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Bayerische Staatsoper 30.10.23 オペラの記録:バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)、モーツァルト《フィガロの結婚》新制作

10月30日、バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)、今シーズン最初の新制作、モーツァルト《フィガロの結婚》プレミエを観ました。
今年3月以降、《フィガロの結婚》の新制作を観るのはこれが4つ目です。

プログラム。

オーケストラ・ピットはかなり浅い。

ホルンやトランペットをご覧ください。これで、管弦楽はピリオド奏法だということがわかり、かなり気分が上がります。

指揮者のモンタナーリは最初、バロック・ヴァイオリンの奏者として名前が出ました。ピアノも弾きます。このフォルテピアノはJ.C.Neupert 社の製作です。


私は『音楽の友』誌の海外レポート欄「ドイツ」に執筆しています。この《フィガロの結婚》もとりあげる予定ですが、同誌に掲載されるのはずっと後になります。
この《フィガロの結婚》新制作については、書くことがたくさんあるのですが、『音楽の友』誌とここで書く内容との重複は避けたいと思っています。
一方で、プリント・メディアでは十分なスペースが取れないこと、写真も全体で1枚しか掲載できません。

これまでもこの点で苦労しており、それにお気づきで指摘、理解してくださる方もたくさんいらっしゃいます。

しかし、批評等についてはたとえ分量が短くとも『音楽の友』誌をご覧いただきたく、ここでは劇場から提供された写真をもとに、少しだけ説明をするに留めたいと思います。
「少しだけ」というのも、あまり説明をすると、見る人の想像力と理解の妨げになるかもしれないからです。

一言だけ書くと、これまで《フィガロの結婚》の多数の制作、上演に接してきましたが、音楽的にここまで大胆で面白く、発見に富んだものはありませんでした。
これも指揮者は当然ながら、〈最優秀オペラ・オーケストラ〉に今年も選ばれたバイエルン州立管(11回目)の演奏能力の高さとモチヴェーションのおかげです。
演出は賛否両論あると思いますが、私自身はポジティヴにとらえています。

できることなら、ぜひ、実演に接していただきたいと思います。

上記FOTO:(c)Kishi


以下の写真は劇場提供です。© Wilfried Hösl

第1幕。左は花嫁用のベールを手にするフィガロ、右はアルマヴィーヴァ伯爵。
この玉座、サドマゾ用(?)の椅子で真ん中が割れると、下から数本のぐるぐる回る男性器のモデルが出現しました。観客席からは大笑いが。


第1幕。フィガロの〈もう飛ぶまいぞ〉のシーン。この直前にケルビーノはフィガロからバリカンで丸坊主にされます。
フィガロはボーマルシェの三部作の最初《セヴィリヤの理髪師》では理髪師でした。


第2幕。ケルビーノが〈恋とはどんなものかしら?〉を歌うシーン。
真ん中はスザンナ、右は伯爵夫人。
伯爵夫人の足元には化粧ボックスが見えます。
理髪師だったフィガロがやってきて、伯爵夫人の髪を整える演出がありました(そこではR.シュトラウス《バラの騎士》との関連性が思い浮かびました)。
また、そのシーンではヘアアイロンから煙が出、「宝塚のヘアアイロン事件」を思ってしまいました。これは、ドイツで報道されているわけではないし、フィガロが伯爵夫人をいじめているわけではないのですが。

伯爵夫人に飛び掛かるケルビーノ。


第4幕。
左から机の下に隠れているフィガロ、スザンナ、マスクを被る伯爵夫人。
後ろは庭園というよりカンナビス(大麻、マリファナ)の栽培室。
ちなみに、ドイツではカンナビスの合法化(2024年以降?)がテーマになっています。
それにしても「権力者(ここではアルマヴィーヴァ伯爵)は隠れて悪を行う(麻薬を栽培している)」ということなのかと思いました。だから庭園には不似合いな仕事机とシェフ用椅子があるのでしょう。

ここでも伯爵夫人に迫るケルビーノ。

スザンナとフィガロ。

スザンナに化けた伯爵夫人とアルマヴィーヴァ伯爵。


カーテンコール。
右から三人目はバルバリーナ。

ところで、第4幕冒頭、バルバリーナのカヴァティーナは作品中、唯一の短調で異彩を放っています。

第3幕の最後では、バルバリーナがアルマヴィーヴァ伯爵との関係を暴露します。
つまり彼女は伯爵に「私を抱きしめてキスするたびに『愛してくれたら望みを叶えてあげる』と言ったでしょう!だから褒美として、ケルビーノと一緒にさせて!そうしたらあなたのことも愛してあげる、猫のように」というのです。
つまり、アルマヴィーヴァ伯爵はバルバリーナにもパワハラ&セクハラをはたらいていた訳です。
バルバリーナの、しかし、この『ディール』は子供っぽく、かつすごいのですが、第4幕冒頭のカヴァティーナでは「伯爵に渡されたピンを無くしてしまった、どうしよう」と、ここでは本当に、虐げられた子供だということを認識させられてしまい、とても悲しくなる。

子供に対する虐待は世界中で大問題ですが、モーツァルトとダ・ポンテはこの短いシーンの音楽と歌詞で表現している・・・


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Kishi Culture & Media Consulting Companie UG
代表:来住 千保美(Chihomi Kishi)
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