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10_私が退職したら、チームが崩壊した話

予め言っておきますが、この話は私の能力の自慢でも、逆に私が仕事をニギって属人化させたという話でもありません!
 UP or OUTのサバイバル術を、普通の日本人に適応したら、まぁそうなるよね。残当。というお話です。

今の会社に転職して1年9ヶ月が経ちました。
先日、元部下と食事をする機会があり、そこで聞いた「私が抜けた後のチームの状態」がショックだったので記録しておきます。

私は前の会社で経営企画部門におり、業務改善とシステムの2つのチームをマネジメントしていました。

その間「管理職の仕事は、チームの生産性を高めること」だと考えてマネジメントしてきました。
具体的には、部下が雑音(上層部からの無茶ぶり)に振り回されないよう傘の役目を担ったり、スキル不足のメンバーに対して毎日1時間の1on1で振り返りをして出来ることを増やしていったり、部下の疲れが溜まっていると感じたら普段より時間が長めのランチに誘ってガス抜きをしたり、頑張れという言葉を気軽に使わないようにしたり。

まぁ、特別なことはしていません。かつて昭和企業の管理職たちがしてきた、部下一人ひとりをよく観察したうえでのマネジメントです。
(周囲からは、バーテンダーがカクテルを作るときに「材料を入れてステアするだけですよ。ね?誰でもできるよ、簡単でしょ?(^▽^)」と言っているのと同じに聞こえる、と言われてしまいましたが…。)

結果として部下の仕事ぶりが認められ、部下は昇給しました。
ついでに言うと、私の上司も昇格しました。私は1円も昇給せず、昇格もしませんでしたが。
なんと言うか、手柄を上司に持っていかれた感がありますね(苦笑)

私がその会社を辞めた後、私のチームを別の管理職(Iさん)がマネジメントするようになりました。
その結果、元部下から心身の不調による休職者がでました。
他の元部下メンバーも精神的ストレスから周囲への八つ当たりが激しくなったり、会社を休みがちになったりで、チーム内の関係性は悪化し、崩壊していました。

どうやらIさんは、マイクロマネジメントを好むものの、部下個々人の特性や事情を考慮せず、Iさんが正しいと考える、Iさん主体の仕事の振り方をしていたようです。
無茶ぶりを拒否しないので、上層部からの受けが良い人でした。そして上層部からの無茶ぶりを濾過しないまま、部下の業務として下ろしていたようです。
元部下はゴールの形も見えていない曖昧でボリュームのある仕事に、押しつぶされていました。

元部下との食事で私の退職後にチームが崩壊した話を聞き、Iさんに対する怒りが一巡したあと、私に残ったのは「もしかしたら私も、Iさんになっていたかもしれない。」という思いでした。

なぜなら私もIさんも、生存者バイアスが掛かったキャリアを歩んできたからです。
Iさんは、誰もが知る強豪ベンチャーで新卒から15年近く、長時間労働も当たり前の、UP or OUTのカルチャーで生き抜いてきました。
私は新卒から10年間を証券会社で過ごしましたが、入社時に300人いた同期が、10年目には20人に減っている環境で生きてきました。そして同期で唯一の女性総合職という特殊性も併せ持っていました。

Iさんのマネジメントは、彼が育ったUP or OUTのカルチャーでは当たり前の方法だったのだと思います。

生存者バイアスが掛かった人は、育った環境やカルチャーが自分の無意識レベルにまで刷り込まれているがゆえに、自分が組織を作る側になったときは「それが正しい。それ以外は検討の余地なし。」と、疑問を抱くことなく信奉しがちです。
前の会社で私もIさんも、マネジメント研修を複数回受講しており、今の時代の管理職のあるべき姿を学んでいました。それにも関わらず、自分が育ったカルチャーに抗えないのです。

では、私がIさんにならなかったのは、何故なのか。
それは、証券会社時代に仕えた常務取締役の言葉があるからだと私は確信しています。

「上司を見て仕事をするな。大事にすべきなのは部下だ。」
私が管理職になる前の、真っ新なときに掛けられた言葉です。
上司に可愛がられるように仕事をしたとしても、上司は大抵年上だから君より先に会社を去る。そこから先は守ってはくれない。部下を蔑ろにしていると、君と部下が残された会社で、君は後ろから刺されるよ。
これは常務の経験に基づくアドバイスだったのだろうと思います。

その後、管理職というポジションに就いた私は、折に触れてこの言葉を思い出しながら働いてきました。
これも自分が育ったカルチャーなのです。

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