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部活動指導員という働き方と気になる報酬、仕事内容について

コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。

コントラバスを弾いたり、教えたり、部活動からアマチュアオーケストラ・吹奏楽団の指揮、指導をしたり高校音楽科でコントラバスの講師をしたりしています。

さて、今日の夜にこんなポストをしました。

東京都の都立学校における令和6年度部活動指導員の募集をしますという情報ですね。

部活動指導員は、中学校や高校の部活動において顧問の代わりに単独で部活動の指導や引率ができる立場にある人のことで、 平成29年4月に学校教育施行規則の一部が改訂され、新たに制度化された学校職員です。

立場は学校の職員となりますが、公務員ではないため兼業が可能(ここが音楽家の皆さんが一番気になるところだと思う)です。

僕は過去に部活動指導員の仕事に興味を持ち、多くの教育委員会に出向き面接を受けたのですが、非常勤の職員、臨時職員、会計年度任用職員、公務員と同じような扱いに近い、学校の職員としてと様々な呼び方をされていましたが、ざっくり書くと会計年度任用職員という身分になります。

実際、部活動指導員として仕事をして2年ほど経ったので、実体験に基づいて部活動指導員として働いてきて感じたことを書いてみます。


部活動指導員ってどんな仕事をするの?

部活動指導員は学校職員として学校に勤務し、仕事内容に関しては吹奏楽部の実技・合奏指導の他に、部活動を運営する上で必要な業務も並行して行っていくことが多いです。

東京都の求人をはじめ多くの自治体で部活動指導員の職務内容とされているのは内容は下記の通り

  1. 実技指導
    いわゆる合奏指導をはじめとした音楽面の指導です

  2. 安全・障害予防に関する知識・技能の指導
    活動中における事故が起きたときの対応などを研修で学びます

  3. 学校外での活動(大会・練習試合など)の引率
    コンクールや地域のイベントの際に学校から生徒たちと引率する仕事(時給で計算)

  4. 用具・施設の点検・管理
    修理や購入が必要な楽器などがあれば顧問や学校の担当者に交渉

  5. 部活動の管理運営(会計管理など)
    僕は会計管理についてはノータッチ
    管理運営に関しては顧問に指導員の立場からアドバイスをしたり出校日の調整や選曲の相談などが該当するのかと思います。やりとりはメールやラインですることが多いです。

  6. 保護者などへの連絡
    ここも僕はノータッチ
    勤務日数の多い指導者仲間や保護者対応もやっているようです。

  7. 年間・月間指導計画の作成
    これは顧問の先生が作ってくださっています。僕は出校日を決め指導計画は必要に応じて直接話したり、メールやラインでのやりとりをしています。

  8. 生徒指導に関わる対応
    生徒に音楽面以外での指導が必要だと判断した場合、指導にあたります。いわゆる現役時代の「先生に怒られた」ってやつであることが多いです。

  9. 事故が発生した場合の現場対応
    活動中に事故が起きたときの対応です。こちらは研修で対応の方法を学びます。

いわゆる、部活動の顧問の先生がやっていたことに近いと考えると良いと思います。

勤務日数、顧問がいての指導員となるのか顧問と同等の仕事をするのかなどは、配属される学校によって変わってくるので面接の時点で気になることは聞いておくことをおすすめします。

