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名も知らぬ貴方からの花について
その日は雪が降った翌日で、車に乗り込もうとした時にどこからか石油ストーブのような香りがした気がした。そんなものが隣の家で例え焚かれていようがここまで香るはずがなく、きっと僕の頭の中の幻匂のようなものだったに違いない。
姉の出産はそこそこに大変だったらしく、母曰く3日かかったらしい。実際に姉はやかましい口調で痛かっただの辛かっただの、ほんとにそんなに痛かったのだろうかと疑うくらいには大袈裟な文
久しぶりのさようなら。
そうだな、例えるならなんだろう。この空気。いつものガラスに映るような彼女の姿はそこになかった。とてもじゃないけど、僕達は三年もの間、時間を共にしていたとは思えなかった。正確に言えば、二年と半年と数日だ。
彼女はいま、まるで僕をどぶ板を見るような目で射抜き、頑なに和解する意思がないことを示していた。
この空気。重たい。どれくらい重たいかというと、僕はもう彼女を二秒以上見つめていることができない。無言