Original Sin 2 です。
2017 年発売の本作はアイソメトリックのターン制戦闘でありながら最大 4 人のマルチプレイに対応し、リッチなヴィジュアルと直感的なビルドシステムで各属性の化学反応や地の利を活かしたタクティカルな戦闘をフィーチャーしています。そのため、ゲームの理解度によってはとれる戦術の幅が最序盤から広く、それにこたえる物語展開の柔軟さもあるのでそのプレイングの懐深さも人気の秘訣でしょう。
D:OS2 はゲームメディアや識者が RPG のオールタイム・ベストによく挙げるほどきわめて世評の高い作品です。それは、日本国内でも知名度が高いだけでなく Switch 版や iOS 版も出てることからもあきらかでしょう。その要因として、直感的なわかりやすさ、フォトジェニックな演出や背景デザイン、リソース管理のいらない戦闘中心のゲームデザインなどが考えられ、そのキャッチーさゆえに CRPG というマイナージャンルの外にも強く訴求できました。
バルダーズ・ゲート 3 はまさに作るべき開発がその実績をもって大きな期待にこたえた作品なのです。
以上見てきたように、本作の大ヒットの背景には CRPG ルネッサンスというニッチなサブジャンルの復活劇があり、D:OS2 というヒット作があり、欧米圏での空前の D&D ブームがあります。僕らには彗星のごとくおもえてもその背後には歴史的文脈と名作怪作が隠れています。
この文章は批評ではないのでこれ以上はふれませんが、バルダーズ・ゲート 3 を評価する、あるいはひとの評価を読むうえでは何と比較し、どのような文脈での評価かが重要です。
少なくとも CRPG 作品としてはおなじくメインストリームへの訴求をねらった Wasteland 3 や、現代の傑作に数えられる Pathfinder: Wrath of the Righteous との比較は避けられないでしょう。
正直な話、TGA の GOTY に輝いた本作といえど、今冬発売の Colony Ship と Warhammer 40000: Rogue Trader はそれより勝るとも劣らない素晴らしい作品なのです。
BG3 はどういう物語?
冒険の舞台はさまざまな怪物がひしめく剣と魔法の中世ヨーロッパ風のファンタジー世界です。
人間はもちろん、エルフやドワーフ、ハーフリングといったメジャーな種族にくわえ、地獄の血脈を継ぐティーフリングや手先が器用で探検好きのノーム、竜の血族であるドラゴンボーンも暮らしています。
さらに、地下のアンダーダークを棲家とする冷酷なドラウ(いわゆるダークエルフ)やドゥエルガル(グレイ・ドワーフ)やスヴァーフネブリン(ディープ・ノーム)にも出会い、ときには対峙を迫られることもあるでしょう。D&D のアイコニックな怪物であるビホルダーの下級種族スペクテイターもたびたびプレイヤーの前に立ちふさがります。
D&D はもともと多元宇宙の世界観で、本作でも「時」の途絶えたアストラル次元や9層地獄の第1階層アヴェルヌスにまで足を踏み入れます。ですが、おもな舞台は物質界である惑星アビア・トーリルのフォーゴトン・レルムであり、フェイルーン大陸西岸のソード・コーストです。
惑星の名前まで覚える必要はありませんが、自分たちがいまいるのがフォーゴトン・レルムのフェイルーン大陸にあるソード・コーストであり、バルダーズ・ゲートとは悪徳と多様性を象徴する有数の港湾商業都市であることを覚えておくとロアも読みやすくなります。
ちなみにこの都市の起源はバルダランという人間の冒険者であり伝説の船乗りですが、まあ、遥か昔のことなのでこれも覚える必要はないでしょう。まさか生きているはずもない歴史上の人物に出会うなんてことは、ね?
さて、本作のオープニングシネマを観てみましょう。
ここでは、あなたのプレイヤーキャラクターを紹介すると同時にその倒すべき敵と背景世界を描写していますが、どこかで見たことのある「あの」種族とおそらく多くのひとが初見の種族の抗争関係に気付いたはずです。本節ではこのふたつの種族を解説しましょう。
まず、クトゥルフ神話から着想を得たイリシッド、通称マインド・フレイヤーです。海外ドラマのストレンジャー・シングスにも登場したので名前は知っているひとも多いかもしれませんね。
「精神を鞭打つ者」を意味するマインド・フレイヤーはその名のとおりサイオニック能力に長けた知性の高い生物で、浮遊艦ノーチロイドを駆って多元宇宙を航海し、ある崇高な目的「グランド・オーダー」のために複数のヒト型種族を飼育する邪悪な種族です。好物はもちろん?ヒト型生物の脳みそ。
次元の来訪者である彼らの居住地はコロニーと呼ばれ、その中枢であり、死んだ彼らの脳を吸収するエルダー・ブレインという集合的意識の精神支配を受けながら生きています。ときおりこの共同体から追放されたり、エルダー・ブレインの支配からなにかの契機に脱したはぐれ者もいるらしく、あなたの冒険でもひょっとしたらどこかで出会うかもしれません。
本作では、プレイヤーキャラクターに得体の知れない「おたまじゃくし」を眼窩から植え付ける衝撃的なシーンで登場します。
この「おたまじゃくし」は宿主の脳にたどり着くと人格や記憶を司る部分を食べ散らかして支配下に置き、やがてマインド・フレイヤーへと変態するセレモルフォシスを惹き起こします。そのため、あなたの冒険の目標はまずこの「おたまじゃくし」にどう対処するかになるでしょう。
