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【1分で読める小説】 その2 超大作

(解説)この映画は突然の光で幕を開ける。医師、看護師、そして両親。笑顔が主人公の彼を取り囲む。この上もなくハッピーなオープニングだ。観客の心は一瞬で鷲掴みにされ、その興奮はラストまで途切れることがない。

中盤の山場はセックスシーンだ。初体験を前にした彼の期待、緊張、不安。この複雑な感情をここまでリアルに描き出した名作を私は知らない。なんという高揚感。そして脱力感。「全米が泣いた感動の超大作」という評判も十分うなずける。

ラストも涙なしには見られない。オープニングと同じ病院が登場するという心憎い演出。年老いた彼の意識を象徴するような不安定なカメラワークが見事だ。光は徐々に失われてゆき、ついにこの作品は眠るように幕を下ろすのである。(終)

「ただ今より上映いたします。この映画は一人の男の脳内チップに記録された視界映像を、編集なし、全編ワンシーン・ワンカットでお届けするものです。全て見終わるまで83年ほどかかります。では最後までごゆっくりお楽しみください」

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