【秋の一人旅BGM】 リュックと、片道切符と、この10曲。
それぞれの季節には、その季節にふさわしい旅のスタイルというものがある。
春は悪友たち数名と函館だ。東京で潔くパッと散った桜を、未練がましく北海道まで追いかけて、五稜郭公園でもう一度楽しむ。その後は牡丹海老の刺身を求めて居酒屋へ。桜と牡丹を一日で堪能。もうひと花咲かせそうもない奴らと一緒に。
夏は全スタッフで海。できれば石垣島。ロケと称して14、5人ぐらいで乗り込み、撮影はそこそこに済ませて、あとは自由時間。時には仕事仲間全員で仕事を忘れるのもいい。そういうバブルっぽい旅行、一度してみたかったなあ。
冬は愛人と金沢です。日本海から吹きつける季節風。小雪舞う闇の中、一本の傘を頼りに二人は温泉宿に辿り着く。部屋で出迎えてくれたのは、湯気を立てた加能蟹の鍋と、地酒の熱燗であった……。
(注)あくまでもイメージであり、フィクションです。
で、秋はどうする? 秋はなんといっても一人旅がいい。行き先? 行き先はどこでもいい。見知らぬ地で一人になって、来し方行く末を想う。ただただ、しんみりする。それが目的。秋の風景、温度、湿度はそういうことに適していると思うのだ。
荷物はリュック一つで十分だ。というか、リュック一つじゃないと秋の一人旅じゃない。大きなスーツケースをゴロゴロ転がして「行ってきまーす!!」と明るく出かけてはいけない。できるだけひっそりと身支度し、朝日とともに無言で旅立つ。
スマホは置いていこう。道中で読むのは電子書籍ではなく、古い文庫本の日本文学や万葉集でありたい。
えーと、音楽はどうしよう? 何か聴きたくなるかもしれないな。じゃあスマホはやっぱり持ってくか。選曲どうする? なんかシティポップとかディスコとか、そういうんじゃないんだよな。かといって、歌謡曲や演歌じゃ昭和の地方色が出すぎるしなあ。よし、10曲だけと決めてプレイリスト作ろう。秋の一人旅のための専用プレイリスト。国内旅行だから邦楽だけにするか。いや、あえて洋楽も入れる? 秋だから「枯葉」とか、そういうジャズっぽい路線でいくとか。それじゃベタすぎるか。まいったな。(なんでもいいから早く出発しろよ!!)
というわけで、作ったプレイリストがこちらです。
前半5曲が「旅立ち篇」、後半5曲が「旅情篇」となっております。よろしければ、あなたの旅のお供にも、どうぞ。
※再生ボタンを押すと、各曲1分30秒だけ、このページで試し聴きができます。
1. 旅立つ朝(江利チエミ)
元ピチカート・ファイヴの小西康陽のフェイバリット曲。そういえばどことなくアレンジがピチカートっぽいし、野宮真貴が歌っても似合いそう。
2. 銀河鉄道999(ゴダイゴ)
イントロや間奏で聞かれるアレンジは、おそらく発車のベルをイメージしたもの。ささきいさおが歌うTVアニメの主題歌はやや寂しげだったが、この曲は希望に満ちている。
3. ぼくらが旅に出る理由(小沢健二)
旅に出る理由って何だろうと、ふと考えた。一般的には「観光」かな。習慣化しているものもある。新婚旅行とか、卒業旅行とか。理由なく出かける旅に憧れる。
4. Take a Little Trip(ミニー・リパートン)
「小旅行に連れてって」と甘える歌かと思いきや、実は「内面への旅」を歌ったもの。それでもこの曲から漂うキュートさには、小旅行へと誘う不思議な魅力がある。
5. 新幹線車内メロディ集
背もたれ、少し後ろに倒しますね。左端の座席か…。富士山は諦めよう。さてと。多摩川も越えたことだし、そろそろ幕の内、いっちゃおうかなあ。あれ? スマホがない!! ヤベェ、棚に上げたリュックの中だ。
6. 旅路(藤井風)
優れたボーカリストは歌い方にクセ(個性)があると、山下達郎が言っていた。例に挙げていたのは矢沢永吉、忌野清志郎など。所々で音程を揺らす藤井風の歌い方は、聞いてる方もクセになる。
7. 遠くへ行きたい(高橋真梨子)
作詞、永六輔。作曲、中村八大。一人旅をモチーフにした名曲中の名曲。だから、いろんな人がカバーしている。私が知る範囲では、この高橋真梨子バージョンがいちばんエレガントだ。
8. 異邦人(樽木栄一郎)
オリジナルの久保田早紀バージョンは“イントロ必聴”の名アレンジだが、中東っぽい異国情緒が強い。今回は国内旅行を想定して、“ギター弾き語り職人”樽木のバージョンを選んだ。
9. So Far Away(キャロル・キング)
愛する人との物理的、心理的な距離を歌った曲。
原曲の歌詞はともかく、この曲の雰囲気は「ずいぶんと遠くまで来たなあ」という旅の気分と妙にシンクロする。
また最近では、今年の五月に遠くへと旅立った母のことを思い出させたりもする。
10. The Long and Winding Road(ビートルズ)
シンプルな“ネイキッド”バージョンもいいけれど、私はフィル・スペクターによるこの壮大なアレンジの方が好きだ。「長く曲がりくねった道」は人生そのものを想起させる。そうして人生という名の旅はこれからも続いていく……。
それでは10曲続けてお聴きください。どうぞ。
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