マインド・フレイヤーはかつてデーモンやデビルの勢力とならぶ広大な帝国ニヒラスを築いて栄華を誇りましたが、彼らの精神支配に抗する力を身に付けたある奴隷種族の武装蜂起によって帝国は瓦解し、地下世界などに逃れながらも終わりない抗争と陰謀を画策し続けています。
次に、イリシッドの帝国を崩壊に追いやった元奴隷種族のギスヤンキです。オープニングシネマに登場し、レッド・ドラゴンに機乗してマインド・フレイヤーの船を襲撃していた爬虫類みのある種族がそうですね。
シルバーソードとサイオニック能力を操り、厳格なカースト制と軍国主義の社会を形成するギスヤンキはもともとはマインド・フレイヤーから肉体改造を受けた奴隷兵でした。が、長年の戦闘経験によりパワーバランスを徐々に覆してゆき、ギスというカリスマ的な指導者の出現によってついにマインド・フレイヤーの帝国の瓦解に成功します。
しかし、彼らの軛は脱したもののギスはそれで良しとせず、戦争を継続する道を選び、マインド・フレイヤーをひとり残らず駆逐する永遠の征討軍を組織していまにいたります。
ギスヤンキがレッド・ドラゴンを駆るのはドラゴンの女王とその配偶者エフェロモンとの同盟によるものです。ヴラーキスという魔術師のアドバイザーの手によって締結され、それを仲介したアークデヴィルのディスパテルには契約の人質としてギスの魂が渡されました。それからはギスの「遺言」にもとづき、血縁関係のないヴラーキスがギスの後継者としてギスヤンキを率いています。
現在の統治者はリッチ(不死者)として永遠の生を享受するヴラーキス 157 世で、マインド・フレイヤーの精神支配の力を撥ねつける強大な力も有します。あなたの選択次第ではその力をめぐって対峙をもとめられるでしょう。
どんな人物が仲間にいる?
冒険といえばやはり旅の仲間です。
本作ではいかに旅をしながら種族の壁や利害関係を越えた味方をかき集められるか、あるいはその途に死体の山をうず高く積みあげるかが醍醐味とさえいえますが、本節では主人公としても選択できかつ「おたまじゃくし」を植えられた6人の愉快なコンパニオンを紹介しましょう。
レイゼル
初期クラスはファイター。
レイゼルはその種族の例に漏れず、野心的で、排外主義的で、武力による直接的な解決を好み、ギスヤンキの今の指導者たるヴラーキスを崇拝する勇猛果敢な戦士です。彼女は機会さえあればおのれの有能さを組織に証明して昇格し、やがてはヴラーキスによる「アセンション」の栄誉に授かることを夢見ているため、その頑な性急さにあなたは手を焼くかもしれません。
しかし、レイゼルの神経質ともいえる一途さは彼女の若さと盲信の裏返しともいえ、ひょっとしたらある人物との出会いとあなたの選択が彼女の運命を思いもよらぬ方向へ変える、かもしれません。
ゲイル
初期クラスはウィザード。
ゲイルは大賢者エルミンスターの弟子であり、魔法の女神ミストラに愛された天稟の秘術の使い手です。かつてはミストラの恋人で、その力を分け与えられた「選ばれし者」でしたが、若さゆえの驕りかゲイルはそれに飽きたらず、自身のより大きな価値を証明するため「オーブ」という禁じられた古代魔法のエネルギーを解き放ってミストラから見限られてしまいました。
皮肉屋ながらもウィットに富んだおしゃべり好きのゲイルはあなたの冒険のよき伴侶となるでしょう。彼のおなかに居座る「オーブ」が大事な魔法アイテムを食べ続けるのを我慢できるなら、ですが……。
シャドウハート
初期クラスはクレリックで、ドメインは欺きの領域。
ハーフエルフのシャドウハートは、月の女神セルーネイの双子の片割れであり、対極の神として争い続ける闇と喪失の女神シャーを崇拝するカルト集団の献身的なメンバーです。彼女はとある場所から不思議なアーティファクトを盗みだして組織にもちかえる重要な使命の途中でしたが、偶然にもそのアーティファクトが「おたまじゃくし」を通じたマインド・フレイヤーの精神支配からあなたを守ります。
シャドウハートはその聖なる使命のためにそれ以前の記憶をすべて捨て去っています。幼い頃、真夜中の森で巨大なオオカミに襲われたおぼろげな記憶以外は。彼女は何者で、なぜシャーに帰依するようになったのでしょうか。彼女のからだにときおり走る奇妙な痛みがあなたの選択とともにその答えへ導いてくれる、かもしれません。
アスタリオン
初期クラスはローグ。
蠱惑的な魅力を振りまくアスタリオンは数世紀を生きるハイエルフでありながらヴァンパイアの眷属です。もっとも、バルダーズ・ゲートに住まう「本物」のヴァンパイアであるカザドールの下僕であり、アスタリオンの背中には彼の加虐趣味と忌まわしい儀式の傷跡が無数に刻まれています。
カザドールの宮殿から無事に逃げおおせたアスタリオンは不幸にも今度は「おたまじゃくし」の虜囚になってしまいました。しかし、自由のためならどんな犠牲も厭わない彼にとってこれはチャンスかもしれません。自身よりはるかに強力なカザドールとの対決は避けられず、ひょっとしたらマインド・フレイヤーの力があなたの選択次第では助けになる、かもしれません。
ウィル
初期クラスはウォーロックで、契約相手はフィーンド。
バルダーズ・ゲートの高貴な家の嫡男として生まれたウィルはその家柄にたがわず正義心と責任感に溢れる青年でした。しかし、街の指導者である父の不在時に彼の人生は一変します。
ある夜、謎の声に誘われて街の外にでると邪竜ティアマトを召喚しようとする狂信者の一団と出くわします。が、ウィルにはその場で対処するに足る力がありません。すると、突如現れた地獄の血族であるミゾーラが力を分け与えるかわりに魂を引き渡すよう秘密の契約を持ちかけました。バルダーズ・ゲートを愛するウィルにどんな選択がほかに残されていたでしょう?