なので部活動指導員という立場は外部講師以上、主顧問未満というような間の中で部活動に関わるといった感じです。

吹奏楽部の外部講師との大きな違いは2つ

  • 学校職員であること

  • 大会やイベント演奏に単独で引率が可能なこと

そして、それに従い多くの生徒たちの安心安全を預かる責任が生まれることです。

また吹奏楽コンクールをはじめ、部活動が参加する大会やイベントの指揮を振ることができるのも大きな違いかと思います。

これは職業音楽家にとっても指導経験を積むことができたり、自身のスキルアップに繋がるのでとても良いことだと思います。

気になる!部活動指導員と報酬のはなし

部活動指導員は、学校職員として年間を通し勤務し部活動の指導にあたります。

と、書いていますが勤務時間は短く出校日以外は他の仕事を兼任できるので演奏活動との掛け持ちも問題ありません。

そして、ここが気になる!部活動指導員とお金のはなし。

報酬は時給で計算され勤務時間は部活動ガイドラインに準じての設定となります。

東京都の都立学校であれば

  • 平日は3時間以内

  • 土日、祝日は4時間以内

と記載されており、地域によってタイムカード制であったり平日3時間・休日4時間といった固定勤務(2時間とかでも3時間分の計算になる)だったりとさまざまです。

また、有給休暇や期末手当(ボーナス)が支給されるのは嬉しいですね。

期末手当(ボーナス)に関しては要件を満たす必要があるので要チェックで、要件というのは週3日以上の勤務など勤務日数や時間に関することであることが多いです。


部活動指導員の時給について

部活動指導員の時給についても各自治体によってさまざまで、時給1,200円から2,500円とかなりの差があります。

東京都の都立学校の部活動指導員は勤務時間が年間90時間以上740時間以内と書かれているので、記載されてる時給と合わせて計算してみると

年間90時間で勤務した場合

2,300(時給)×90(最小勤務時間)=207,000

12ヶ月で割ってみると毎月17,250円の収入と交通費が支給されます。

年間740時間で勤務した場合

2,300(時給)×740(最大勤務時間)=1,702,000

12ヶ月で割ってみると毎月約141,800円の収入と交通費が支給されます。

実際は、テスト期間や夏休みなどの長期休暇、入試期間があったり引率で長時間の勤務になる日もあるため上記の数字の間で勤務日数によって受け取る報酬が変わるという形です。

部活動指導員としての働き方(井口の場合)

僕の場合は週1回の勤務で、先に入っていた予定などあり毎週行けていない月もあるので部活動指導員としての報酬はけっして多くありません。

出校できない場合は別の日で振替日を作る、有給を使ったり年間の勤務日数で調整するなどしていきますが、こうした個別の事情などは学校単位で変わってきます。

部活動指導員の報酬だけで食べていくのは難しいので、安定した収入を作りたい人は勤務日数を増やし、演奏活動など他の活動と並行していきたい人は勤務日数を調整するなど面接の中で希望を伝えていくのが良いと思います。

これは、学校や部活動がどのような形で指導員を必要としているかによるので面接を受ける予定の方は自分ができること、できないことを明確に伝えられるようにしておくと良いでしょう。

いわゆる外部講師としてレッスンをした際に受け取る謝礼に比べると報酬の額は少ないですが、年間を通して学校に勤務するため安定した収入を作ることができるのは部活動指導員の魅力の一つです。

僕の場合は、面接の際に自分の働き方を伝え、そうした条件を理解してくださった上で採用していただいたので、顧問の先生が主体となり実技指導や運営をサポートする形で入っています。

週1日の勤務、出勤日は不定期とかなり自由に働かせてもらっています。

面接を担当してくださった教育委員会の方や先生方には感謝をしています。

職業音楽家×部活動指導員としてのキャリアプラン

以上が部活動指導員の仕事内容、報酬、働き方の一例です。

上に書いたように、部活動指導員は音楽家のキャリアの幅を広げてくれる素晴らしい制度ですが、部活動指導員の仕事だけで生計を立てていくのは難しいと考えています。

なので、他の仕事もしながら生活していくこととなりますが、フリーランス、個人事業主であれば一つの仕事、職場だけでなく自分の専門分野を軸に得意分野との掛け算で仕事をしていくスタイルが多いと思うので、部活動指導員をはじめたところで働き方が大きく変わるということはあまりないと考えています。逆に、年間を通した固定の仕事がしたい人にとっては安定した仕事と収入を得られるチャンスです。

僕の場合は

  • コントラバス奏者としての仕事(オケ、吹奏楽、芸術鑑賞会など)

  • レッスンの仕事(個人レッスン、オンライン)

  • 吹奏楽部、オーケストラ部の外部講師の仕事(パート、合奏指導)

  • アマチュアオーケストラ、吹奏楽団の仕事(トレーナー、指揮者)

  • 音楽教室での勤務(月数回)

  • 高校音楽科コントラバス専攻の講師

と併せて、平日の夕方に部活動指導員として学校に勤務する形で仕事をしています。

平日はリハーサルを終え学校勤務、また学校勤務からの夜はアマチュア楽団の指導などスケジュールをうまく調整していけば、より充実したキャリアプランを作ることができると考えています。

