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Bayerische Staatsoper 11.05.23 オペラの記録:バイエルン州立オペラ、モンテヴェルディ《ウリッセの帰還》/ディディオンのメモワール《摩訶不思議な考えの年》(5月11日、ミュンヘン・キュヴィリエテアター)

バイエルン州立オペラは今、『Ja, Mai』(そう、5月)というフェスティヴァルを開催中です。これはオペラ黎明期(バロック・オペラ)と現在をつなぐことがモットーとなっています。

モンテヴェルディ《ウリッセの帰還》とアメリカの脚本家ジョーン・ディディオンのメモワール《摩訶不思議な考えの年》を基にした芝居をミックスした公演を観ました(5月11日、プレミエ:5月7日)。

場所はミュンヘンのレジデンツ内にあるキュヴィリエテアターです。
ここがキュヴィリエテアターに続く入口です。右側の柱に表示がありますが、ちょっとわかりにくいかもしれません。
ミュンヘンは雨が続いています。

レジデンツ内を通って劇場に行きます。

劇場内のフォワイエに続くコミテー・ホーフ。


キュヴィリエテアターはバイエルン選帝侯マックス3世ヨーゼフの命により1751年から1755年にかけて建設されました。
設計したのはフランソワ・キュヴィリエ。
現在は彼の名前が劇場の名前になっています。

ここで世界された有名な作品はなんと言ってもモーツァルトのオペラ《イドメネオ》です。1781年1月29日でした。モーツァルトはその直前、25歳になったばかりでした。
《イドメネオ》はモーツァルトの5大オペラには入っていませんが、傑作です!

オーケストラ・ピットは当然ですが浅い。

客席数は約500です。

プログラム。

《ウリッセの帰還》はトロイ戦争の英雄である夫ウリッセ(ユリシーズ、オデュッセイア)の帰還を待つペネロペが主人公になっています。世界初演は1640年、ヴェネチアでした。
私自身はこの2年後の《ポッペアの戴冠》の方が面白いと思います。
しかし《ウリッセの帰還》にはたとえば《ポッペアの戴冠》の最後のデュエットにつながる音楽もあります。

ちなみに、このポッペアとネローネ(皇帝ネロ)の最後のデュエットは数多くのオペラ作品の中でも、2人の愛の交歓を美しく、ねっとり、ここまでエロティックに表現したものは珍しいでしょう。聴きながらドキドキしてしまうほどです。
しかも数々の謀略と残虐行為はこのためだったのか、そしてモンテヴェルディはそれにこんな素晴らしい音楽を書いたのかと思うと・・・文字通り言葉を失います。

音楽の描くエロスという意味では、ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》第二幕が近いのですが、これは歌手も管弦楽も凄すぎて、ドキドキの意味が大きく違います。
それにモンテヴェルディからワーグナーまで200年の時間が経っています。

アメリカの作家ジョーン・ディディオン《摩訶不思議な考えの年》はジョーンの夫ジョン・グレゴリー・ダンが心臓発作で突然亡くなってしまった、その後彼女がどう過ごし、考えたかについてのメモワールです(2005年)。
ちなみに夫妻は映画《スター誕生》の脚本を手がけ、20世紀後半からのアメリカのカルチャーの中心的人物でもありました。

ディディオンも2021年末、87歳で亡くなりました。

今回の新制作はオペラと芝居(ディディオンの独白を2人の女優で演じる)をミックスさせたものでした。
冒頭は芝居、ディディオン夫妻の食事の場面です(実際、ジョンは食事中に突然亡くなりました)。ディディオンの独白が進行し、誰もいなくなると、ステージで倒れていたジョンが起き上がり、ウリッセになります。
そして、オペラと芝居が入り混じって進行していきます。

チケットは売り切れ、大評判になっています。


休憩なし2時間ちょっとの上演が終わりました。

すぐ近くのフェルトヘルンハレ(戦勝記念堂)です。
ノイシュヴァンシュタイン城を建設したルートヴィヒ2世の祖父、ルートヴィヒ1世の命により1841年〜1844年に建設されました。
現在はコンサートにも使われています。

モデルはイタリアのフィレンツェにある『Loggia dei Lanzi』。
有名なシニョーリ広場にあるので、見たことがある人も多いと思います。

FOTO:©️Kishi


バイエルン州立オペラの該当LINKは以下。

https://www.staatsoper.de/stuecke/il-ritorno-magisches-denken/2023-05-13-1900-13553


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