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月といえば光だった。


月といえば光だった。
晴れた夜空に煌々と輝くそれは
星々の光を掻き消して僕らの夜道を照らすのだった。

時折流れてくる雲がその輪郭の内側に月を隠す。

その間、夜は沈黙を守り僕らは耳を澄ませた。
木々は日中の忙(せわ)しいざわめきを葉の裏に隠し
何事もなかった顔で静かに夜空を見上げている。

ヴェールを脱いだ月が再び現れると、
その光は眩(まばゆ)すぎたので老人や子供などはよく目を瞑ってそれをしのいだ。

この洗い立てのような白い月に
僕らが託すことといったら希望でしかなかった。
希望、その大いなる光。静かなる力。

外に生まれる太陽ではない。
内から透き通るように現れるのはいつも月だった。
月といえば光だった。



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2020/09/22放送 chigusaの庭より


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