また、車での移動をしている方は車での勤務が可能かを必ず聞くようにしてください。

中には車での勤務はNGという場合もあるので、特に大型楽器の方は要チェックです。

そして、部活動指導員としての契約は1年ごとの更新となります。

顧問の異動など学校側の事情が大きく関わってくるので、採用されて勤務することになったら頭の片隅には次のキャリアプランを考えていくことをおすすめします。

というのも、顧問が異動し指導員が不要となると来年度の勤務はなしという可能性もあるのと同時に、けっこう年度末のギリギリのところで話が動くことが多かったりします。

いきなり次を探すのも難しいと思うので、頭の片隅で次を考えておくというのは個人的に先手を打っておくことはおすすめです。

部活動指導員をやっていてよかったこと

部活動指導員をやっていてよかったことで真っ先に浮かぶのが、生徒たちと過ごした時間です。

たまに来る外部講師の先生ではなく、学校職員として部活動に関わるので生徒一人一人と接する時間も圧倒的に増えてきます。とくに、部活動指導員を必要としている学校は部活動を運営していく上でのヘルプを求めているところが多いので、生徒たちと一緒に部活動をより充実した時間にしていく過程がとても楽しく、一番やりがいのあるところです。

自分の経験の中では、部活動の立て直しを頼まれ、ずっと銅賞だった吹奏楽部が指導者不在、新入部員ゼロ、来年は廃部かもしれないといった困難を乗り越えて数年ぶりに銀賞に輝いた瞬間を生徒たちと一緒に喜べたことが記憶に残っています。

また、いまは若い先生も多く吹奏楽指導経験がなく顧問になった先生も多くいるので、生徒と先生と一つのチームになって部活動をサポートしていったり、顧問の先生の相談役、部活動のコンサルティングをするような役割を受け持ったりすることが経験できるのも、部活動指導員をやっていてよかったことです。

部活動指導員をやっていて大変だったこと

部活動指導員をやっていて大変だったのは、学校はアナログ文化が根強く残っているというところ。

連絡の手段が電話だったり、印鑑が必要だったり、流石にファックスは経験していませんがフリーランスで仕事をしていてデジタル化に慣れていると、ちょっと普段のペースと違うことに戸惑います。

また自由な働き方をするフリーランスとしては、組織の中の一員として働くという真逆の環境に足を踏み入れるので、1から99の中で判断すれば良いと思うところを0か100でしか決められなかったり、何か提案や企画をする際は管理職など第三者の判断によって物事が決まることが多いです。

なので音楽関係のことを音楽とは関係のない仕事をしている大人にプレゼンするようなスキルはあった方が良いと思います。

また、上にも書いたように部活動指導員を必要としている学校は部活動を運営していく上でのヘルプを求めているところが多いので、音楽面以外で生徒指導をする機会を経験することもあるので、叱る、注意するという場面も出てきます。

おわりに

ここまで、部活動指導員として仕事をしてきて感じたことをまとめてきました。

部活動指導員は、学校の先生方の負担を減らし音楽家のキャリアの幅を広げてくれる素晴らしい制度だと思います。

学校現場の中に入ることで改めて先生方の忙しさ、大変さを感じることが多くありました。

吹奏楽部の指導員はけっこう倍率も高いようなので、もし部活動指導員として働きたいと思ったら都道府県、市区町村の求人情報をどんどん調べていくことをおすすめします。

部活動の存在が大きく変わろうとしている今、ニュースでは部活動に対するネガティブなニュースやイメージが多く報道されていますが、実際に仕事をしてみると学校も教育委員会も試行錯誤しながら部活動を良いものとしていこうと努力されている様子も多く見ます。

実際に各分野の専門家や有識者から意見を聞く機会を設けている教育委員会もあります。

何より部活動の主役である生徒たちが充実した時間を過ごせるようにサポートしていくのが部活動指導員の仕事で、ここが大切なことだと思うので、部活動指導員という制度が

  • 学校の先生方の負担を減らし

  • 音楽家のキャリアの幅を広げてくれ

  • 生徒たちは専門的な指導を受けより充実した時間を過ごすことができる

Win-Win-Winなものになってほしいと強く願うところです。

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井口信之輔(Shinnosuke Iguchi)
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