しろくまちゃんのほっとけーき
小さい頃からホットケーキが好きだ。
味だけじゃなく、きれいな見た目や作る過程、香り。
そのすべてがとても好き。
世間で流行っているような、フルーツや生クリームがどっさり乗っているものではなく、バターとはちみつだけのシンプルな「ホットケーキ」じゃなきゃダメだ。
どうして、いつから、こんなに好きなのだろう? と考えてみたら、
幼い頃「しろくまちゃんのほっとけーき」という絵本を読んでいたことを思い出した。
仔ぐまのキャラクター「しろくまちゃん」が、お母さんとホットケーキを作り、お友達の「こぐまちゃん」に振る舞う、とてもほのぼのするお話。
ストーリー自体はなんてことない平凡な、幸せな日常の一コマを描いたものだけど、そのイラストの可愛らしさやお料理をしているところが女の子らしくて、まだ小さかった私にはどのページも新鮮で憧れていた。
特にホットケーキを流し入れてから焼き上がるまでのシーンは、何度見ても大好きだった。白い生地がこんがりきつね色に変わっていく様子が見ていて楽しかった。
絵本の中のしろくまちゃんを真似して、母とよくホットケーキを作った。もしかしたら、初めて母に作り方を教わった料理はホットケーキかもしれない。
絵本と同じように、生地に「ぷつぷつ」と穴があいたときは「ホントだ!!」と感動したのを覚えている。
ただ残念だったのは、うちは貧乏でとてもじゃないがお友達を呼べるような家ではなかったから、しろくまちゃんのようにホットケーキを作ってもお友達を招待することができなかったこと。
だけどすっかり大人になった今は私も自立して、自宅で自分のために、自分のためのホットケーキを焼いている。
じっくり、ぷつぷつ。
何にも考えないでいいあの時間が とても好き。
そのたびに母の、「ぷつぷつ穴が開いたらひっくり返すのよ」という声と、しろくまちゃんが一生懸命ホットケーキを作っている姿を思い出す。
その思い出ははちみつのように甘く、私の心にたっぷりと、バターのように染み込んでいるみたいだ。
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