父が街にもどると、ウィルの秘密の犠牲によって守られた街と邪悪なカンビオンに見初められた愛息子がいました。父の失望とともに追放されたウィルですが、それでも彼の優しさと正義心は失われず、ソード・コーストの庶民を守る「ブレイド・オブ・フロンティア」として、ときにミゾーラの小間使いとして怪物たちを屠り続けています、いつの日か彼女を出し抜き隷属契約を破棄させることをねがって。もちろんそれにはあなたの選択と大いなる代償が必要でしょうが……。
カーラック
初期クラスはバーバリアン。
カーラックはもともとバルダーズ・ゲートの野心家の貴族であるゴータシュ卿の私的な護衛を務めていました。おのれの雇主を尊敬し、命を賭けて守るべき主と見定めるほどには忠誠心の厚いカーラックですが、ある陰謀を画策するゴータシュ卿に裏切られて9層地獄のアヴェルヌスの盟主ザリエルに売り払われてしまいます。
その後、カーラックはインファーナル・エンジンという燃焼機関を身体の内部に組み込む改造手術を施され、デーモンとの果てしなき流血戦争で活躍します。が、自由と陽気さを信条とする彼女にとってアヴェルヌスでの生活は地獄そのもので、ギスヤンキに追われて侵入したマインド・フレイヤーの飛行船を脱出の好機とみて逃げ出します。
「おたまじゃくし」と引き換えに地上の空気と自由を手にしたカーラックは、ザリエルの追手が来ようとも、インファーナル・エンジンに身体が耐えられなくなろうともそれらを手放すことはないでしょう。地獄の熱を身体の芯に宿すがゆえにひと肌にふれられない彼女の孤独をどう理解し、今まさに地上で燃え尽きんとする彼女の宿命をどこへ導くかはあなたの選択次第です。
キャラクター作成はどうしたらいい?
さて、オープニングを楽しむとキャラクター作成の画面にたどり着きます。
キャラクリは RPG の醍醐味ですし、この記事のねらいは攻略情報の提供ではないので基本的な考えかたとわかりづらい部分にしぼって解説しましょう。
ちなみに、オリジンキャラクターを選択すると本来はコンパニオンになる仲間を主人公としてプレイできますが、大部分が固定のプリメイドキャラなので作成が面倒臭いひと以外はカスタムを推奨します。
ただし、最後のダーク・アージだけは特別で、仲間として存在せず、すべての要素をいじれるうえに専用の物語と会話の選択肢も開放できるとてもユニークなオリジンです。その代償としてときどき操作不能になるそうですが……。
能力修正値
本作を攻略するうえで重要な要素がふたつあります。それが、ターン制戦闘と能力値判定です。
前者は書いて字のとおりですが、後者は冒険上のさまざまな気付きや試みの成否をきめるダイスロールを指します。ビルドを組むうえでこれを軽視すると自分の望むようには物語を進められないので注意しましょう。
基本の能力値は以下の 6 種類です。
まず、キャラクリでいちばん気を付けてほしいのはこれらの能力値の数字がそのまま扱われるわけではないことです。実際のプレイングでは 10 を基準 = 0 とした場合の 2 の倍数ごとに切り捨てられた数字が扱われます。これを能力修正値といいます。
たとえば【筋力】16 と17 はどちらもおなじ能力修正値 +3 ですし、8 と 9 はどちらも −2 として扱われます。そのため、最大レベルの 12 到達時にどれも偶数になる割り振りがもっとも無駄が少ない配分といえるでしょう。
難しいのは、最初のレベル 1 のキャラクリ画面では能力値を最大 17 にしかできないこと、そして、能力値を本編中で恒久的にあげる手段はきわめて少なく、おもにはクラスレベル 4、8、12 到達時の特技/能力値上昇にかぎられることです。
特技/能力値上昇とは、ユニークな特技のなかからひとつを習得するか、あるいは特定の能力値ひとつを +2 するか能力値ふたつを +1 するもの。
そのため、たとえば僕がバーバリアンを作成するなら以下の画像のようにします。こうすることでレベル 4 の能力値上昇で【筋力】を 18 に、【耐久力】を 16 にし、次の能力値上昇を【筋力】に振ることで最大値 20 にできます。
もっとも、本作ではかなり早くからステータスを振り直せるので最初にあまり悩みすぎないのも大事です。お金はかかりますが、窃盗の〈手先の早業〉が成功するまで根気よくダイスを振り続ければリスペック費用を回収できるので実質無料でいつでもやり直せます。
さしあたり、最初は「伸ばしたい能力値ふたつを奇数にし、レベル 4 の能力値向上でそれらを偶数にする」とだけ覚えればじゅうぶんでしょう。
能力値と戦闘
では、能力修正値について理解したところで次にそれぞれの能力が何に関わるか見ていきます。
まずは戦闘面から。
・武器攻撃
【筋力】は近接武器攻撃の攻撃ロールとダメージロールに関わります。ここではさしあたり、【筋力】修正値が高いほど近接武器の攻撃が当たりやすくダメージの期待値が高い、とだけ覚えておきましょう。
ただし、例外として ”妙技” 特性の近接武器、たとえばダガーやシミターやショートソードなどは【敏捷力】修正値でもスケーリングします。かんたんにいえば重い武器は【筋力】だけで、軽い武器は【敏捷力】でも振れるわけですね。
ちなみに弓やクロスボウなどの遠隔武器攻撃は【敏捷力】修正値が適用されます。
そのため、キャラクターを作成する際にはまず「武器と呪文のどちらがメインか」「武器で戦うなら【筋力】と【敏捷力】のどちらがベースか」を考えましょう。とくに【筋力】はほかに関わる重要な要素が装備重量と運搬量ぐらいなので【敏捷力】ベースの二刀流や射手なら思い切って下げるのもありです。
