京都国立博物館「皇室の名宝」

日本の美術について、重点的に見ていこうとしている。そこで昨日、今京都で開催中の展覧会を調べていたら、「皇室の名宝」展に江戸時代の絵画がいろいろと出ているではないか。今読んでいる若冲の本に出てくる動植綵絵も展示されるらしい。というわけで、さっそく予約して今日行ってきた。

ウェブサイトから事前に予約とチケットの購入が必要で、予約は30分刻み。中に入ってみると、絵巻物の見学に時間がかかるためか、絵巻物~日本画コーナーはかなり混んでいた。予約がない通常の展覧会とあまり変わらないくらいの人込み。客層は、平日午前中だったからか、年齢層は高めだった。

若冲以外では、海北友松、春日権現験記絵、牧谿あたりを見るために行ったのだが、春日権現験記絵、伝藤原行成の雲紙本和漢朗詠集、後水尾天皇宸翰女房奉書、糸桜図簾屏風、が特に記憶に残った。あと琵琶。

春日権現験記絵はとにかく細かい。色使いも線も品があって、今の春日大社は当時と同じではないだろうけど、あの空間がそれほど変わらずに鹿などいたこと、当時の服装など、見ていて飽きない。前期後期三巻ずつの展示。春日大社の宝物館で二年ほど前に春日権現験記絵の展覧会をしていたはず。行けばよかった。

伝藤原行成の雲紙本和漢朗詠集は紙の左上と右下に雲のような模様が漉き込まれている。紙だけでも美しい。その上に、漢文と仮名文字の詩歌が並んでいる。漢字が並んでいる部分(漢詩)とひらがなだけの和歌の部分が交互に現れるので、仮名文字のやわらかで定まらない形と、しっかりと区切れた漢字が並ぶさまを見ると、まったく違う種類の文字であることが改めて感じられる。

後水尾天皇宸翰女房奉書は、天皇おつきの女房からのお便りという形を取っているが、天皇本人からの手紙である。余白を開けて、大きめの文字で散らし書きしてあるのだが、そのバランスがなんともよい。一通の手紙でも書き手のセンスが出るらしい。

糸桜図簾屏風は、屏風をくりぬいた部分に簾がはまっており、簾の部分にも糸桜の絵が描かれている。桜はまるで本物を張り付けたかのように立体的で写実的に描かれている。裏側にも、同じ柄が描いてあるらしい。絵が特別印象に残ったわけではないが、いかにも雅で(私の)宮中のイメージそのままだった。

若冲の動植綵絵では、老松白鳳図が一番強烈だった。写実的な地味な鳥が鳳凰の隣にいるのだが、それとの対比でよけいに鳳凰がこの世のものではない存在なのが強調される。白い尾羽はふわふわと柔らかそうで、まるで本当の羽を張り付けたように見える。尾羽の先の赤と緑の模様が鮮やかすぎて、これも普通の鳥ではないことを告げる(トランプのハートの模様にそっくりだと、上にあげた本にあった)。体の羽毛は、場所によって細かく模様が描き分けられ、立体感がある。鳳凰が白く、少し金色がかって絵から浮かび上がる。写真で見ていたが、色みとか立体感とか、本物を前にして初めて伝わるものがあった。帰りに絵葉書とかグッズも見たけれど、見たのと全然違うように思えたので買わなかった。ふだんいつも三の丸尚蔵館で見られるのなら、また見に行きたい。

後半も行きたいけれど、観覧料が1800円なので迷っている。オーディオガイドを借りたらさらに600円かかる。ほかにも行きたい展覧会があるので与力は残しておきたいが、先週の泉屋博古館から間を開けずに行ったからこそ、楽しめたこともあるので、やっぱり行った方がいいかな。

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