ちえのわ

京都で英語とスペイン語の翻訳をしています。移動とことばと食と病に興味があります。

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最近の記事

ヘブライ語入門書を比較

イスラエル人と仕事をする機会がありそうなので、アルファベットが読めて、挨拶と数字、時間くらいは言えるようになっておこうかと、本をいくつか見てみました。「目指すところ」は、それぞれの本の前書きを読んで、パラパラ中身を見て大体こんな感じかな、と私が勝手にまとめたものです。 私の目指すところ: 自己紹介がヘブライ語でできる 基本的な挨拶 アルファベットをとてもゆっくりだが、読める 自分の名前はヘブライ語で書ける ヘブライ語にかけられる時間:二か月、1日につき30分くらい

    • 賀茂社―上賀茂神社・下鴨神社 (日本の古社)

      「日本の古社」シリーズの一冊。上賀茂神社、下鴨神社というが、これは一つの社、賀茂社の上社と下社です。 この本には、両社の写真と、エッセイ、祭礼や建築に関する研究者の寄稿、両社の祭礼、宝物の解説、近隣の観光ガイドがおさめられています。 神社は、お寺以上に中の中まで入ることは難しい。下鴨も上賀茂も何度も行きましたが(下鴨では結婚式まで挙げましたが)、見たことのない場所のほうが多いと思います。そんな神社の様々な場所、神事の様子をおさめた美しい写真は見ごたえがあります。また、神社

      • 相原恭子『京都花街 舞妓と芸妓のうちあけ話』

        元芸妓、花街に縁の深いお店の主人、お茶屋の女将、現役の舞妓たちの話を集め、さらに幕末の志士と芸妓たち、歌舞伎と花街、モルガンお雪などのテーマで京都の花街を切り取る。 花街の全体像がこの本を通してなんとなくわかるし、花街にいた人の半生はものすごく興味深い。戦前は小学校もそこそこに、四年生くらいから女紅場に通って見習いに入るとか、祇園で生まれた男子は十三、四になると奉公か養子に出されて、花街で生きる姉妹たちとは全く違う人生を生きることになったとか…。 著者は特別花街と縁がある人

        • 辻邦生『安土往還記』

          以前、母に連れられて行ったカフェのオーナーが辻邦生の妻、辻佐保子の実弟だった。オーナーの奥様に「義兄の本です」と言われて、てっきり義兄の蔵書だと思ったら義兄が書いた本だったのだ。それ以降気になりながらも読んだことがなかった(高校の教科書に載っていたかもしれないが、忘れてしまった)。 『安土往還記』は、架空のジェノヴァ人水夫の日本滞在記録(友人への長い書簡)の翻訳という体裁を取る。ジェノヴァで妻と妻の情夫とを殺害した後、自らの生き方を常に正しいものであると、信念を貫くために生

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        • ガイド参考本
          3本
        • 本を読んだ
          8本
        • 美術展に行った
          4本

        記事

          三島由紀夫『金閣寺』と水上勉『金閣炎上』

          三島由紀夫の『金閣寺』は、仕事で金閣に行くたびに読んでいないことが気がかりだったのだがようやく読了できた。同じ事件を扱った『金閣炎上』も読んだ。これで堂々と説明できるし、議論にも応じられるので安心。 『金閣寺』をKindleで読もうとしてamazonで検索したらなんと著作権者の意向で電子化されていないという。検索結果に出てきた水上勉の方を先に読むことになった。 『金閣炎上』は小説ではなく、放火犯の人生の伝記のようなもの。放火犯の出生地近くの福井県に生まれ、放火犯同様に禅寺

          三島由紀夫『金閣寺』と水上勉『金閣炎上』

          沖浦和光『新装版 竹の民俗誌ーー日本文化の深層を探る』

          全国の被差別部落を数多くフィールドワークした研究者による本で、南島文化と隼人との関わり、および、竹細工の歴史を探るのを主眼としている。 隼人も、竹細工に関わった人々も、いずれも虐げられた人々であった。隼人は南方系の人びとであり、ヤマト王権成立以前に日本に先住していたが、ヤマト王権に征服された。隼人が住んでいた南九州には、南太平洋とよく似た竹用品や竹に関する習俗が今も残る。 竹細工は、土地を持たず、租税を納めることができなかった貧しい者の仕事だった。たとえば、『竹取物語』の

          沖浦和光『新装版 竹の民俗誌ーー日本文化の深層を探る』

          細見コレクション 琳派と若冲

          今行ってきた感想を書こうとして気づいたけど、多分展示の半分しか見ていない。こんなに展示品が少なくていいの?と思っていたが、私が悪かった。また行かなければいけない。 私が見た展示室は、織部と志野の焼き物と、琳派の作品を中心とした部屋だった。晩年の若冲の作品もあった。これは織部、これは志野、とまとめて見せてくれると、こういうのが織部なのか、と分かるので初心者にとってよかった。「これはこういう焼きもので、ここにこういう装飾、ここにはこういう装飾がこの画材で施されている」、と説明も