・アーマークラス
【敏捷力】はさまざまな重要な要素に絡むので【耐久力】とならぶどのクラスでも大事な能力値といって差支えありません。
とくに大事なのが AC(アーマークラス)です。
AC とは防御力+回避力のような概念で、重装備をガチガチに着込んだキャラも軽装鎧のみを着た俊敏なキャラもおなじ高 AC として扱われます。システム的にいうと、攻撃ロールがこれを越えることを目標としたダイスロールなため、AC が高ければ高いほど攻撃を当てられにくいことになります。
AC はまず 10 を基準値とし、それに鎧の数値を足し、【敏捷力】修正値を足すことで算出されます。
ただし【敏捷力】修正値の加算ぶんには鎧の種類ごとに制限があり、軽装鎧は無制限、中装鎧は +2 まで、重装鎧は 0 となっています。そのため、重装鎧を着れるキャラが高い【敏捷力】をもつメリットは AC 的には薄いですし、反対に、軽装鎧しか着れないキャラの【敏捷力】が低いと心許ないでしょう。
そのため、ダガーや弓などの妙技武器や遠隔武器を使用するキャラ以外で【敏捷力】をどの程度上げるべきかはそのままどの種類の鎧を着るかで決まります。軽装鎧なら高ければ高いに越したことはないですし、中装鎧なら 14 まで、重装鎧なら最低限 10 あれば AC 的には及第点です。
ちなみにどのキャラがどの種類の鎧を着れるかは習熟次第ですがこれはあとで解説します。
・イニシアチブ
【敏捷力】はまたイニシアチブにも関わります。
つまり、【敏捷力】修正値が高ければ高いほど戦闘開始時に自分のターンがより早くまわってくる期待値が高いということ。当然、敵より先にターンを得られれば相手が動くまえに頭数を減らしたり厄介な術者や射手を潰せるので重要な要素です。
ほかにも【敏捷力】がどのキャラにも重要な理由がもうひとつありますが、さしあたり AC と鎧の種類との関係を理解してもらえれば十分です。
・ヒットポイント
【耐久力】はヒットポイントに関わるのでどのクラスでも重要です。もちろん、高ければ高いに越したことがないのはいうまでもありませんね。
ヒットポイントの算出はまずクラスの種類とレベルがベースです。
たとえば、バーバリアンは 12 HP で開始してレベルアップごとに 7 HP 増えますし、ウィザードやソーサラーは 6 HP で開始して 4 HP ずつ増えます。【耐久力】修正値はそのレベル毎に加算。つまり、【耐久力】15 のバーバリアンであれば 14 HP で開始して 9 HP ずつ増えるということ。ちなみに【耐久力】が変動した場合はその都度再計算されます。
【耐久力】をどの程度伸ばすかは好みです。
参考程度に僕の経験をいうなら、難易度タクティシャンでプレイしたかぎり前衛キャラは “最終的に”【耐久力】14 は欲しい感じでした。高 AC キャラでもわりと攻撃を当てられやすく、後衛も狙われやすいので、能力値の割り振りに悩んだらとりあえず【耐久力】に振ればいいでしょう。
・呪文発動能力
最後に呪文発動です。
公称 600 を越える本作の呪文ですが、そのレベルや効果はもちろん、射程や範囲や持続時間などさまざまな要素があります。ですが、キャラを作成するうえでとりあえず覚えてほしいのが呪文発動能力のちがいです。
呪文発動能力とはそのキャラがどの能力値を使って呪文を唱えるかのこと。これはクラスごとに決められており、換言すれば、術者が【知力】【判断力】【魅力】のうちどれを伸ばせばいいかはクラス次第ということ。たとえば、学究の研鑽によるウィザードは【知性】、信仰の力によるクレリックは【判断力】、血筋や才能によるソーサラーは【魅力】というふうに。
呪文発動能力の修正値は武器攻撃とおなじように呪文の攻撃ロールとダメージロールに加算されます。また、DC と略される難易度クラスにも適用されることもここで覚えておきましょう。
たとえば、あなたのバードが心術「ターシャの抱腹絶倒」を敵のゴブリンに唱えるとします。「ターシャの抱腹絶倒」とは、単体の対象を笑い転げさせて一定時間身動きをとれなくさせる低レベルながら強力な呪文です。
ただし、唱えた相手はかならずそうなるのではなく、セーヴィング・スローと呼ばれる特定の状況や魔法に抵抗するためのダイスロールをおこない、対象がこれに成功すれば回避、失敗すれば呪文がかかった状態に陥ります。そのさいの成否をきめる目標の値こそが DC という難易度クラスで、呪文発動能力の修正値もこれに加算されます。
ひらたくいうと、呪文発動能力が高ければ高いほど、呪文の威力が増し、相手をたやすく呪文に掛けられるということですね。そのため、術者キャラを作る場合にはそのクラスの呪文発動能力がどれなのかに注意しましょう。
ちなみにセーヴィング・スローは、戦闘中の呪文だけでなく、罠や毒や地表の滑りやすさなどでもその効果を回避する成否の判定として探索中にも求められます。
とくに、俊敏さを要求する【敏捷力】と体の頑健さを要求する【耐久力】、精神の強さを要求する【判断力】は重要なセーヴィング・スローが多いので、これらの能力値を不必要に下げたキャラ作成はあまりお勧めしません。
能力値と技能
今度は戦闘だけでなく探索面の要素も見ましょう。
各能力値にはそれぞれに対応した技能が紐付いています。
これらは、キャラクターが特定のアクションを試みたり、特定の場所であたらしい情報を得たり、特定の NPC とのユニークな会話としてダイスロールとともに機能します。
たとえば、〈手先の早業〉が得意なキャラはそれだけ罠の解除や錠前破りや窃盗に成功しやすく、反対にこれが苦手なキャラはよほど運が良くないと、つまり、20 面ダイスを振って 20 を出すクリティカルな成功をしないと宝箱を開けたり貴重品を盗むことができません。
