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「忘れてはいけないよ」

でも忘れなければ辛い

「笑ってはいけないよ」

でも笑ってくれなきゃ痛い


今は亡き父の通夜

はしゃいでいたのは年端もいかない女の子

顔も名前も知らない親戚の子


どうしてみんな静かなの?と聞いて回り

お腹が空いたと走って回り

おかずの予想をいきなり始めた

何も言わず頷くばかりの母と

苦笑いのその子の親と

何度注意してもポケモンの歌をやめない


明日から笑えるだろうかと

思ってたのに

画用紙に描き殴ったぐしゃぐしゃのお花畑に

救われた

アンパンマンのはみ出した眉に

救われた


灰を被った忘却の

遥か先端の尻尾の方で

気持ちの取扱い説明書が落ちている

正しい使い方が書いてある


何度も何度も救われた

だからいつか伝える

ありがとうと

その日のことを想う

あなたの戸惑う顔さえも

想像出来てしまうから


「忘れてはいけないよ」

わかってる

忘れたくても忘れられないから


「笑ってはいけないよ」

わかってる

次は私から先に笑う

説明書の文言に従って


・・・・・・・・・・・・

お読みいただきありがとうございます。原爆の日に寄せて。




読んでいただき、ありがとうございます。 ほとんどの詩の舞台は私が住んでる町、安曇野です。 普段作ってるお菓子と同じく、小さな気持ちを大切にしながら、ちょっとだけ美味しい気持ちになれる、そんな詩が書けたらなと思っています。