          細見コレクション 琳派と若冲

          吉村泰典『間違いだらけの高齢出産』

          生殖医療の黎明期から活躍している産婦人科医が書く、高齢出産の現場の話。 著者は、現代の女性の出産適齢期は25歳から35歳だという。生物としての適齢期は18歳から25歳くらいらしいが、それほど若くして出産するのは現代では難しい。35歳を過ぎると急激に生殖能力が下がるため、それまでに産むのがいいらしい。 私は34歳で出産したが、病院で開かれた母親教室では、担当の助産師から皆さん歳をとっているのだから無理はできないし、本当はもっと早く産んでほしい、と言われた。40歳くらいの人も

          吉村泰典『間違いだらけの高齢出産』

          狩野博幸『江戸絵画の不都合な真実』

          京都国立博物館で数々の展覧会を企画した美術史家による、江戸絵画の有名人の肖像。岩瀬又兵衛から東洲斎写楽まで、時代を追って8人が取り上げられている。 それぞれ何枚か絵も紹介されてはいるが、画家自身のエピソードが中心である。江戸時代はさまざまな人がさまざまな随筆や日記を残しているため、文献に広く当たれば作家の人物像がくっきりと姿を表す。ろくに資料にも触れずに、好き勝手なことを言う傾向に著者は批判的で、例えば東洲斎写楽が誰なのか、山のように出ている候補は一刀両断している。 所々

          狩野博幸『江戸絵画の不都合な真実』

          辻 惟雄『伊藤若冲』(ちくまプリマー新書)

          突然日本美術(の知識)を身につけようと思い立ち、美術館に通い始めたがきっかけはこの本。子供の将棋教室でお迎えの時間を待つ間、本でも読みたかったが持ってくるのを忘れたので、近くの書店で吟味した末に買った。 中高生向けなので、難しい言葉が使われておらず、辞書を引かなくても言葉は理解できる。かといって、内容を噛み砕きすぎて退屈ということもなく、大人の初心者にもちょうどいい内容。若冲の人生、絵画にしか能がなく、家業の青物問屋も投げ出した社会不適合者のオタク、と言うイメージがどう覆さ

          辻 惟雄『伊藤若冲』(ちくまプリマー新書)

          京都国立博物館「皇室の名宝」

          日本の美術について、重点的に見ていこうとしている。そこで昨日、今京都で開催中の展覧会を調べていたら、「皇室の名宝」展に江戸時代の絵画がいろいろと出ているではないか。今読んでいる若冲の本に出てくる動植綵絵も展示されるらしい。というわけで、さっそく予約して今日行ってきた。 ウェブサイトから事前に予約とチケットの購入が必要で、予約は30分刻み。中に入ってみると、絵巻物の見学に時間がかかるためか、絵巻物~日本画コーナーはかなり混んでいた。予約がない通常の展覧会とあまり変わらないくら

          京都国立博物館「皇室の名宝」

          Kyotographie 片山真理「Home again」

          片山真理の展示を見てきた。 人とは違う身体は気になる。見てはいけないと思いつつ、興味を持つべきではないと思いつつ、見てしまう。サーカスを見るみたいな興味があったことは否めない。 嶋臺ギャラリーに入ると、体にグリッターを塗りつけて、いろいろな部分を写真に収めた大きなパネルが何枚も並んでいる。置いてあったリーフレットによれば、肌に症状が出る持病があるらしいので、肌の赤らみもそのせいだろうか。手術跡か、傷跡のくぼみにたまったグリッターもくっきりと見えて、肌のきめも見えて、生々し

          Kyotographie 片山真理「Home again」

          泉屋博古館開館60周年記念特別展「瑞獣伝来―空想動物でめぐる東アジア三千年の旅」

          泉屋博古館に初めて行ってきた。スマホを忘れていったため、写真はなし。 泉屋博古館は、住友家15代当主の住友春翠の中国古代青銅器コレクションを中心とし、日本や中国の美術品など所蔵品は多岐にわたるとのこと。今年2020年で60年を迎える。新展示室と青銅器展示館から成る。青銅器展示館についてはあとで触れる。 瑞獣伝来『瑞獣伝来』は新展示室で開催されていた。芝生の庭を眺めながら渡り廊下を通って行く。今回の特別展では、中国で皇帝が善政を敷いたときに現れたという縁起のいい動物の中でも、

          泉屋博古館開館60周年記念特別展「瑞獣伝来―空想動物でめぐる東アジア三千年の旅」