また、〈知覚〉に長けたキャラがパーティーにいれば敵の待ち伏せを察知したり秘密の隠し扉にも気付けますし、〈説得〉が得意であればおもわぬ人物と共闘できることもあるでしょう。
キャラクターのどの技能を高め、どの技能を切り捨てるかが攻略とロールプレイの根幹であり、その判定のダイスの目があなたの物語を紡ぐのです。
当然、これらの技能の大元にある能力修正値はそれぞれのダイスロールに加算されますが、それよりも重要なのが技能の習熟です。
本作において特定の装備や技能やアクションに得意なことを意味する習熟というシステムはやや多義的でわかりづらいです。本記事ではキャラ作成に関わるふたつの習熟、すなわち技能と装備の習熟にしぼって解説しましょう。
以下の画像は、キャラ作成の能力値の割り振りから遷移できる技能選択の画面です。
本作はいわゆる D&D ミリしらでも遊べるように能力値と技能は自動配分されますが、攻略やロールプレイにこだわるならぜひ自分の手でさわてみたいところ。
そして、最初のキャラ作成時の習熟に関わるのは、クラス、種族、背景の 3 つです。
クラス選択
キャラ作成におけるクラス選択はいうまでもなくもっとも重要な要素です。
クラスパスを歩むなかでの細々とした選択はサブクラスを除けばさほどないので、キャラの成長や技能や身に付けられる装備の幅のほとんどが最初のクラス選択で決まります。全 12 クラス、全 42 サブクラスの選択に 11 の種族と 12 の背景を組み合わせることをおもうとその膨大さに圧倒されますが、本作のビルドの基本的な考え方と自由度の幅をおさえるとさほど悩まずに済みます。
その要諦を書きましょう。
・クラスは好きなものを選ぼう
各クラスのこまかい特徴の紹介、さらにはその成長の分岐と軌跡は次節に譲りますが、本作のキャラクリでいちばん大事なことは愛着をもてるキャラを作ることです。というのも、本作のプレイ時間は 100 時間、あるいは 150 時間が想定されるので、思い入れのないものをプレイヤーキャラクターにするとシンプルに辛いです。
もちろん、クラスとして難易度の高いもの、低いもの、戦闘に強いもの、弱いもの、プレイヤーキャラクターとして便利なものなどの違いはありますが、本作はいかに最強キャラを作るかではなくその人物固有の冒険を楽しむかに主眼があるのでなによりもまず愛着をもてるキャラ作成を推奨します。
・得意な能力値を理解しよう
クラスが決まるとそのキャラの得意な能力値とその伸ばし方が決まります。
たとえば、初心者向けの術者クラスであるウィザードは呪文発動能力が【知性】なためこれがいちばん高くなるようにポイントを割り振るのが定石です。あとの能力値は正直要らないので、残りは防御面を考慮して AC 用の【敏捷力】とヒットポイント用の【耐久力】に振るのが無難でしょう。
反対に、ウィザードとちがって複数の能力値を上げたいクラスは中級者向けといえます。たとえば、ハイブリット職のバードでは呪文発動能力用の【魅力】も武器攻撃用の【敏捷力】も大事なため、どちらを優先するかはプレイヤーの好みと創意工夫によります。
また、【判断力】をはじめ【敏捷力】と【耐久力】さらには【筋力】まで必要な型もあるモンクは上級者向けといえ、ビルドの知識だけでなく装備や消費アイテムもふくめたゲーム理解度が難易度次第ではもとめられます。
いずれにせよ、クラス選択により得意な能力値と要らない能力値が決まり、そして、クラスによってはどれをいちばん高くするかの型のイメージがここで決まります。わからなかったり面倒であればとりあえず自動割り振りのままはじめてもかまいません。
・技能と装備の習熟を知ろう
クラスが決まり、さらに能力値の割り振りまで済むと残りは習熟だけです。
詳細は次節に譲りますが、各クラスごとに習熟を得られる技能と装備もほかの種族や背景と同様に決まっています。まあ、クラス選択を変えるほどに影響力のある部分ではないのでそういうものだと割り切ってください。好きなクラスを選ぶことがいちばん大事なので神経質になる必要はありません。
優先的に理解したい習熟は鎧です。
とくに、ファイターとパラディンとクレリック(ただし、サブクラスが嵐と戦と自然と生命の領域のみ)は重装鎧の習熟を得られ、【敏捷力】の伸ばし方にも影響するので注意してください。
種族選択
・種族も好きなものを選ぼう
はい、好きな種族を選んで顔と体型を好きなだけいじりましょう。
本作はアイソメトリックという斜め上からの見下ろし視点の作品ですが、カメラの距離感を工夫すると TPS にちかい感触で探索できますし、会話中の顔のアップやカットシーンも豊富なので容姿も納得できるまで作り込むことを勧めます。
もちろん、クラスと同様に種族にもいくつかの特徴と習熟の違いがありますが、容姿の基本的なコンセプトはプレイ感に大きな影響を与えるのであまり難しく考えないでいいかなと個人的には思います。
もし、ステータス面での種族の違いを気にするとしたら固有の特徴、移動速度、技能の習熟、武器の習熟などですね。武器攻撃が主体のキャラを想定しているなら単純武器と軍用武器の習熟があればどの武器も装備可能なので困ることはないでしょう。
背景選択
・背景選択で調整しよう
次に、自分が想像するそのキャラの個性にあった背景を選択しましょう。
本作の背景システムとは、キャラクターにふたつの技能習熟をあたえるとともに、特定の場面で特定の行動をとると能力値判定の失敗をやり直せるインスピレーションポイントが得られるもの。若干の経験値ももらえますが、最大4スタックできるこのインスピレーションが探索や会話をスムーズにするので結構重要な仕組みです。
