【エッセイ】風の匂い
末の息子が中学2年になった日の朝、台所でパンを焼いていた私は部屋から出てきた息子の顔を見て驚いた。
眠そうな声で、「おはよう」と言う息子の顔をもう一度見る。
左の瞼が殴られたボクサーのように赤く腫れ、垂れ下がっているではないか。
「目、痛そうやな」
息子に声をかけながら、両掌で顔を挟み親指で眉毛を上げてみた。まつ毛の生え際に大きく熟れたニキビのようなものもらいができている。指の背で触ると熱かった。
「えらいこっちゃ、病院行こ」
私は学校に休む連絡を入れ、息子と自転車で眼科に向