壊れたパソコンで、元彼を思い出す。
パソコンが壊れた。
約8年間使用したノートパソコン。
履歴書やプロフィールなどもパソコンで作っていたし、
エッセイや小説もパソコンで書いて応募していた。
最近では、国際結婚の手続きのため役所に提出する書類関係さえも全部これで作成していた。
noteはスマホで書くことが多かったけれど、
それでもキーボードを叩く感覚は私を
「書いている」という気分にさせてくれて、長文のものなんかはたまにパソコンからnoteを更新することもあった。
執筆の相棒と言っても過言ではないだろう。
その相棒が、死んだ。
正確に言えば、まだかろうじて生きている。
電源だけは入るのだ。
ただ、電源が入ったところで「デバイスにアクセスできない」というエラーが出てしまい、修復を求める文言だけが白く浮き出ている。
内部のどこかがやられてしまったのだろう。
データも取り出したいところではあるが、元々私のパソコンではないから回復ドライブはわからない。
完全に詰んだ。
製品自体は10年以上前のシロモノだ。
そろそろ買い替えるのタイミングということだろう。最新のパソコンについて調べていると、壊れたパソコンがいかに低スペックだったのかを思い知らされた。
ただし、スペックだけの問題ではない。
パソコンにあまり詳しくない素人の私からしても、相棒はとにかく「ポンコツ」だった。
* * *
とにかく、動作の遅かった。
おそらく、私がこのパソコンを譲り受ける前から何らかのウイルスに感染していたのだと思う。
インターネットどころか、WordやExcelを開くだけで30分以上かかっていたこともあったし、
どんなにクリックしてもうんともすんとも言わず、忘れた頃にクリックしていたファイルが大量に開いている、なんてこともよくあった。
そもそも電源を入れてからデスクトップに至るまでの立ち上がりも本当に遅かった。
「よし、これからパソコンを使って◯◯をしよう」と思い立ち電源を入れたものの、実際に作業に入れるようになるまでかなりの時間を要する。
そうこうしてるうちに意欲は削がれ気持ちは萎える。
せっかちな私は、何度相棒を小突いたかわからない(もしかしたら壊れた原因それかもしれない)。
zoom飲み会やリモート面談が主流になったにも関わらず、いざオンライン◯◯を開始すると、すぐにフリーズした。
マイクもカメラも内蔵されているくせに、超がつくほどのコミュ障っぷり。
結局スマホから繋ぎ直してばかりで、そのうちパソコンから誰かの顔を見ることは諦めた。
インターネットで何か調べようにも、ずっと(🔄こうゆうのが)ぐるぐると回っていて、最終的には「インターネットに接続されていません」とか「応答なし」が当たり前に出てきた。
スマホで調べ物をしたほうが明らかに早かった。
ついでに言えば、いまだにWindowsは8.1。
あと、ノートパソコンのくせにやたらと重い。
完全にここいらが潮時というやつだろう。
専門店に修理やHDDの取り出しを依頼するよりも、この際新しく買った方が良いことくらいは素人の私にもわかる。
いくつかのデータは潔く諦めて、私は長年の相棒と決別することにした。
* * *
以上のように、
書いていてもげんなりするほどの低スペック…いや、ポンコツすぎるパソコンなのに、なぜ早く買い替えなかったのか。
自分でも疑問に思うほどだ。
文章を書くことが生き甲斐の人間にとってスムーズではないパソコンは、相当なストレスだった。
それなのに8年間、私はあらゆるポンコツ具合に目を瞑り、「まだいける」「もう少し大丈夫」と、自分を騙し騙し使ってきた。
私は、"彼" を壊れるまで使った。
なぜパソコンに対して自然と、
"彼" という男性名詞が出てきたのか。
ここで思い出したことがある。
そうだ。元々このパソコンは、
前の前の前、ぐらいの、
元彼の所有していたパソコンだった。
使うたびにその元彼を思い出すとか、感傷に浸るだとか、
そう言ったことは一切なかったが、
なんだか腐れ縁のような、とても不思議なパソコンだった。
今、私が文章を書いているのは、その元彼の一言が始まりだった。
元はと言えば、元々このパソコンの所有者であった元彼が(元元うるせーな)、私の文章に何かを感じてくれたのか、公募に出すことを勧めてくれたのだ。
私はその言葉がキッカケで、それまでノートに書き留めていた詩のようなものを、初めてデータにしてネットから応募し賞を取った。
そのときに使ったのはこのパソコンだった。
その後もほとんどの公募には "彼" の存在があった。
私が文章を書くことに至った始まりも歴史も、そのすべてを "彼" は知っている。
つまり、
"彼" に出会わなければ私は文章を書いていなかったし今でも書いていないだろう。
そういった意味では、色々と思い出が詰まったパソコン、"彼" だったかもしれない。
* * *
それにしても、そんな思い出…
もとい、奇妙な縁のあるパソコンが、
まさか結婚後に壊れるとは。
なんともタイミングが良すぎやしないか。
この8年間、いつ壊れてもおかしくない状態だったはずなのに。よりによって、今。
"彼" が壊れたとき、ついつい私は笑ってしまった。
そんなこんなで、
私は "彼" との執筆生活に終止符を打った。
新しい相棒は、
定価で約20万。
容量は無駄に16GB。
ウイルス対策ソフトも内蔵されていて、
昨年FUJITSUからデビューしたばかり。
「ワードとメールが出来ればいい」と思っていたなのに、急に高スペックな相棒がやってきてしまった。日頃から低スペックに慣れすぎていた私は、正直まだ、全然仲良くなれる自信がない。
それでも、「書き続ける」と決めたからには、別れや犠牲も必要だ。
私は新しい"彼"と、新しい人生を生きると決めた。
今までありがとう、"元"相棒。
ポンコツスペックだったけど、
マジで色々と苦労したけど、
私は新しい相棒と、
これからも書き続けていきます。
データはぶっ飛んだけど、
"書いてきた" 歴史は消えてないよ。
これからも、
これまで以上に、
言葉に溢れた人生を歩めますように。
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