たとえば、アスタリオンの背景は〈ペテン〉と〈手先の早業〉に習熟を得られるイカサマ師ですが、彼がパーティーにいるときに NPC を騙したり出し抜いたりするとインスピレーションが得られます。
そのため、プレイヤーキャラクターの背景選択はできるだけ能力値にあったものを選んだり、クラスや種族で得られなかったけど伸ばしたい技能にするといいでしょう。
もちろん、自分の頭のなかでより凝ったロールプレイをするためのネタに使うこともできます。
技能の習熟選択
・技能の習熟を決めよう
最後に、能力値の割り振りから技能の画面に移動して最終的にどのクラス習熟を得るかを決めます。
好きにしてもいいですが、4 人パーティーのなかに〈知覚〉と〈説得〉と〈手先の早技〉にそれぞれ長けたキャラクターがいると探索が便利でかつ物語を望むように進めやすいことは覚えておいて損はないでしょう。
余談ですが 3 年前のアーリアクセス版開始当初に書いたキャラメイク記事を供養として置いておきます。
種族も大幅にふえましたし、メカニクスではかなり易化遊びやすくなったので鵜呑みにしないでください。あくまで「こんなかわいい子もイケおじも作れたよ」という過去の容姿づくりのサンプル集です。
クラスはどんなのがある?
それではお待ちかね?のクラス紹介です。
ちなみに、バルダーズ・ゲート 3 の全クラス解説はすでに個人ブログで完走しています。本作ではクラスパスの UI が酷くわかりづらいミリしらでも遊べるようにふわっとしているので、そのクラスがどう成長してどこへ分岐してどういう強みがあるか詳しく知りたい方はリンク先の記事をお読みください。
ここでは、カンタンな紹介と伸ばすべき能力値、いくつかの違いを記すに留めます。
バーバリアン
バーバリアンは肉を切らせて骨を断つを地でゆく武器攻撃メインの戦士職。
固有能力の激怒によるダメージ上昇と耐性強化、さらに捨て身の攻撃による安定した命中率が強みで、うまく育てるとタンクもダメージディーラーも任せられる前衛の要になるでしょう。
サブクラスにはトーテム戦士と狂戦士と荒ぶる魔力があり、それぞれが激怒の効果をちがったかたちで強化できるので脳筋のイメージとは裏腹にテクニカルな幅と深みもあるのがこのクラス。
バード
バードは探索も戦闘も呪文も武器も攻撃もサポートもなんでも器用にこなすハイブリッド職。いわゆる吟遊詩人。
クラスの都合上【魅力】と【敏捷力】を伸ばすことに利点があるため探索中の能力値判定に滅法強い。また、なんでも屋の効果で習熟していない技能にも習熟ボーナスの半分を得られるためとりあえず NPC と会話したりオブジェクトにさわるのに向きます。
サブクラスには知の学派と勇の学派と剣の学派があり、それぞれ術者寄り、タンク寄り、武器攻撃寄りにできます。ハイブリッド職なため育てるのにやや癖がありますがプレイヤーキャラクターとしてその見返りも大きいのがこのクラス。
クレリック
クレリックは仲間を助けることに長けた王道のサポート職。
回復兼バフ役でありながらもクレリック呪文には有用な範囲攻撃呪文も召喚呪文もそろっているので戦闘中でもその場で対応できるのが強み。また、豊富なサブクラスには重装鎧の習熟を得られるのもあるので盾とあわせてタンク役も任せられるでしょう。
サブクラスには、欺きの領域、嵐の領域、戦の領域、自然の領域、生命の領域、知識の領域、光の領域の 7 種類があり、リスペック前提ですがパーティーの穴をうまく補いやすいのがこのークラス。
ファイター
ファイターは武器攻撃に欲しいものが全てそろった王道の戦士職。
固有能力の怒涛のアクションにより小休憩に 1 度追加のアクションをおこなえるうえ、レベル 11 の追加の追加攻撃(つまり常時 3 回武器攻撃できる)で最大 6 回も殴れるのが強み。お前は何回敵を殴れば気が済むんだ。すべての装備の習熟を得られるのも偉いです。
サブクラスは、戦術的に動けるバトルマスターとクリティカルをやや出しやすいチャンピオンと簡単な呪文も使えるエルドリッチ・ナイトがあります。成長途上での選択肢は少ないながらも雑に強くなれるのがこのクラス。
ドルイド
ドルイドはサポート職でありながら動物に変身しても戦えるユニーク職。
自然の化身でなれる野獣にはアウルベアやパンサーなども含まれるため容姿のかわいさと戦闘能力の高さが強み。クレリックと比べると呪文にやや癖のあるものが多いですが、それを補ってあまりあるほどユニークというほかない魅力にあふれています。
サブクラスは、土地の円環と月の円環と胞子の円環で、それぞれ術者寄りに、野獣寄りに、死霊術師寄りにできます。本作をやるからにはとにかくいち度はアウルベアに変身してフライングボディプレスをキメてほしいのがこのクラス。
モンク
モンクは先陣を切って敵を潰しにいく自己完結型の戦士職。
攻撃回数の多さ、移動速度のはやさ、朦朧拳によるスタンと、範囲攻撃以外のすべてを手にしたピンポイントな殲滅力が強み。専用装備も豊富で、その挑戦しがいにみあった強さが最終的には保証されますが、気の量の少ない序盤をどう切り抜けるかが勝負になるでしょうか。
サブクラスは、四大門と開手門と暗影門で、それぞれ術者寄りに、素手攻撃特化に、忍者?寄りにできます。雑魚をグーパンで蹴散らし、厄介な敵を朦朧拳で黙らせると最高に気持ちいいのがこのクラス。
パラディン
パラディンは味方をサポートしつつ盾も張りつつ武器攻撃で火力もだすハイブリッド職。最強か?
