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Bayerische Staatsoper 04.02.24 オペラの記録:バイエルン州立オペラ、チャイコフスキー《スペードの女王》新制作初日

2月4日、バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)でチャイコフスキー《スペードの女王》の新制作初日公演を観ました。

上記の写真、いつもだと劇場にはウクライナ支援のため、ウクライナ国旗が掲げられていることが多いのですが、この日はありませんでした。
しかし空の色と劇場の照明の色の組み合わせがウクライナ国旗そのものみたいでした。

劇場の中で行われるのは『ロシアもの』。

モーツァルトの前に花が。
プレミエはいつもと違う雰囲気があります。でも写真ではわかりませんね
ピットは浅い

《スペードの女王》は《エヴゲニ・オネーギン》と並んでチャイコフスキーのオペラ作品のうちで大変有名ですが、あまり上演しないように思います。主人公のヘルマン役が出ずっぱりの、それこそ殺人的なテノールなので、なかなか歌える歌手がいない、ということもあると思います。
また、演出は難しい。《オネーギン》、《マゼッパ》と同様、原作はプーシキンで、原作と全く同じではないのですが、登場人物の描き方の基本に文学的素養が必要不可欠だと思います。

《スペードの女王》プロダクションというと個人的には2つの思い出があります。

一つは1998年、バーデン=バーデン・フェストシュピールハウスの柿落とし公演。
これはゲルギエフ指揮マリンスキー劇場によるものでした。プロコフィエフ《賭博師》と二つの制作を観ました。

これが私にとってゲルギエフのオペラ指揮の初めての経験でした。
あまりの素晴らしさに圧倒され、音楽専門誌に書きました。

ただその後2003-04年に同じくバーデン=バーデンでのゲルギエフ指揮《ニーべルングの指環》公演が酷く、そう書いたところ、日本の業界の人たちからひどく非難されました。ちなみにこのプロダクションは日本公演も行っていますね。

その後なぜか私は『アンチ・ゲルギエフ』というレッテルを貼られたのですが、私自身は「この時の《ニーベルングの指環》が酷かった」と言っているだけで、ゲルギエフの才能を全否定したわけではありません。
当時、ある音楽専門誌の編集長をしていたTさんが「ゲルギエフのオペラ指揮について日本で初めて(プリントメディアに)書いたのは来住さんで、その時に絶賛なさっていたことは私は知っています」と言ってくださったことは今でも忘れません。大きな支えになりました。Tさん、ありがとうございました。

もう(当分は?)ロシアと親ロシア国以外でゲルギエフの指揮を観ることはできないでしょうから、いい思い出です。

もう一つ、忘れられないのは・・・
これまで観た中で最高の《スペードの女王》は2016年6月、アムステルダム・オペラの制作です。
故マリス・ヤンソンス(2019年没)指揮、シュテファン・ヘアハイム演出、ピットに入ったのはコンセルトヘボウ管でした。
その5年前、同じ組み合わせで同じアムステルダム・オペラで《エヴゲニ・オネーギン》も観ており、これも圧巻でした。
私にとっての最高に好きな指揮者、演出家、オケの組み合わせだったのです。

アムステルダムの制作のヘアハイム演出はチャイコフスキーをステージに出し、理知的な解釈で作品の背景も同時に説明していく。
一方、ヤンソンスの流麗で色彩に満ちた音楽が折々の情感の移ろいをドラマティックに表現していく。
ここから生まれるシナジー・・・こんなに素晴らしいオペラ体験はそう簡単にはないと思います。

それから約7年半、久しぶりの《スペードの女王》でした。
(批評記事は後日、『音楽の友』誌に執筆予定です。)

演出チームには容赦ないブーが飛びました

FOTO:(c)Kishi


以下の写真は劇場提供です。© Wilfried Hösl

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