読書:澤村御影『准教授・高槻彰良の推察10』(4/3読了)

高槻の過去を思わせるような状況の事件、驚いたのは飯沼の様子でした。専門の芸能ゴシップでもないのに、高槻を頼ってまで知りたがる理由。こういう顔もするんだと、こんな思いを抱いていたのだと、感じ入るものがあった。

高槻が見舞われる事態――思わず踏み入ることになった場所も、あわやの危機も、心が冷える思いで。何より、彼自身は知らない、尚哉がもっとも近づいているモノにぞわりとする。
けれど尚哉の決心と行動に、頼もしさを感じるんですよ。

思えば当初、手放したがらなかったのは高槻のほうだった。
でも今は、尚哉こそ高槻を繋ぎ止めようと、自分の前からいなくならないようにと、手を伸ばしている。

遠山さんが尚哉に向けた、「君の周りにあるものは、君がこれまでの人生で獲得した財産だよ」の言葉がとても印象に残っているんです。
尚哉は厚意に甘えている後ろめたさがあるようだけれど。

いま尚哉の周りにいる人たちとの関係、彼らが向けてくれる思いや行動って、尚哉が応えたり行動したからこそ築けたものだと思うんですよ。目や耳を鎧って周囲と線を引いていた彼が、少しずつ変化していって。
宣戦布告のような意思表示さえ見せるようになった。

どうなるのか、次巻も楽しみです。

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