神聖なる一撃という固有能力により、近接攻撃のヒット時に呪文スロットを消費してそのレベルに応じた追加ダメージを与えるのが強み。とくに、ソーサラーを育てながらいい感じにパラディンとマルチクラスをした通称ソーサディンの圧倒的火力はあまりに有名。すべての装備習熟を得られるのも偉い。
サブクラスは、古き者の誓いと献身の誓いと復讐の誓いで、それぞれで教義がことなり、教えに反する行動をとり続けると特別なイベントが起こる、らしい。
レンジャー
レンジャーはサブクラスが特徴的なハイブリッド職。
基本のクラスパスでは探索を重視した成長を経ながらもサブクラスで唯一無二の個性を発揮できるのが強み。とくに、ビースト・マスターは本作でゆいいつアニマルコンパニオンをもてるので動物が好きなひとにはお勧めです。Larian の動物愛を信じろ。
ほかのサブクラスでは、奇襲特化のグルーム・ストーカーと武器での範囲攻撃を覚えるハンターがあります。複数の技能習熟を追加で得ることで戦闘だけでなく探索にも長けるのがこのクラス。
ローグ
ローグは探索を得意としながらも急所攻撃が魅力の戦士職。
バードと勝るとも劣らない技能習熟の豊富さとボーナス量にくわえ、急所攻撃ができる一定条件下では高い瞬間火力を誇れるのが強み。ただし、ほかの武器攻撃が主体のクラスとちがって追加攻撃を覚えないのでより戦闘で輝かせたいならマルチクラスがお勧め。
サブクラスは、シーフ、アーケイン・トリックスター、アサシンで、それぞれに固有の強みがあります。いずれもテクニカルな動きやビルドで輝くのであなたの深いゲーム理解度にしっかり応えてくれるのがこのクラス。
ソーサラー
ソーサラーは呪文発動を強化することに長けた術者職。
魔力修正という固有能力により、いま唱える呪文をより強力に、より素早く、より便利にできるのが強み。ウィザードと対を成しますが、ソーサラーの方が成長と戦闘のなかで数多くの選択をもとめられるのが大きな違いです。そのぶんビルドとタクティカルな戦闘の愉しさを味わえるでしょう。
サブクラスは、荒ぶる魔法と竜の血脈と嵐の魔法で、それぞれ呪文発動にランダムな追加効果を、任意のダメージタイプの呪文に強化を、電撃と雷鳴の呪文に特化するというもの。術者として丹念に成長と戦闘をさせたいひと向けなのがこのクラス。
ウォーロック
ウォーロックは忌まわしき存在と契約を交わしたハイブリッド職。いわゆる黒魔術師。
専用呪文の「怪光線」を強化しながら「呪い」を使いこなすことで序盤から終盤まで大活躍できます。ただし、ウィザードやソーサラーと比べると修得できる呪文の幅も唱えられる呪文の数も少ないのは武器攻撃もできるハイブリッド職のかなしい性。
サブクラスは、契約相手のフィーンドとグレート・オールド・ワンとアーチフェイがあり、さらに使い魔を召喚できる鎖の契約、武器攻撃を強化できる剣の契約、呪文特化の書の契約と、闇の雰囲気だけでなく拡張性も高いのがこのクラス。
ウィザード
ウィザードは呪文の継戦能力と使いやすさに長けた王道の術者職。
冒険中に入手した巻物からもさまざまな呪文を覚えられるうえ、秘術回復という固有能力により休憩せずとも呪文スロットを回復して息切れしにくいのが強み。また、成長するなかでもとめられる選択もサブクラスぐらいなので初心者でも気軽に遊べます。
サブクラスは、防衛術、召喚術、占術、心術、力術、幻術、死霊術、変成術の 8 種類。とりあえずいろいろな呪文を使ってみるところからはじめたいひと向けなのがこのクラス。
最低限の攻略 Tips
(必要を感じたら随時更新します)
呪文はどうやって覚えるの?
クラスによって準備呪文と修得呪文の違いがあります。
ウィザードやクレリックは、レベルアップ時にあたらしい呪文をまとめて覚えてから非戦闘時にそのいくつかを選んで使用可能にします。一方、ソーサラーやウォーロックは、レベルアップ時にあたらしい呪文を少しずつ修得し、また、すでに覚えた呪文を新しいものと交換することで使用可能な呪文プールを強くできます。
そのため、前者のグループの方がとりあえず色々な呪文を使ってみることに向いているので初心者向けです。
ちなみにウィザードは巻物とお金を消費してリストにない呪文も覚えられるので便利。
呪文が途切れるのはなんで?
【耐久力】の精神集中判定に失敗したからです。
一定時間維持する呪文を使うことが多いキャラクターには特技「戦場の術者」をとらせましょう。
お勧めの呪文を教えて!
初級呪文の「導き」と儀式呪文の「跳躍」です。
前者は能力値判定に 1 から 4 のボーナスを追加して成功率を高め、後者はキャラクターの跳躍距離を 3 倍にすることで一見届かない足場も渡れるようにします。いずれも呪文スロットを消費することなく唱えられるので探索には欠かせないお供です。
戦闘に強い呪文はいろいろあるのでぜひご自身で試すことを楽しんでください。
大休憩は気軽にとってもいい?
だいじょうぶです。
主人公たちはある事情でそうかんたんには精神支配に屈しませんし、キャンプの食糧も枯渇するほど制限されていないのであまり戦略的なマネジメントは気にしないでいい、はずです。
ただし、急がないと「〇〇の命が!」みたいな場面では大休憩にも結果がついてまわりますし、クエスト進行度によっては遭遇するまえに結果が付いてしまうイベントもあります。
……周回しよう!!
敵がどうしても倒せません!
本作の戦闘のコツは、戦闘前にしっかり探索すること、命中率を重視すること、ボーナスアクションを腐らせないことです。
まず、本作はクエストの課題にさまざまな解決手段とそれに応じた結果の違いが用意されているのが特徴です。一見すると多勢に無勢におもえても、秘密の抜け道があったり、敵の寝返りを誘えたり、オブジェクトを操作することで大ダメージが狙えたりするので敵が強いと感じたならその場に利用できるものがないか探してみましょう。
また、実際の戦闘では命中率がものをいいます。自分の攻撃が当たらなさすぎると感じたなら、習熟のない武器を握っていたり得意でない能力値で攻撃しているかもしれません。敵の攻撃が当たりすぎるならまず自分の装備と AC を見直しましょう。
そして、ボーナスアクションの使い方が大事です。ポーションを飲んだり、武器にオイルを塗ったり、あるいは特別な呪文を使用したり。ボーナスアクション消費型の行動はそれだけでお得なので意識してみてください。
あと、こまめなクイックセーブは大事。
マルチクラスはした方がいい?
どちらでもいいです。クラスを組み合わせる面白さや強さを目指したいなら検討しましょう。
マルチクラスは、
クラスパスの後半からの成長があまり期待できない
特定のクラス間にシナジーがある
ふたつめのクラスが低レベルで有用な能力を覚える
などの条件が重なることで効力を発揮します。とくに、呪文のレベルやスロット数に縛られない武器攻撃主体のクラスはマルチを検討しやすいですね。
ただし、ひとつひとつのクラスレベルが低くなること、レベル 4 の倍数にしないと特技/能力値上昇の機会が少なくなることに注意しましょう。
マルチ先の定番は、ファイター(怒涛のアクション)、シーフ(急所攻撃&ボーナスアクション追加)、パラディン(神聖なる一撃)、バーバリアン(激怒)、ソーサラー(呪文修正)などでしょうか。
どのクラスもレベル 5 か 6 で大幅に強くなるので中盤までは素直に育ててゲーム理解度を深めることをお勧めします。
今のビルドをやり直したい!
だれとはいいませんがキャンプでリスペックおじさんに話しかけましょう。
で、BG3 は買いなの?評価は?
結論からいうと "買い" です。
ただし、プレイ時間をしっかり確保できるひと、RPG を考えたいひとにはお勧めですが、細切れな時間しかなかったりゲーム理解度を深めるのが面倒なひとには向いていないでしょう。
とくに、本作は没入感の高さが強みですが、一方でクラス関連の UI が不親切だったりインベントリ管理が不便だったりこまかいバグも多かったりと、多くのひとが期待するほど完璧ではありません。
また、ゲーム性自体もしっかりと時間をかけて探索して会話してスキルチェックを成功させたぶんだけ戦闘も物語も楽しくなるものなので、あわないひとはとことんあわないかもしれませんね。なので、世界観に惹かれたとか、コンパニオンがえちえちすぎるとか、ゲームデザインが気になるとか、プレイ動機がはっきりあるなら楽しめるはず。「GOTY だしとりあえずさわっとくか……」ぐらいのひとは覚悟しておいた方がいいかも。
さて、僕自身はというと実は本作を大絶賛する見方からは一貫して距離をとっています。
CRPG の文脈として考えると、ビルドシステムは不便なわりに味気なく、旅の戦略的要素の薄さから攻略の歯ごたえも薄く、ターン制戦闘も大味なためいくつかの戦術的要素が死んでいます。
とはいえ、メインストリームの文脈で考えると、キャラクターの魅力も物語の展開もエンターテイメントとしては掛け値なしに面白く、なにより、ここまで課題解決の手段に自由度があり、それぞれに固有の結果がともなう RPG が商業的成功をおさめたのは歴史上の快挙というほかありません。
そのため、バルダーズ・ゲート 3 はどういう文脈で、どんな作品と比べるかで評価が変わります。
今冬発売した Colony Ship と Warhammer 40000: Rogue Trader をプレイしたうえで、本作と正面から向きあった批評を来年中に書きましょうかね。
最後に、3 万字超の解説記事をここまで読み通したあなたへ。
バルダーズ・ゲート 3 をプレイし、RPG を語ることで、メインストリームの世界に本作がどのような影響と変革をもたらすかともに見届けましょう。
未来の作品制作に僕らの批評はすでに参加しているのですから。
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